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俺たちの代の文化祭〈後編〉

真奈美の当番が終ると、一緒に他の展示を見に行く。

途中で、茶室で茶道部にお茶を淹れてもらった。

演劇部の舞台も楽しんだ。


ひと通り見終わって多目的教室に戻って、何をするでもなくお客の様子を見ていると

「やあ。」

前の前の部長の香月先輩が入ってきた。


嬉しい。

グループLINEで来てくれることは知っていたが、やはり来てくれたことが嬉しくてたまらない。

本当は「会えたことが」だったりして。


もともと大人っぽい雰囲気の人だったが、卒業して半年も経つと、もうすっかり大人に見えるほどになっていた。

やはり大学生は違うな。


「ここにくるまでの間にいろいろな展示を見ながら来たけど、真ちゃんと真奈美ちゃん、見かけたよ。2人はデートしてたの?いいな、高校生は。私の学校は女子大だから、全然出会いなんてないよ。」

と笑う。

「そうです」とは言えず、返事に困る俺と真奈美。

「それにしても、部員増えてない?今何人?」

香月先輩がそれが今日の一番の関心事みたいに尋ねる。

「一年生が6人入ってくれたので今は12人です。」

少し自慢げに現部長が答える。

「12人!すごいじゃない。来年、3年も部員だから2年連続で10人以上じゃない。部に昇格じゃない!!」

本当に嬉しそうに大きな声を上げた後、香月先輩の目が潤んできた。


そうだ。

俺たちが入部したとき、香月先輩は何としても漫研を同好会から部へ戻したいと思っていると熱く語っていた。

それを入ったばかりの俺達6人に託すと。

そのときは、申し訳ないが、何を託されているのかを受けてめられていなかったどころか、自分たちに何ができるんだろうくらいに聞いていた。

それが、今は、俺達が次の代に思いを託している。

何としてもその後の代になっても部であって欲しいと。


と、そのとき、前部長と副部長が入ってきた。

香月先輩を見るなり、子犬が嬉しそうにご主人のもとに走り寄るように、一目散に駆け寄ってきた。

「香月先輩、ご無沙汰しています。」

満面の笑みで挨拶している。

「志保ちゃん、澪ちゃん久しぶりね。今、美鈴ちゃんたちと部員数の話をしていたの。12人ってすごいね。来年の漫研は漫画研究部ね。」

「はい。こんなにたくさんの一年生が入ってくれるなんて、正直思ってもいませんせんでした。真ちゃんたちが部活動オリエンテーションですごいのをしてくれて。入ってくれた子たちも、みんなそれがきっかけになったとか、それで気持ちが決まったとか言ってくれていましたから。」

「そうなのね。この子たちは何かすごいことやってくれそうって思ってたけど、やっぱりね。その後の学年もずっと続いて欲しいね。」

部長が

「大丈夫です。今の一年は私たちを軽く超えていくでしょうから。漫研は安泰です。」


その後、香月先輩は俺たちの展示を丁寧に見てくれた。

そして、休憩スペースに座って部誌に目を通す。

「部誌が上下巻なんて、すごすぎるよ。中身も断然レベルアップしてるし。イラストも見応えあったし、漫画も評論も読み応えあったよ。一年生も上手いね。みんなが一生懸命にやってるのが伝わってきたよ。そうそう、聞いたよ。毎日、みんなで部室でやってるって。私たちがやってたころとは全然違うね。だからこんなにすごいのできるんだ。」

最高の誉め言葉を貰った。


「それにしても、あの志保ちゃんと澪ちゃんが引退してるのか。私も年をとるはずだわ。2人が入部してきた頃が懐かしいな。」

卒業して半年ほどしか経っていない香月先輩がそんなことを言う。

しばらく3人で、俺たちが入る前の昔話に花が咲く。

「私、暇な大学生だから、来年も来るね。LINE送るから美鈴ちゃんたちもいてよ。」

と来年も来る宣言をする。

「はい。私は来年もここに入り浸りますから、お待ちしています。今までの漫研の面白い話を聞かせてください。」

「そうね。いっぱい聞かせてあげるね。」

いっぱいあるのか?

あるだろうな。

だって漫研だもの。


「じゃ。」

といつものように右手を軽く上げて、香月先輩は帰っていった。


前副部長が

「私たちもOGとして来年、絶対に来るね。美和ちゃんの代の文化祭も楽しみ。」

「えっ!」

私の代って何?と言う顔を美和がするが、本人以外はとっくにそのつもりだ。


しばらくお客の入りがなかったが、ポロポロと入りかけてきた頃に、有紀と奏が入ってきた。

書華美展の準備のときにしたあの約束通りに。

「与田さん、内田さん、見に来てくれたの。ありがとう。美術部にはもう行ったよ。今年も力作だったね。」

「そう、見てくれたの。ありがとう。今年の文化祭、漫研が一番の楽しみだったよ。」

受け付けの萌が、何か含みをもった顔で2人に部誌を渡す。

2人が発表を見て回ってくれる。

そうそう、こんなのあったねとか、これ、怖かったねとかおもしろかったねとか話しながら、全部を見てくれた。

出がけに

「評論、読ませてもらうね。」

と有紀。

「うん。今年のは自信作だから、じっくりと読んで。」

「うん。楽しみ。」

2人が出て行った。


「今の、ちょっと問題ありじゃない?」

と萌。

「何が?」

と俺。

それで終わりにはできないでしょとばかりに

「真奈美は?」

と萌が。

「何が?」

取るに足らない感満載で真奈美も。

真奈美に普通にそう言われたら萌も何も言えなくなる。

その一言で、この件は幕引きとなった。

真奈美は俺を信じてくれている。

だから、あんなの取りに足らない。

お互いに信じ合えるって嬉しいな。


お客の入りは昨年並みだ。

おそらく今までずっとこんな感じじゃなかったのかな。

でもやっぱり来てくれた人は、展示を楽しそうに読んでくれている。


「部長や副部長や萌の彼は、見に来ないの?」

由衣が物足りなさそうに尋ねる。

「もう来て帰ったよ。」

と萌。

部長も副部長もうなずいている。

今年も上手くやられたな。


やがて展示の時間の終わりを告げる放送が入り、クラスの片づけが始まる。

解散したら、漫研の片付けに加わる。


そして、元通りになった多目的教室で、明日の一大イベントの話が始まる。

そう、体育祭の部対抗リレーの話が。

俺達にしてみれば、去年は、訳がわからないままに押し付けられて走ったが、今年は違う。

何と言っても、去年に一位になって最高記録を更新してしまったのだから。

今年はディフェンディングチャンピオンの立場での参加だ。


俺たちリレーで走るメンバー意外のみんなも、壮行式のように残ってくれている。

副部長がロッカーからハチマキを出して、6人の選手に手渡す。

なぜだか、ずっと副部長がハチマキの担当になっている。

副部長も天職のように楽しそうだ。

それに、紹介文を書いてくれた萌と由衣。

一緒に走るメンバーだけがチームじゃないんだ。

漫研みんなでチームマンケンなんだ。


受け取って気合が入る俺たち3人とは対照的に、複雑な顔をする3人の一年生。

今はわからないだろうけど、締めたらわかるよ。


今年は、作戦は立てない。

立てる必要がないから。

走順を決めるが、一走は部長に任せて激しいインパクトを与えるとして、その後は、今年に関してはこだわりはない。

一年生に先に選んでもらう。

一年生で話して、ジャンケンをして勝った者から走りたい順番を取っていくことになった。

決まったので、余った2つのうち、好きな方を由衣に選ばせる。

由衣はアンカーを選んだ。

去年の副部長みたいにかっこよくテープを切りたいんだろうな。

来年も一位を取りたいってあのとき言ってたし。

あれは快感だろうな。

一位だけの特権だ。

俺は残り物でいい。


走順が決まった。

本当にすごいことになりそうだ。

みんな、明日は新しいチームマンケンの実力を見せつけてやろうぜ!

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