17「武具屋」
「ゴンゾー、次はどうする? 私ちょっと、武具屋を見たいんだけど」
服屋を出て、今度はメルがそう言いだした。
武具屋……武器とか防具とかの店だろうな。いいよな、なんかこういう異世界ならではの店。
真面目に考えると、今後はどうやってお金を稼ぐかにもよるんだが、危険なモンスター討伐で稼ぐのか、それとも街の仕事で汗水流して稼ぐのかだ。
モンスター討伐をしていくなら武具は必須だろう。命に関わる。ただ、そういうのって絶対に高い。この世界で生きていく事だけが目的なら、わざわざ危険な事はしなくてもいいのではないだろうか。
まあ、それはそれとして、メルが武具屋に用事があるなら、一緒に行くけど。やっぱり興味はあるし。
「そうだな、そういう店は初めてだし、興味あるな」
「だよね! 私も街のそういうお店は初めてなんだ! 村にはそんなの無かったから、自分たちで作るか行商から買うかしか無かったからさー」
何だ、メルも初めてなのか。ただまあ、行ったことが無いっていうメルと、そもそも存在しないから初めてだっていう俺とじゃ意味合いが違う気もするが。
「あれ? でもメルってもう武器持ってるんじゃないのか?」
よく見るとメルの腰の辺りには短剣のような物が下げられている。まあ旅をしていると言っていたから、必需品ではあるのだろう。
あれだ、無人島に行くならサバイバルナイフが必要、みたいな。
「ああこれ? 武器に使えなくも無いけど、基本的には解体用ナイフなんだ。今まではショートソード使ってたんだけど、ちょっと前に壊れちゃったから新しいの欲しくって」
「確かになあ。ゲームでもメイン武器とは別に剥ぎ取りナイフはあるからなあ……」
以前やっていたゲームを思い出す。最高レベルの武器すら弾く敵も、剥ぎ取りナイフならすっと刺せちゃうんだよな。
「よくわかんないけど……討伐依頼で稼ぐにしても何か武器は欲しいからね。せめて値段だけでも確認したいんだよね」
「ああ、そういうのって高そうだもんな。俺も一式揃えるといくら位になるやら……」
「うーん、ゴンゾーの場合は防具も無いもんね……。一部だけならそうでもないけど、安めのレザー防具一式で五万くらいはするかもね」
「やっぱり結構するんだな……」
服は何とかなったがそういえば防具らしいものは何もないもんな。
ゲームだと序盤のお供、レザー装備もやはり異世界とはいえ現実。結構するもんだ。
「でも実際に見てみないとね、もっと安いかもしれないし。じゃ、行こっか!」
「そうだな。で、武具屋はどの辺りにあるんだ?」
「うん、あれ! 実はすぐそこなんだ!」
メルは割とすぐ近くにある店を指さした。看板には剣や鎧の絵が描かれているので文字が読めない俺にもとてもわかりやすい。
本当にすぐそこだったので早速俺たちは武具屋へ向かった。
店に入ると、まず目に入ったのは、いかつい髭面のおじさんだ。恐らく店主だろう。髪の毛は無かったが、やはりこの世界の人達はみんな顔がいい。どこぞの映画俳優を思い出させる。
「こんにちはー!」
元気よくメルがおじさんに声をかける。
するとおじさんは、歴戦の強者のような目を光らせ、俺たちに話しかけた。
「ふむ……お嬢ちゃんは駆け出しの新人冒険者だね」
「当たり!」
「そしてその後ろの兄さん、武器も防具も無いようだが俺にはわかる……アンタ、Cランクか……まさかBランクか?」
ランク……と言われても何のことだかさっぱりわからん。こっそりとメルに聞いてみる。
「なあメル、ランクってなんだ?」
「冒険者ランクの事だよ。Fランクからスタートして一つずつ上がっていくの。上がっていかないと危ない依頼は受けられないんだよ」
なるほど、そういえば討伐依頼はランクがどうのこうのってギルドで言ってたな。それの事か。
「俺も新人です。今日登録したばかりの」
「何……!?」
おじさんは何故か凄く驚いている。リアクションがちょっと怖い。
「ただ者ではない強者独特のオーラを感じたんだがなあ……まあいいか。二人とも新人かい、どんな物が欲しいんだい?」
「私はショートソードを見繕いに来ました! 前に使ってたのが壊れちゃったので!」
「ふむ、予算は?」
「う……で、できれば三万くらいで……」
「通常品だと五万からだな。それ以下だと中古品になる。刃こぼれもあるし、あんまりオススメはできねえなぁ……」
やはり結構高いみたいだ。でも、中古品もあるんだな。
「研いだりして何とかなりませんか?」
「……まあ、新人のうちはとにかく金が無いよなぁ。そこの刃こぼれした一万五千のやつを研ぎ直しのメンテ込みで二万って所かな」
「うーん、予算的には嬉しいんですけど、どれくらい使えますか?」
「そうさなあ、当然刀身が細くなる訳だから、通常品よりは脆くなるわな。でも結局お嬢ちゃんの腕次第だな」
壊れやすい物を買うくらいなら長持ちする新品を買った方がいいってやつだな。
「あんまりお金は無いけど、剣は持っておきたいから……うん! おじさん、それでお願いします!」
「よし、ちょっと待ってなよ……っと、これを研ぎ直すから、一時間くらい待てるか?」
おじさんは置いてあった刃こぼれした中古の剣を取って、聞いてきた。
「はい! ゴンゾー、いいよね?」
「ああ、全然構わないよ」
実はさっきからチラチラと店の中を見回しているが、色んな物があって見てるだけでも結構楽しい。異世界に来てから、一番ファンタジーらしさを感じているかもしれない。一時間くらいなら余裕だ。
「さて、じゃあ作業に入るかね……」
そしておじさんは中古の剣を持ち、カウンターの裏にある作業場らしき部屋へ向かった。そして――。
「店長! 研ぎ直しのメンテお願いします!」
いい声が響いた。
俺も心の中で思い切り叫んだ。
お前店長じゃ無かったんかい!




