21「天使再び」
「……で、どういうことなのか説明して貰える?」
目の前には、俺をこの世界に飛ばした元凶の天使……だと思う少女がいる。
特徴はそっくりなんだが、あの天使はこんなに小さかっただろうか?
「あ、はい……まず何から説明したらいいのやら……こちら側でも色々とありましたもので……」
もう一度出会ったら殴ってやろうと思っていたが、完全に少女の姿となっている今のこいつを殴るのは……さすがに俺も問題があると思う。身長もせいぜい百三十センチに少し届かないくらいだろうか。身長もだが、顔つきもこんなに幼くは無かったはずだ。
まずはその辺りから聞いてみる事にするか。
「まずお前……ミルソルだったっけ? そんなに小さくなかっただろ?」
涙目になりながら、天使は答えた。
「……降格したんです」
降格……そういえば最初にあった時もそんなこと言ってた気がする。俺を殺してしまったミスで降格が確定だとか。
「アダチヤマさんを死なせてしまったミスで天使長から天使に降格、それから転生時のミスで更に降格、スキルも間違ったものを与えてしまったようで……更に更に降格したんです……」
転生のあれこれはやっぱりミスだったんだな。そして、このよくわからんスキルもやはりミスだったわけだ。
「今のわたしは『下級天使見習い補佐代理心得』という立場で、ミルソルという名前も名乗る事を許されていません……愛称だったミリィと今は名乗っております……」
「いや……それはもう天使なのか……?」
「天使としての力はほとんど無くしてしまいました。なので受肉した今は天使長だった頃の力は一切無いのでこのような小さな姿に……。けれどミスの責任は取らねばなりませんから……アダチヤマさんのお手伝いと、その……間違って与えてしまったスキルがですね、とても危ない物なので、何かの手段で他の誰かに渡ると非常にまずいので、アダチヤマさんが天寿を全うした際に回収するのがわたしに与えられた使命なんです」
ああ、一応ただのハズレスキルって訳でもないのかこのスキルは。
「なんか悪感情向けられるとダメージ受けるし、そんなにやばいスキルなのかこれ?」
「そのスキルは『情緒の天秤』と呼ばれています。周囲の人間の好感度によって力を得られるスキルなのです……。昔、カリスマというスキルを持った勇者がそのスキルも持っていたのですが、カリスマスキルで得る魅了の力との相性が良すぎて、神を超える程の力を一時的とはいえ持ってしまったんです。世界を破壊できる程の力を……」
「……あー、ちょっと好感得られただけでステータス上がってたもんな。それこそ相手を魅了するなら、無限に力をあげられるって事か。まあ俺からすると、知らない人からダメージ受けるハズレスキルなんだが」
その勇者ってのも結局カリスマなんてスキルがあったからやばかったんだろうな。要はスキルの組み合わせだ。普通に顔のせいで好感を得られにくい俺が持っててもハズレのスキルのように思える。
「あ、それはある程度どうにかできると思います。一定の知能を持たない動物なんかは対象外ですし、人なんかは視界に入れなかったり、声が届かないくらい離れたり、対象をアダチヤマさんが敵と認識してしまえばスキルの効果は発揮しませんよ」
「敵……ねぇ。まあ敵対してる人間からいちいちスキル発動してたらやってらんないもんな。それにまあ、視界とか声が届かない距離とか、知れてよかったけどよ。……今からでも、このスキル取れないの?」
「一度定着したものなので、アダチヤマさんが死ぬまでは……その……。あ! だからと言って死を望んでるわけじゃないですよ? わたしはアダチヤマさんが幸せに暮らして天寿を全うされるまでのサポートに来たわけですから!」
サポート……ね。
こんな小さな少女を連れて何ができるだろうか。幼女誘拐みたいな感じに思われて余計ややこしい事になるのではないだろうか。こんな金髪で翼の生えた幼女を……。
翼の……?
「おい、ちょっと待て! お前連れてるとやばい事になりそうなんだが!?」
「え、どうしてです? こんな小さな体にはなりましたけど、腐っても天使です! この世界の知識もありますし、珍しい癒しの力を持っていますから、怪我をしても安心ですよ!」
腐ってもって……いやそういう事じゃ無いんだけどな。
「お前その翼どうにかできないのか? なんかこの世界じゃ翼人ってヤバイ奴みたいなんだぞ! 俺がこの世界に来たのも、翼人って種族の転移魔法にやられたと思われてんだぞ!」
翼人の転移魔法でここに来てしまった上に補償金まで受け取った俺が、翼人と一緒にいる……。そんなことが知れたら、まあ間違いなく詐欺だと疑われるだろう。
受け取った五十万アラドを返す位では済まないだろう。そしてそのお金も結構使ってしまった。
「翼人種が……? 変ですねえ、人に危害を加えるような種族では無いはずなんですが…………あ、わたしの翼でしたね。翼は隠せますので安心してください。翼人種はともかくとして、天使が下界にいるとあまり知られる訳にはいきませんから!」
そう言うと、こいつの背中の翼はしゅるしゅると縮んで見えなくなった。
しかし……この世界の翼人種っていうのは、こいつみたいに何かやらかした天使が、この世界でもやらかして悪評を受けているだけなのでは、とちょっと思えてしまった。
そんな中で突然、をノックする音と、ベティさんの声が聞こえてきた。俺にはその音がなぜか、死を告げる音のように聞こえた。
「あのー、ゴンゾーさん? 何か女性の声が聞こえるんですが……うちは連れ込み宿ではないので、そういうのはちょっと……。あの、開けますよ?」
やばい。
何かもう色々とヤバイ。
この状況、どうやって切り抜けるべきなのか……。
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