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これだから漫研はやめられない

あの後、由衣と真奈美からきついお叱りを受け、おとなしく過ごしている。

反省しているふりはしているものの、推しの女の子のポスターを貼るのがなんでそんなにいけないことなのかが納得がいかないが、そこは仕方がない。

女子として水着のは生理的に嫌なんだろう。

それにマイちゃんは高校生だし。


次の週は期末考査の一週間前になり、考査の時間割が発表された。

部活も大事だが勉強はもっと大事だ。

研二との活動も考査終了まで休みだ。


7月に入るとすぐに考査が始まり、やっと今日が最終日。

また今日から俺の部屋での評論と、由衣の部屋での漫画の活動が始まる。


「先輩、マイちゃんのポスター、はがしたんですね。」

「うん。」

研二は残念そうだったが、それ以上は聞かなかった。

あの日の由衣と真奈美の様子から察したのだろう。

俺の部屋での活動は続いたが、休憩で由衣の部屋に行くことはなかった。

その分、俺が研二に紅茶かコーヒーを淹れてやった。


そうこうしている間に終業式を迎えた。

それにしても、こんなにも早く一学期が終わるなんて。

明らかに去年とは、比べものにならないほど早い。

これは歳をとると1年を早く感じる現象で「ジャネーの法則」と呼ばれている。

この現象は心理学的に説明がつくらしい。

年齢を重ねるごとに自分の人生における1年の比率が小さくなることや、毎日の生活に慣れて新鮮な感動が減ることが主な原因だとか。

たしかにそうかもしれないが、俺はまだ16歳だ。

この年でこんなにも感じるなんて、この先がヤバい。


明日から土曜日、日曜日、祝日の月曜日と3連休だ。


でも、全然嬉しくない。

部室でみんなで活動したい。

ワイワイと賑やかに。

一年生にもっと絡まないと。


連休が明けた火曜日から補習が始まった。

最終下校時刻までクラスでの展示の準備をして、漫研の方へ行く。

この期間だけ、下校延長が認められて活動できるから。


やっと、今日から冷房の効いた教室を与えられて、みんなで活動することができる。

嬉しいことに、今年も視聴覚教室がもらえている。


視聴覚教室に入ると、すでにほとんどの部員が集まって活動していた。

今年のテーマの自分の展示の下書きを始めている。

まさに時間を惜しんでといった気持ちが伝わってくる。

部長が何度もことあるごとに念を押して、この日に始められるようにと言っていたことに、みんなが応えている。

模造紙に線を引いたり、書きながら文章やイラストのレイアウトを練り直したり。

もちろん俺も、去年のことから学習しているので、コピー用紙に下書きになるものを書いてきている。

今年も文字だけになるが、それは仕方がない。

だが、今年は色を使う。

大きな成長だ。

すごいぞ俺。

当り前のこととだからだれも褒めてくれないので、自分で自分を褒めてあげた。

やがて裕香が入ってきて、全員が揃った。


みんなの作業が進む中

「真ちゃん、去年のこの日のこと思い出すね~。」

と、またもや部長があの日のことを面白そうに言う。

何で一年生がいるのにそれを言うかな。

何て答えたらいいのか困る。

「もうそれは言うなよ~」とか言ってバツが悪そうにして終わりにするのもありか。

正直、腹も立つが、前のようにみんなが気まずい雰囲気になるのはごめんだ。

黙って流そう。


だが、本気でそれを許せない者がいた。


「美鈴!それ、ひどいよ!」

由衣が大きな声をあげる。

美鈴が部長になって以来、ずっと部長だったのに、部長でなく美鈴だ。

どれだけ由衣が怒っているか、みんなが一瞬でわかった。

こんな由衣を見たことがないから、みんなが戸惑っている。

「えっ。」

部長も。

「確かに去年は真ちゃんが悪かった。でも今年はちゃんとしてきたじゃない。何で一年生もいるのにそれを言うの。・・・真ちゃん、いつも美鈴は部長としてすごいな、みんなで支えないとなって言ってるのに・・・何で・・・。」

言いながら由衣が泣き始めた。

部長がうつむく。

一年生もいる中でこんなのはよくない。

早く終わらせないと。

「いいよ由衣。」

と言った瞬間

「よくない!」

と切り裂くような口調が飛ぶ。

萌も初めて見るような激昂をしている。

少し間を開けて、自分を鎮めるように

「真ちゃん、みんなに美鈴が部長になってくれたから今の漫研があるって言ってる。部長をみんなで大切にしないとなって。それなに・・・。」

「私を大切に・・・。」

言葉を詰まらせて部長も泣き始めた。

「私、馬鹿だから、つい、いらないことを言って人を傷つけてしまうのよね。今までもあったよね。ごめんなさい。本当にごめんなさい。いつも言われるまでわからなから本当に馬鹿。私なんかが部長してたら雰囲気がどんどん悪くなっちゃうし、最悪、漫研が空中分解しちゃうよね。私・・・部長辞めるね。」

これにはみんなが驚く。

でも、俺は驚かない。

それは絶対にないから。

首を振りながら

「部長は美鈴しかいないよ。他の誰にも務まらない。」

美鈴を見つめる。

「でも・・・。」

またうつむく。

「美鈴が部長を辞めるんだったら、私も副部長辞める。私はそういう条件で副部長を受けたんだから。」

副部長もなんとかして部長を引き止めようとしている。

だが、副部長がそう言った瞬間に顔色が変わった者が1名。

「ちょ、ちょっと待ってよ。そうなったら漫研、どうなっちゃうの。部長も副部長もいないなんて。お願いだから2人とも考え直してよ。」

誰もが見てわかるほどに慌てふためいている。

もちろんその理由を、俺と由衣と萌はわかっている。

「そうだ、採決をとろう。」

誰にも有無を言わせない勢いで強引に押し切ろうとしているのがわかりやすすぎる。

もはや手段を選んでいる場合じゃないと言わんばかりだ。

「黒瀬美鈴さんに部長を続けて欲しいと思っている人、挙手をお願いします。」

みんな、そうよね、絶対そうよねという迫力でみんなを見回す。

美鈴以外の全員が手を挙げた。

「全員の賛成で美鈴さんの部長の継続が決まりました。そしてそれを受けまして、自動的に咲良さんの副部長の継続も決まりましたー。」

真奈美が嬉しさを隠さない。

俺が拍手をしたら、みんなも拍手で2人を包んでくれた。

だれよりも大きな拍手をしながら、うんうんと大きくうなずく真奈美。

本当に嬉しそうだ。

拍手の中、部長が頭を下げた。


なんか、すごい一日だったような。

由衣のは知っていたけど、あんな萌、初めて見たな。

正直怖かった。

本気で怒らせるようなことは絶対にしない。


真奈美も自分の死活問題が掛かっていたからとは言うものの、お疲れ様だ。

あの様子じゃ、部長もできそうだけどな。


美鈴もかなり反省したみたいだ。

これを機に、もっといい部長になりそうだ。


いろいろなことが起きるけど、全部、俺たちにとって意味があるのだろう。

この先も、まだまだたくさんの何かが待っているはずだ。

怖いけど、ワクワクする。

これだから漫研はやめられない。

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