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新部長・副部長就任式

引退式から一夜明けて、今日は新体制の部長と副部長の就任式だ。


昨日の座席のフォーメーションのままで、前に美鈴と咲良が座っている。

「漫研マニュアル」では就任式の司会は特には決まっていないようだ。

前日に希望を募ると、真奈美と萌が手を挙げ、ジャンケンの結果,、萌が務めることとなった。

真奈美はやはり、ジャンケンが弱いようだ。

美鈴と咲良に感謝だな。


「ただ今から、新部長・副部長の就任式を行います。一同、礼。」

萌のよく通る声で始まった。

「新部長挨拶、黒瀬美鈴さん。」

「はい。」

いつもの大きな声での返事。

一、二年生の前に立つ。

「部長に就任しました黒瀬美鈴です。私はこの場で3つの提案をさせていただきたいと思っています。

まず、1つ目です。

部室で活動ができる期間は、全員が部室に集まって活動すること。一年生にとっては当り前のことと思っているでしょうが、それが当たり前になっている今を嬉しく思っています。実は、私たちが去年入部したときは、そうではありませんでした。先輩たちを悪く言うつもりはありませんし、それがずっと漫研の活動スタイルだったのでしょうが、行きたいときに行くといった形で活動がなされていました。私たちが部室に行っても先輩が来られないことが多く、することがなくて、部室にいても仕方がないしと思って、行くのが適当になっていきました。でも、それって、おかしいと思います。同じ部に所属して、高みを目指すなら、互いに切磋琢磨しながら毎日一緒に活動しないと、それは得られません。一年生のみなさんにはあまりにも当り前で、言う必要がないことかもしれませんが、私たちの気持ちとして聞いてもらえたら嬉しいです。ただ、部室には暖房も冷房もありませんので、暑さや寒さが限界を超えると、部室での活動ができなくなります。そうなると、自宅になると思いますが、各自で活動場所を確保してもらう必要があります。そのことも覚えておいて、これからも部室でしかできないことを優先して活動していきましょう。」

部長もそう思っていたのか。

余計なことを提案しなくてよかった。

「2つ目です。

みんなでやろうということです。私たちは総勢11人しかいません。なので、どんなことも、みんなでやらないと何も回りません。これからいろいろな行事があります。個人でやることが主になりますが、全体でやらないといけないこともたくさんあります。そんなときには、全員で協力してやっていきましょう。運動部などでは、雑用は一年生の仕事といった認識があるかと思いますが、私は漫研をそんな部にしたくありません。一年生がやらなければならないことなんかないんです。気付いた人が動いたらいいんです。先輩たちも、引退される直前まで、私たちが気付かないうちに率先してやってくださっていたことが多々ありました。ああ、これが漫研の伝統なんだなって嬉しく思いました。私もそうなりたいし、ぜひ、そういう認識で活動していきましょう。

3つ目。

先程のことと関連しますが、各学年の意思の疎通は大切です。でも、部としては、学年を超えた意思疎通が必要です。学年関係なしに積極的に意見を交換していきましょう。こうしたら部がもっとよくなるんじゃないかと思うことがあったら、どんどん提案していきましょう。一年生のみなさんが思っている以上に、みなさんと一緒に活動することで、私たちが考えさせられたり新しいことを学んだりすることはすごくたくさんあります。そして、私たちが一緒に活動できるのはあと一年間ほどです。なので、私たちは、これからはもっとうざいほどからんでいきますから覚悟しておいてください。」

美鈴が美鈴らしいイタズラっぽい目で一年生を見る。

一年生たちも、ガンガンきてくださいといった表情でうなずいている。

「みんなでもっともっと盛り上げて漫研を発展させましょう。これで、私の挨拶を終わらせて頂きます。」

拍手が起こる。

「新副部長挨拶、三宅咲良さん。」

「はい。」

咲良も元気よく返事をする。

気合が入っているようだ。

「部長のお話と被った話をしてもみなさんが退屈だと思いますので、私からは一つだけ提案させていただきたいと思います。漫研の活動は個人の活動が中心になりますが、それはチームでの活動でもあります。お互いにわからないことは尋ね合って教え合って、それでもわからなければ一緒に調べて解決していきましょう。そしてわかったことや何かのメディアやネットなどで知ったことがあれば、みんなで共有しましょう。こんなこと、みんなは知っているだろうしなんて思わずに、遠慮なくです。直接話すのが気が引けると思ったら、LINEでもいいです。絵も文章も書くことが上達への道ですが、知識や技術、理論なども知っていて絶対に損はありません。また、最近読んで感動した漫画、心に残ったイラスト、心に響いた漫画家やイラストレーターや評論家の言葉、どんな小さいことでも、へ~と思ったことは、紹介し合いましょう。感性を高めることは私たちのパワーアップにつながるなるはずです。私たちは縁があって一つになったチームです。新しいチームマンケンをみんなで作っていきましょう。」

拍手をするみんなの目に「なんだか面白いことになりそう」という期待が伺える。


「諸連絡等。」

美鈴が再びみんなの前に立つ。

「昨年度までは、ゴールデンウィークの前日や終業式の放課後に集まっていましたが、それはもう必要ないのでやめにしたいと思います。そもそもそのような決まりがあったのは、部員が部室に揃うことがなかったので、連絡事項を徹底するためにだと思っています。でも、もう毎日部室でみんなで活動していますので、いつでも連絡ができます。ですので、必要がありませんのでやめにしたいと思っています。」

そう言えるようになったことが嬉しくて、二年生たちがウンウンとうなずいている。

「次の漫研としての発表の場は文化祭です。部員全員の漫画やイラストや評論などを載せた部誌を発行しますので、作品の準備を進めてください。また、毎回、テーマを決めて各自で作った発表も掲示して見ていただきます。来週に今年のテーマの方向性を決める部会を開きたいと思います。全員が揃う日に行いますので、来週、都合の悪い日がある人は、私に言いに来てください。」

少し間を空けて

「私からは以上ですが、何かこの場で連絡などがある人はいませんか?」

こんなの初めてだ。

いろいろと変わっていくのがわかる。

「ないようですね。」

司会の萌を見る。

「これをもちまして、新部長・副部長の就任式を終わります。一同、礼。」


さっそく2人に声を掛ける。

「部長、副部長、お疲れ様。」

「部長?やめてよ、そんな呼び方。今まで通りにして。」

「いや、これ、俺の中でのけじめだから。」

咲良も

「私、そんな柄じゃないから恥ずかしいよ。今までのがいいよ。」

俺は絶対に譲らない。

「漫研を普通の部活にしたいよな。だったら、運動部だったらキャプテンとか呼ぶのは普通だし、文化部でも吹奏とか演劇なんかのきっちりやっている部は部長って呼んでるよ。」

「うん、私も部長、副部長って呼びたい。」

由衣も賛成してくれる。

「そうよね、なんか部が締まるよね。」

と萌も。

「いいね。それって新しい漫研にふさわしいよ。」

真奈美が嬉しそうだ。

「な、いいだろ、部長、副部長。」

「いいよね。」

萌が推してくれる。

「なんかもうそうなっちゃった感じ。」

と美鈴。

「みんなが言うんなら仕方ないか。」

と咲良。

でも2人とも少し嬉しそうに見える。


かくして、漫研では部長と副部長を呼ぶ際は、役職の名で呼ぶことが決まった。

俺たちの代から、新しい伝統が始まった。

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