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35「討伐を終えて」


「とりあえず辺りに他のモンスターはいないと思うよ」


 ホーンラビットとゴブリンを倒した俺たちは、まだゴブリンの仲間や他のホーンラビットなどのモンスターがいないかを警戒して辺りを見回していたが、どうやら他には何も居ないようだった。


「じゃあとりあえずホーンラビットを回収してミリィたちの所に戻るか……あ、ところでゴブリンってどうしたらいいんだ?」


 そういえばホーンラビットは依頼で討伐証明のツノだけでなく、死体も買い取ってくれるらしいので回収する必要があるが、ゴブリンはどうすればいいのだろう?


「うーん……討伐証明は確か耳だったと思うから、耳を切り取っていけばいいと思うけど……このまま死体を置いておくわけにもいかないよね。ちょっとおじさん達に聞いて、ここら辺で焼いていいか聞いてみよっか」


 焼くのか……まあそのまま放置して腐ってしまう方が大問題だけど。悪臭もだが感染症とかもさすがに似たようなものはこの世界でもあるだろうし。

 ひとまずその場にあるゴブリン二体とホーンラビット一体を回収し、もう二体ほど討伐していたホーンラビットの方へ向かう。

 すると、その辺りにミリィとおじさん達が出てきているようだった。

 

「いやあ、陰から見ていたんだが凄いじゃないか! 特にゴブリンを倒すときのあの速さ! ベテラン冒険者というのはやはり人間離れしているんだな!」


「おばちゃんもホーンラビットを退治する冒険者は結構見たことあるけど、あんなにスムーズにできちゃうもんなんだねえ。ベテランさんは凄いわね」


『敬意と好意を確認。ステータスが上昇します』


 おじさん達は少し興奮気味に話しかけてきて、スキルが発動した。……このスキル、終わった後に発動しがちだよな。

 ベテランだと勘違いされているみたいだが、今日が初戦闘の駆け出しなんだけどな……。


「ゴンゾーさん凄かったですよ! でも平和な日本で戦闘なんかしたことありませんよね? 初めての戦闘でこんなに動けるのは才能ですよ!」


 ミリィも興奮気味に話しかけてくるが、あまり迂闊な事は言わないで欲しい。

 メルには日本の事を多少話してはいるが、知らん人にあまり聞かせるような事でもないだろうに。

 そしてこいつからはスキルが発動しない。お世辞なのかな? まあいいけどさ。


「なんと、初戦闘!? 随分とベテランの風格を漂わせていたもので……いやしかし、駆け出しとは思えぬ強さでしたな!」


 ……たぶん、メルと同い年だなんて言ったら更に驚くんだろうな。


「あ、おじさん達ちょうどいい所に! とりあえず依頼のモンスターは倒したんですが、ホーンラビットは間引きという事なのでもう少し他の個体が現れるのを待とうと思うんです。それと、一緒に討伐したゴブリンの死体を焼きたいのと、ホーンラビットの血抜きをしたいんですけど……どこか穴を掘って血や死体を焼いて埋める場所ってあります? ちゃんと生活魔法のクリーンをかけるので……」


 俺の後ろから来ていたメルは興奮して話しかけてきているおじさん達を見つけると、すぐに依頼の話に切り替えてくれた。非常に助かる。


「おお、そんなことまでしてくれるのかい! モンスターの死骸なんて放っておくと病気や他の獣が怖くてかなわんから、本当に助かるよ」


 おじさんはホッとした表情で、畑の端にある少し荒れた場所を指差した。


「あそこの隅なら今は何も植えていない休耕地だから、好きに使ってくれていいよ。しっかり処理してもらえるなら、いい栄養にもなるだろうしな!」


 はっはっは、とおじさんは笑い飛ばした。


 その後、おじさんにスコップを借りて、俺達はおじさんの言っていた休耕地とやらに向かった。一応元々は何かを育てていた畑なのだろうから、街道なんかよりはさすがに柔らかい土だが、さっきまで俺たちが居た畑よりは少し硬い土だ。


「どれくらい掘ればいいんだ?」


「そうだねー……そんなに深くなくても大丈夫だと思うけど、すぐには掘り返されないくらいかな? クリーンの魔法かけるから、臭いとかはある程度は大丈夫だと思うし」


 つまり……どれくらいだ? まあ一メートルくらい掘ればいいか。幸い、さっきおじさんが褒めてくれた時にまたステータスが上がったのですぐ掘れるだろう。

 ということで、ザックザックと掘り進めていく。スキルの効果が切れる前に終わらせたいしな。一応メルも一緒に掘ってくれているのでそんなに長くはかからないだろう。


「うわー、さすがにパワーがあるねゴンゾー。もうこんなに掘っちゃった……一時間くらいかかっちゃうかと思ってたけど、この調子だともっと早く終わっちゃうね」


「まあ思ってたより土が柔らかいからな。さっさと終わらせたいし、また別のホーンラビットが出てくるかもしれないしな」


 俺のスキルは大体五分くらいで切れる。今はステータスが上がっているから正直あまり疲れないし楽に掘れている。けどこの作業自体は五分では終わらないだろうから絶対後で疲れる。なので本当に今のうちにできる所まではやっておきたい。


 そんな感じで二人で掘っていたら、案外早く終わった。二十分もかからなかっただろうか。

 スキルが途中で切れたので多少ペースダウンしたが、メルには単に最初に全力を出しすぎたと思われたようだ。


「よし、じゃあゴブリンの耳だけ切り取って、さっさと入れちゃおう!」


 メルが解体用ナイフを取り出し、慣れた手つきでゴブリンの耳だけを綺麗に切り取る。

 そして、耳の無くなったゴブリンの死体を穴の中に入れた。


「次はホーンラビットだね、ツノを切って血抜きするよ。ちゃんとやっとかないと買取金額下がっちゃうかもしれないし。ゴンゾーもやってみる?」


「う……そ、そうだな。まあ、やってみるか」


 さすがに少し抵抗はあったが、これからの生活を考えるとこういう事にも少し慣れておいた方がいいだろう。

 メルはさすがに慣れたもので、スムーズにナイフを入れていく。俺はメルのお手本をしっかり見つつ、メルに教えて貰いながら、なんとか血抜きまで終える事ができた。……これが解体とかだったら、もっと大変なんだろうな。


「じゃあちょっとクリーンの魔法掛けちゃうね。私達も結構汚れちゃったからちょっと範囲広めで……綺麗になーれ! 汚れよ、さよならー! っと……」


 ミリィの魔法でも思ったが、この世界の魔法の詠唱はなんか気が抜けるんだよな……。

 しかし魔法というものはやはり偉大だ。俺たちについていた血の汚れは、あっという間に綺麗に消えて無くなった。そして穴の中のゴブリンや血の汚れ、臭いも嘘のように無くなっていった。

 こういう魔法があるなら、風呂要らずだよな。でもそこは日本人の俺、まだ一日入ってないくらいのはずなのにもう風呂は恋しい。


「ふぅ……ちょっと範囲広げたら思ったより疲れちゃった……五分くらい休憩させてね……着火の魔法すぐには使えそうにないや……」


「やっぱり魔法使うと結構魔力を消費するものなんだな。でも五分で大丈夫なのか?」


 ゲームとかだと自然回復とかはしないものだが、実際どうなんだろう? でも宿屋で寝ると回復するものだし……まあゲームだとバランス調整の為っていうどうしようもない理由もあるんだけどさ。


「うん、私は魔力そのものはそんなに多くないからね。でも魔力は休んでたら回復するから大丈夫だよ!」


「ああ、それならわたしがやりましょうか? ……というか、クリーンもわたしがやればよかったですね……」


 俺たちが穴を掘っている間、役に立たないので周囲を観察していたミリィさんが何やら言いだした。というか、こいつクリーンも使えたのか?


「お前……生活魔法も使えたのか?」


「使うだけならできますよ。でもわたしの浄化魔法はクリーンよりも強力ですし、魔力も多いですから心配ご無用です! どうです、凄いでしょう!」


 褒めて褒めてと言わんばかりにミリィが偉ぶる。これが無ければいいんだけど、まあ色々と役に立ちたいんだろうな。

 とりあえず、どこまでできるのか気になったので、ミリィに任せてみる事にしようかな。

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