ゲーム
学校閉庁日の1週間は、休みどころか登校禁止だ。
それをいいことに、由衣がまたもやおせっかいを焼いて、俺に真奈美とのデートをせかしてきた。
俺としては、真奈美とのデートもいいが、何かして思い切り楽しみたい。
キャハハハハと遠慮なく笑いまくって楽しめる何かを。
そういうシュチュエーションだと、由衣は漏れなく付いて来る存在だ。
LINEで誘ってみる。
「なぁ、この休みの間、俺と真奈美と由衣とで何か面白いことしないか?」
すぐにLINE電話が掛かってきた。
「真奈美ちゃんとのデートはもちろんするんだよね。」
「あのな、由衣が思ってるほど俺たちデートにこだわってないよ。真奈美もな。デートが楽しみって、なかなか会えないカップルがそう思うんじゃない?俺と真奈美は毎日会ってるし。」
「ふーん、そうなの。2人がいいのならそれでいいけど。じゃ、何か思いっきり面白いことしようか。」
由衣のテンションが上がるのがわかる。
「こうも暑いと外に出る気にならないし、家の中でってことになるよな。どんなのがいい?ゲームとか?由衣んち、何か残ってない?」
「うん。小さいころに真ちゃんとよくやった人生ゲームとかどうかな。」
「それいいな。なつかしいな。株とか保険とか子どもには難しいことが結構あって、たまにおばさんも入ってくれて、教えてくれたよな。それでもよくわからないことだらけだったけど。結婚したり子どもが生まれたりで、今やったら、そのころと比べて結構リアルかもな。」
「うんうん。仕事に就いて給料もらったり何かでお金を払わされたり、株で儲けたり損したりもあったよね。株って何かも知らなかったけど。」
「そうそう。あのころは野菜のカブしか知らなかったし。そんなの思い出したら、すごくやりたくなったよ。そうだ、俺、『黒ひげ危機一発』まだ持ってるよ。」
「わーすごい、まだあるの。あれもよくやったよね。ほんと、こわいけどまたやりたくなるのよね。」
「お前、黒ひげがパーンと飛び出したら、ワーってよく泣いてたよな。」
「あれはビックリしただけ。泣いてなんかないよ。」
「そうだったっけ?」
いつのまにか、幼いころの話で盛り上がっている。
そう、あのころは、ただただ一緒に遊ぶのが楽しかった。
ただそれだけ。
一番良かったときかな、なんて思ってしまって、少し胸が痛くなる。
家に帰ってLINEで真奈美にそのことを伝えると、真奈美も大賛成。
さっそく明日の月曜日はどうか?とのこと。
真奈美はいつも明日だな。
俺はいつでもOKだ。
由衣にLINEでそのことを伝えると、もちろんOK。
「綾ちゃんも呼んであげない?多いほど楽しいし」
俺としては
「綾ちゃんが来たくて来るんだったらいいけど、部の先輩の中に一年が1人だろ。気を遣うだろうし敬語でゲームしたって面白くないんじゃないかな」
「そうかもね。でも真奈美ちゃんにそれとなく誘ってもらうように言うね。それで嫌そうだったらそれでいいし」
しばらくして、真奈美からLINEが返ってきた。
「綾を誘ってみたら、すごく嬉しそうに行きたいって言ったよ。由衣ちゃんにもそのこと伝えといたよ」
そうなのか。
人の気持ちって、わからないものだな。
明けて今日は大ゲーム大会の日。
由衣の部屋で真奈美姉妹を待つ俺たち。
「昨日、真奈美が面白いゲームを持ってくるって言ってたけど、何なんだろうな?」
「うん。それ以上は教えてくれないし。何か、真奈美ちゃんと綾ちゃんとで小さいころに遊んでいたゲームなんだってね。4人でやっても面白いらしいけど。」
ほんと、何なんだろう?
10分ほど経って、姉妹が到着。
やはり2人とも汗だくだ。
初めて見る綾の私服も真奈美と同じTシャツとショートパンツ。
黙って由衣と部屋を出た。
真奈美に呼ばれて部屋に戻る。
昨日の真奈美の香りとは違うシトラスの香り。
これは綾のかな、なんて思ってしまって、猛烈に自分が恥ずかしい。
まずは、人生ゲームからだ。
小さい頃は、わからないことだらけで適当にやっていたが、もうわからないことは何もない。
だからこそ、コースを判断する場面でも考えるのが楽しいし、保険に入るにしても考えて入るかどうか決められる。
銀行家は俺がやることにした。
給料をもらえるのはありがたいが、借金を背負わされるのにはまいった。
イベントもほとんど忘れてしまっていたから新鮮だ。
結婚したときには
「その隣の子ってだれかな~。」
なんて、由衣にからかわれた。
由衣が結婚したときに、お返しに
「お前、結婚する気あったの?」
なんて言ったら
「あるよ。子どもも好きだし。今は付き合う気がないってだけ。」
と真面目に答えられて、何か悪いことをした気になってしまった。
真奈美が結婚したときには
「お姉ちゃん、この人だれ?」
綾が指さして笑う。
真奈美の顔が赤くなった。
最後の由衣がゴールしてゲーム終了。
資産を比べる。
1位は2位と大差をつけて真奈美。
がっちりとお金を残してくれそうだ。
気が早いけど。
2位は綾。
3位は俺で由衣が最下位。
リアルでもコミックスを買ってばかりでいつもピーピーなのに、ゲームでもか?
楽しかったが、一回で十分だ。
次は、黒ひげ。
飛ばしたら勝ちか負けかをあらかじめ決めておかないと。
今回は、飛ばしたら負けにした。
ジャンケンで順番を決める。
やはり真奈美が一番負けになった。
なんでこんなにジャンケンに弱いんだろう?
真奈美から刺す。
「バーン」といきなり黒ひげが勢いよく飛び出した。
「えー!何で!」
みんなで爆笑。
笑えない真奈美。
「これ、壊れてない?どこに刺しても飛ぶんじゃない?」
そんなことはない。
昨日、家でちゃんと確かめている。
そんなに言うのならと、黒ひげをセットし直して、俺がどんどんと剣を刺していく。
「だろ。」
7本目で飛び出した。
「ほんとだ。」
「だろ。真奈美が当てるのが上手いだけのこと。」
「もー馬鹿にして。」
真奈美が由衣のようになった。
ただ普通にやるだけでも面白いのだが、ドキドキワクワク感を出すべく罰ゲームをしようということになった。
先に5回飛び出させた者が、そのときに一番回数が少ない者の言うことを聞く。
何をさせられるかが決まっていないだけにコワいが、緊張感が心地いい。
みんなが適当に当てる中、由衣はなぜか一度も当たらない。
一番多いのは俺。
すでにリーチが掛かっている。
そして、その次の一回り目。
その前に真奈美が当てたので俺から。
考えても仕方がないが慎重になる。
ここは大丈夫だろうと根拠のない自信をもって刺す。
バーン!
同時に「ワー」とみんなが大喜び。
やっちまった。
「真ちゃん、上手くなったね。」
真奈美に言い返された。
罰ゲームだ。
命令するのは由衣。
いまだに一度も当てていない。
「何にしようかな・・・。あっ、それそれ。それにしよう。」
1人で盛り上がっている分、余計にコワい。
「決めたよ。」
「何?」
由衣に尋ねる。
「真ちゃんの得意なこと。」
「だから何?」
「へへへ、犬!」
えっ!それだけはと言おうとしたが、もうそういうルールに決まっているし、今さら異議を唱えても場が白けてしまう。
仕方がない。
綾には初のお披露目だ。
由衣が紙とペンを渡してきた。
覚悟を決めて描き始める。
もう笑いをこらえるのに大変な由衣が
「綾ちゃん、心の準備はいい?」
「え?なんのことですか?」
真奈美が
「だから、壊れる覚悟はできてるかってこと。」
綾は首をひねるだけ。
前に研二が描いたのを思い出しながら描く。
あれはなかなかよく描けていたから。
ただ、目がな。
犬の目にしておいた。
こんな感じだろう。
描き上がる。
どこからどう見ても犬だ。
「ジャジャーン、犬。」
ドヤ顔で3人に見せてやる。
見る前から笑いをこらえていた2人は、見た瞬間に爆発してしまった。
またもや、ベッドの上を転げ回って笑う由衣。
スカートが捲れているのにも気が付かない。
休日だからか、制服のときとは違ってスカートの下にスパッツのようなものをはいていない。
「・・・いちゃん、由衣ちゃん、もう・・・もう、見えてるよ。」
慌てて真奈美が直そうとするが、由衣が暴れるのと自分の大笑いで思うように直せない。
そんなに笑わせてやってるんだから、それくらいのサービスはしろよ。
由衣のを遠慮なくガン見してやった。
綾も涙を流して笑っている。
俺、一応、先輩なんだけど。
3人の笑いが収まるまでかなり待った。
最後に真奈美と綾の持ってきたゲーム。
期待してしまう。
「これ。」
と真奈美がリュックから取り出したのは、なんと、小倉百人一首。
え、マジ?となる俺たち。
「小さいころよく2人でやったよね。」
と真奈美。
「うん。面白しろかったね。」
と綾。
2人で?
片方が読んで、もう一方が札をとる?
それ面白いのか?
俺たちの戸惑いを察して、綾がニッコリ。
「面白いですよ。坊主めくり。」




