11「補償金」
リナさんとコヨンさんの二人が部屋から出て行って、俺とメルは二人で部屋で待っていた。
ただ待つだけなのも退屈なので、軽く雑談を交わしながら。
「そっかぁ、ゴンゾーってまだ学生だったんだね」
「ああ、俺の国では成人……十八までは学校に通う方が一般的かな」
「こっちは十二歳くらいまでは学校に通うけど、それから成人までは働いたりしながらなりたい職になる為の準備したりする人が多いかな。応用学校があるような大きな街なら成人まで学生って人もいるけどね」
「へえ、国が違うとやっぱり色々と違う物なんだな。メルは成人まで学校に通ってたのか?」
「ううん、私の住んでた村には基礎学校しかなかったからね。成人までは農作業の手伝いとか、畑を荒らすモンスター退治とかしてたんだ。成人後は冒険者ってのに憧れて、色んな所を旅しながら大きな町を目指してたんだよ」
「いやー……俺の住んでた所からすると……若いのに立派だなぁ……」
十二歳くらいから働いて、十五歳から家を出て旅暮らし……メルが特殊なのかはわからないけど、立派な子だ。そもそも俺とこんなに普通に会話をしてくれる女の子ってだけで良い子なのに。
「若いって、ゴンゾーも同い年だよね?」
「いやまあ、そうなんだけどさ。……ところで冒険者ってどんな職業なんだ? こっちにはそういう職は無かったからイメージが沸かないんだけど」
「そうだなあ……モンスター討伐とか、危ない場所での採取、護衛なんかもあるし、ダンジョンとか未開地の調査……色々だね。時には命懸けだから稼ぎも悪くないし、レベルだって上がっていくから、やっぱり強くなるのは楽しいし、面白そうだよね!」
「え、レベル……?」
え、この世界レベルの概念あるのか?
スキルがあるのは分かってたけど、ステータスは見れないし、そういうのは無い世界なのかと思っていたが……。
「レベルがどうかした? ……あ、もしかしてゴンゾー、ステータス見たこと無いの? でもそっちにもハロワっていうギルドはあったんだよね? 教会は無かったの?」
何だろう、この世界ではステータスとかレベルの概念が当たり前なのだろうか。
あのクソ天使は……もう最初に何て言ってたかもあまり覚えてないけど、この世界ゲームみたいな感じなのかよ。最初にゲームみたいにレベルがあるとか言えよ! ……いや、パソコンすら慣れてなかったような天使には無理か。ゲームやった事無さそうだし。
「ステータスを見たことないなんて……あ、そっか。ゴンゾーの国だとまだ成人してないし、成人の時にだけ教会でステータスを見る村とかもあるもんね」
そもそも日本にはステータスとかレベルの概念が無い、何て言ったらややこしい事になりそうなのでどう誤魔化そうかと思ったが、勝手に勘違いしてくれたようだ。
「ステータスとかレベルってそういう場所じゃないと見れないのか?」
「基本的には教会とかの神官さんとか、こういう大きなギルドの魔道具とかだね。鑑定スキルっていうスキルを持ってる人なら他人のステータスも見れるみたいだけど、加護とか上位のスキルを持ってるかまでは見れないみたい。……でも、うちの村だとステータスとかわざわざ隠すものじゃ無かったし、鑑定で見られて困るのはもっと荒れてる場所とかでなんだろうね。ここら辺は平和だしねー」
なるほど。だからステータスオープンだのと適当に唱えたりしても自分のステータスが確認できなかったわけだ。
「ちなみに、メルのレベルはいくつなんだ? ……というか、いくつぐらいが普通なんだ?」
隠すものじゃ無いと言っていたので、聞いてみることにした。
こうして少しでも常識を探っていかないと今後何があるかわからないしな。
「私は八レベルくらいだったかなー。でも村の大人は五レベルあるか無いか位だったから、普通はそれくらいだと思うよ。体を鍛えたり、モンスターを討伐してるとレベルって上がっていくんだけど、冒険者になるなら早く十五レベルくらいにはなりたいんだよねー。ベテラン冒険者は二十レベル超えてるって聞くし!」
「そうか、レベルってそんな感じなんだな。俺のレベル……五レベルはあってほしいけど、どれくらいあるかなぁ……」
「うーん、剣術修行とかしてたんなら五レベルはあると思うよ?」
そんな風に異世界事情を聴きながらメルと雑談を交わしていると、部屋にリナさんとコヨンさんの二人が戻ってきた。
「どうもお待たせしました。お金と、ギルドカードを持ってきました」
「一応、受け取る場合この書類にサインだけお願いしますね。すみませんね、面倒ですけど規則なもので」
リナさんはお金が入っているであろう革袋とカードを二枚、コヨンさんはサインが必要な書類を手に持っていた。
書類にサイン……と聞くとどうにも怪しいものを感じてしまう。念のために俺はコヨンさんに聞いてみた。
「……それにサインしたら補償金をトイチで返さなきゃいけない、とか無いですよね?」
「……ん? ただの受取人の確認ですし、返済義務も無いですよ。ギルドのお金が動くわけなので、必要になるんです。……というか、トイチってなんです?」
「いや、下手にサインしたら十日で一割の利息が付くっていう被害を、ちょっと故郷で見聞きした事があるので……」
「法外じゃないですか!? 怖っ! ニホン怖っ!?」
「安心してください、そういった法外な利息は王国法で禁じられていますから、大丈夫ですよ」
「……なんか凄いんだね、ニホンって……」
あ、さすがに皆にちょっと引かれてしまった。
まあ実際に俺がそういう被害にあったわけじゃないけど、やはりどうにも書類にサインって怖さがあるんだよな。
「でも、俺この国の文字書けないんですけど」
「ああ、ニホンの文字でも結構ですよ。ただの形式的なものなので」
書類をさっとテーブルの上に置いてくれたが、ちらっと見た感じでも、そんなに文字が多くない。読ませる気のない騙す気満々のそういう書類とは確かに違うようだ。
横からちらっとメルも書類を見てくれたが、反応を見るに本当に何とも無さそうだ。
「安達山……権蔵……っと、これでいいかな?」
「はい、ありがとうございます。ふむふむ、とても複雑な文字なのですね……」
ひらがな、カタカナ、漢字と三種類もあることはとりあえず黙っておこう。話すとなんか長くなりそうだし。
「では、補償金をお渡ししますね。この革袋もサービスで差し上げますので、ご活用ください。一応中身を出して確認しますね」
リナさんが革袋を開けてテーブルの上に様々な硬貨を出し広げた。
金貨、銀貨、銅貨、様々な種類がある。
「こちらの貨幣価値がまだわからないでしょうから、説明させていただきますね。こちらの硬貨が一枚で十万アラド、こちらが一枚一万アラドで……」
リナさんは詳しく硬貨の価値を説明してくれる。
しかし、いや、価値の高いものもあるし、思っていたより結構貰えるのでは……?
「……それで、以上を合計しますと、五十万アラドになります。しばらく働かなくても生活できる程度ですね」
「わあ! ゴンゾー一気にお金持ちだね!」
え、仮に日本円と同じくらいの価値だったとしても、この金額は……。
「ご、ごじゅうまんえん!?」
「アラドですよ、アダチヤマさん」
つい妙なリアクションをしてしまったが、思っていたよりも多い。
返済義務も無いみたいだし、俺は、小金持ちになってしまったようだ。




