↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/73

38「帰還」


 俺たち一行は、今朝出発した街の西門前まで戻ってきていた。

 とりあえずおじさん達の護衛は終わったし、出入りするにはまた確認があるだろうからここでおじさん達とはお別れという事だ。


 ちなみに少し汚れてしまった荷車と、ついでにホーンラビットの死体にもミリィが浄化魔法をかけたので、むしろ最初よりも綺麗になった。ホーンラビットも血の汚れが無くなって、一見すると眠っているだけのようにも見える。ミリィ曰く、状態が良ければ買取金額が増すかもしれないとの事だ。減額はされなくなるだろうが、そんなに上手く行くとは思えないが……。


「いや、助かったよ。護衛まで引き受けてくれた上に、荷車もこんなに綺麗にしてくれて。本当にありがとう。これは少ないけどお礼だよ」


 そう言っておじさんはいくつかの硬貨をくれた。これは……何アラド硬貨だったっけか……まあ後でメルかミリィに聞こう。


「ありがとうございます」


「ゴブリンの方は私達からギルドに報告しておきますから、安心してくださいね」


 お礼を言った後、メルもフォローするように言葉を続けてくれる。


「すまないね、いや本当にありがたいよ。私達からもギルドにはいい冒険者だったと報告しておくよ」


 そう言ってくれたおじさん達は、何度も頭を下げながら先に街の中に戻っていった。


「さて……じゃあ、私達も早くギルドに戻らないとね! 報告もだけど、ホーンラビットがこれだけ新鮮だと減額されないだろうから、早いうちに済ませたいし」


「そうだな。……正直重たいし、早く済ませたいかな」


 合計四体のホーンラビットのうち三体は俺が持っている。まあ持てなくはないが、結構重たいので正直早いとこ何とかしたいというのが本音だ。


「ごめんねー、やっぱり私がもう一体持とうか?」


「いや、へばるほどじゃないから大丈夫だよ。それに、メルは一体持ってくれてるし」


 四体のうち一体は既にメルが持ってくれている。俺としては女の子に持たせてしまっている、というだけでも少し申し訳なく感じるのだが、さすがに一人で全部はきつかった。


「じゃあ急ごっか! ミリィちゃんは大丈夫? 重くない?」


「へーきですよ。帰り道も荷車に乗せて貰ったので楽でしたし、軽いものばかりですから」


 ちなみに、ミリィにはさすがにホーンラビットの方は持てなさそうだったので、その他の軽い荷物を持ってもらっている。

 ともかく俺達も早くギルドに向かうため、街の中に戻ることにした。


 西門まで着くと、朝に出会った門番の人が同じように仕事をしている姿が見えた。


「ありゃ、随分早かったな。もう諦め……じゃないな。大量じゃないか!」


 どうやら俺たちの事をしっかり覚えていたようで、俺たちの姿を見るとまた気さくに話しかけてきてくれた。


「現地に三体も居たんですよー。それで討伐した帰りに一体また見かけたんで、サクっと倒しちゃいました!」


「数時間で四体はいい稼ぎだな。しかし、最近は本当にこいつらの数が多いからそれも心配だな……」


「そうですね……ゴブリンも二体ほど出たので、それが原因かもしれないですね。だから今日はギルドに報告もした方がいいと思って、早く帰ってきたんですけど」


「ゴブリンもか! ホーンラビットが出る辺りで見かけるのは珍しいな……。そりゃあギルドにも報告しといたほうがいいな。手続きはちゃちゃっと済ませるから早く行くといい」


 雑談や手続きは正直俺はあまり役に立たないので全部メルに丸投げだが、これが一番スムーズに進むのだから仕方がない。

 手続きは本当にちゃちゃっと素早く済んだので、俺たちはギルドまで小走り気味で向かった。


 大通りを進んでいると、またヒソヒソと声が聞こえてくる。

 どうせまた俺の見た目なんかの悪口を……と思っていたのだが、聞こえてくる声はどうもそんな感じでは無さそうだ。


「またホーンラビットみたいね……」


「お肉が安くなるのは助かるけど、突然数が増えるってのも何だか不安になるわね……」


 どうやら、俺たちが持っている獲物が原因のようだ。

 この依頼自体も最近はホーンラビットが増えているからのようだし、それのせいで市場にも肉が増えているのだろう。

 美味しく食べられるからまだ良いんだろうけど、確かにモンスターが増え続けるのは不安にもなるだろう。


「なあミリィさんや、こういう大量発生とかってやっぱりヤバイ原因があったりするものなのか?」


 とりあえず、この世界での知識が一番ありそうなミリィに聞いてみる。


「そうですねえ……普通なら異常気象とか餌の増加とか、天敵が減ったりとかなんですけど……今回はゴブリンを本来見ない所で見かけましたからね。ゴブリンが増えて、餌の確保のためにホーンラビットを追い回した結果、そのホーンラビットが逃げ回り、逃げる体力を得る為に畑を荒らしまわっている……といった所ではないでしょうか」


 おおう……こいつやっぱり知識はあるんだな……理由もなんだかそれっぽいし。


「さすがだねミリィちゃんは! ……でも、私もそんな感じだと思う。だとすると、ホーンラビットを討伐しまくるのもよくないのかな……」


「それはそれで畑の作物が無くなりますから、難しいところですね……。でも、ギルドに言えば何か動いてくれると思いますよ!」


「一方を叩きすぎれば別の一方が増える……生態系ってやつは難しいもんだな……。まあ、俺たちは今日やるべき事はやったんだ。あとはプロの判断に任せようぜ」


 俺がそう漏らすと、二人は納得したように頷いた。

 畑を守るためにホーンラビットを狩る。だがそのホーンラビットを追ってきたゴブリンが野放しになれば、今度は畑どころか人間に被害が出るかもしれない。

 ミリィの言う通り、この違和感をギルドにしっかり伝えれば、あとのことはもっと腕のいい冒険者たちが動いてくれるはずだ。

 今はまず、この重い戦利品を金に替えて美味い飯を食いたいな、と思った。


 そんな雑談をしていると、気が付いたころにはもうギルドに到着していた。

 いい加減持ち運び続けるには少々きつくなってきたので、扉を開けてさっさと受付の方へ向かう。

 ギルドの中は、今朝のように静かな空間ではなく、俺が初日に来た時のようにワイワイガヤガヤと活気に溢れていた。要するに、うるさい。

 受付の方を見ると、初日の時ほど人はいなかった。人は多いが、どうやらテーブルの方で談笑している人の方が多いようだ。

 どうせなら同じ人の方がいいと思いリナさんは居るかなと見回してみたが……やはり同じ場所にいるようだった。目が合うと、笑顔で手を振られた。

 

「出発してから数時間しか経っていないのに、お早いですね。でも、見る限りは依頼は成功したみたいですね!」


 俺たちの持つ獲物を見ながら、リナさんは答える。


「うふふ、でも次からはできれば革袋とかに入れてきてね。町中でそのままは目立つし、今回はすぐだったけど、傷むのが早くなっちゃうかもしれないからね」


「あ、うっかりしてた……」


 俺も気付かなかったが、メルもどうやら気付いていなかったようだ。

 なるほど、もっともだ。実際に見られて目立ってはいただろう。

 それに、しっかり血抜きをしたとはいえ直だと血とかが滴り落ちるかもしれないしな。次回以降は袋の準備とかもしっかりしておこう。


「じゃあ依頼の報告と、討伐個体や部位の提出をやっちゃうわね」


 そして俺たちの初依頼はこうして成功に終わる……のだろうけど、まだゴブリンの報告をしていない。


 俺たちは、それを今から説明することにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。