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おすそ分け

今日はゴールデンウィークの2日目。

つまり、真奈美とデートした翌日。

母ちゃんが由衣んちへおすそ分けを持って行けと言う。

昨日、婆ちゃんから届いたマスカットを持って。

たくさん送ってくれたし、いつも貰ってばかりじゃ悪いからと。


何でよりによって今日なんだ。

せめて明日にして欲しい。

今日、由衣に会うのは本当にマズい、というより危ない。

でも母ちゃんにそんなことは言えないから行くしかない。


インターホンを押す。

インターホンからの返事はない。

その代わりに2階の由衣の部屋の窓が開き、由衣が顔をのぞける。

あっと大きく口が開くのがわかった。

その後は、外で待つ俺にもはっきり聞こえる大きな声で

「ハイハイハイハイ。」

と言いながら、ドスドスと急いで階段を降りてくるのがわかる。

もうこの時点で頭が痛くなる。

知ってるな、昨日のこと。

で、どこまで知ってるんだ、こいつ。


扉が開く。

「昨日婆ちゃんが」

と言った時点で

「うん、ありがとう。」

と紙袋をひったくるように奪う由衣。

「じゃあ、私の部屋に行こうか。」

もう目が怪しい。

「いや、今日はこの後いろいろあって忙しいんだ。ごめん、じゃ。」

と、くるっと向きを変えて帰ろうとするが、やはりこんな由衣から逃げられるはずがない。

「待って。・・・去年、真奈美ちゃんとの仲、だれがくっつけてあげたのかな?」

あん?

あのときはお前だって興味本位で俺を焚きつけて、友達と遊びに行くなんて普通のことだよなんて言って送り出したくせに。

そもそもお前に相談したときには、デートするところまでは確定していたし。

何を恩着せがましいことを言っているんだ。

「だれかな~?」

もう一発撃ってくる。

黙っていたらさらにもう一発。

「ほんと、だれだったかな~?」

いつもこの攻撃にやられている。

本当にお前なのかなと思い始めてしまい、やっぱりお前なのかなと思う自分が悲しい。

「上って。」

帰れなくなった俺を玄関に残し、由衣は、もう階段を昇って自分の部屋に向っている。

フーと深い息を吐いて、靴を脱いだ。


由衣のベッドに座る。

「昨日デートしたこと知ってるんだよな。」

「あったりまえでしょ。私の情報網を甘く見ないでよね。」

何が情報網だ。

デートしたことを知っているのは俺と真奈美しかいないじゃないか。

真奈美に聞いたしかないだろ。


「真奈美から話したのか?」

「それしかないじゃない。私にはそんなの知る由もないし。」

真奈美も由衣にはつい話してしまうんだろうな。

俺も同じだけけど。

でも俺は昨日のことは由衣には言っていない。


「昨日、ついに決めたらしいね。やるじゃない。」

「えっ?」

「なに驚いてるのよ。」

「何のこと、かな?」

「知ってるよ。」

「何で?真奈美に聞いた?」

「そんこと聞けるわけないじゃない。聞いても教えてくれないだろうな真奈美ちゃんは。そもそも聞く気なんてないけど。」

「じゃなんで?」

「おそらくそうだろうなって思って。」

ニヤッとする。

あー、やられた。

かまをかけられて、みごとに掛かってしまった。


「で、どこまでいったの?」

迫ってくる。

「ねえ。」

顔を覗き込んでくる。

「ねえ。」

もっと寄ってきた。

近い、近すぎる。

「わかった。わかったから離れろ。お前、距離感おかしいぞ。そんなだから。」

つい口走ってしまう。

「そんなだから何よ。」

由衣が不機嫌になる。

「なんでもない。」

いらないことを言ってしまった。

由衣の目がきつくなる。

「言いたいことはわかってるけど、私に彼がいないのは。」

「わかってるって。」

何を言うかわかっているから遮る。


少し間が空いたら、また怪しい由衣に戻ってしまった。

あー、めんどくさい。

さっきのネタで引っ張ったらよかった。


「で、どこまでいったの?」

「そんなこと言えるかよ。」

「いいじゃない、ちょっとだけ教えてよ。」

「ちょっとも全部もないだろ。」

その後もしつこく聞いてくる。

腹が立ってきた。

ちょっと驚かせてやろうか。

「しょうがないな。」

「うん、どこまでいったの?」

「いくとこまでいっちゃった。」

エロい目でニヤッとしてやった。

少し間が空いて

「え~!そ、そ、それって・・・」

目が真ん丸になって口があんぐり開いている。

次の言葉がでないままに口がもごもご動いている。

由衣には刺激が強すぎたかな。

もういいか。

「ウソだよ。そんなんことしてないよ。」

「あーびっくりした。冗談もほどほどにしてよね。」

胸を押さえて大きく息を吐く。

そんなに驚かなくてもいいだろうに。

俺たちは高校生で付き合っているんだから。

もちろん、まだそんな気はないけど。


「俺のことだけど、真奈美のことでもあるし。言えないこともある。」

ハッとなる由衣

「そ、そうだね。真ちゃんがしたってことは真奈美ちゃんもしたってことだもんね。」

さっきの続きのようなで何か生々しいが、急にまともにな顔になるから本当に由衣はわからない。

付き合いは長いけど、まだわからないことだらけだ。


「そうだよね。でも・・・。」

「何?」

「でも、私にぎゅっとしたくらいだから、真奈美ちゃんにもしてるよね、それくらい。」

何を急に言い出すんだ。

慌ててしまう。

「お、お前をぎゅっとしたのはそういうんじゃないだろ。いつまでも泣き止まないから慰めようとして。もう何年も前だし。真奈美にするのはぜんぜん違うから。」

「じゃ、違う意味でしたんだ。」

答えようがないけど、キスのことは絶対に言えないから、これでかんべんしてもらおう。

ウソをついてもバレるのがわかっているし。

「うん。」

「えっ!したの?」

自分が振っておいて、何でそんなに驚く?

「うそ。私冗談で言ったのに。」

「えっ。」

今度は俺が驚く。

本気で聞いてると思ったのに。

言わなきゃよかった。


「ほんとにしたんだ。いつ?」

1人で興奮している。

「だいぶ前。」

もうこれで許してくれよ。

「だいぶ前っていつ?」

やっぱり聞いてきた。

「俺の誕生日。」

小さいころからずっとだ。

由衣に聞かれたら何でもしゃべってしまう俺。

もうこれも何とかしないと。

「あの日?へー。真ちゃんの部屋でよね?」

「ああ。」

まただ。

「すごいな。でもそれって、私が気を利かせてあげたからできたんだよ。そこんとこ、わかってる?」

また恩着せがましいことを言ってくる。

「ほんと私って気遣いができる女よね。」

自分で自分に酔っている。

「で、どうだった?」

もうこれくらいにしてくれよ。

「どうって言われても・・・。」

何を聞いているのかが本当にわからない。

「ま、いっか。今日はこれぐらいにしといたるわ。」

由衣の好きな吉本のお笑いの舞台を下手な大阪弁でまねて引いてくれた。

助かったが意外だ。


「次はキスだね。」

「えっ!あ、ああ、そうだな。」

今日一番の慌てようになってしまった。

本当はもう済ませてるから。

その瞬間、由衣がえっとなる。

すぐにまたあの目になって

「へー、そうなんだ。ふ~ん。」

薄笑いを浮かべながらうんうんとうなずく。

「何が?」

「いつも言ってるでしょ。真ちゃんは私を騙せないって。」

そうだった。

どんなにごまかしても普通を装っても、由衣には一瞬ですべてのことがわかってしまうんだった。

「とっくにしてたんだ。」

いや、昨日なんだけど。

これって完全にバレてる。

これはヤバい。

真奈美に申し訳ない。

どうしようかと思うけどどうすることもできず、固まってしまう。

「安心して。それ以上は聞かないから。てか、聞かなかったことにしてあげる。真奈美ちゃんのことでもあるからね。」

由衣がニッコリ微笑んだ。

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