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研二と美和と裕香

真奈美と部室に入ると、みんなのおしゃべりに花が咲いていた。

ただ、綾だけは去年の部誌を読んでいる。

一年生1人では話に入り辛いのか、はたまた情報収集か、勉強か?

「どう?私の読んだ?」

真奈美が綾に話しかける。

「うん。」

「どうだった?」

「うん・・・。」

コメントしにくいのが見ていてわかる。

「そんなの面と向かって言いにくいよな。」

「それどういう意味?」

「いや、別に。」

わざと含みを持った言い方をする。

「お姉ちゃんと真先輩って。」

と言いかけてそこで止める。

「何?」

真奈美が尋ねるが綾は答えない。

その続きはいっぱい考えられて反対にわからないが、聞かない方がいいかも。

真奈美もそれ以上は聞かなかった。


部室の扉がノックされた。

その瞬間におしゃべりは止み、扉にみんなの視線が集まる。

扉が開けられ

「失礼します。」

と3人の新入部員が入ってきた。

3人が横に並ぶ。

昨日の入部届通りに男子が1人と女子が2人。

見た目で判断してはいけないが、一番左端に立っている男子はスラっとした細身で色も白く、運動とは無縁な感じ。

真ん中の女子は小柄な子で、はっきりした性格がにじみ出ているような。

右端の女子は、対照的なほどに背が高く、何か運動部でやってきたのかなと思わせるがっちりした体格。


「風早研二と申します。よろしくい願いします。」

「前田美和です。よろしくお願いします。」

「堀裕香と申します。よろしくお願いいたします。」


挨拶の後、部長からの部の説明が終わると、俺たちの自己紹介、そして質問タイムの始まりだ。

中学での部活動を尋ねる。

研二は科学部、美和は吹奏楽部、裕香は剣道部。

「裕香ちゃん、剣道やってたの?私もなの。」

と萌が嬉しそうだ。

研二:高校でも科学部があれば続けたいと思っていましたが、うちの高校には生物部しかありません。僕は物理と化学に興味があるので生物部に入るつもりはありませんでした。

美和:高校の吹奏は厳しいし、休みもないと聞いていますし、中学でもう十分と思っていました。勉強のことも心配ですし。

裕香:小さい頃から道場に通って剣道ををしていましたが、夏は特に暑いですし、打たれたら痛いから、もう終わりにするつもりでした。やっぱり高校の部活って、中途半端には続けられないですし。

「ほんと。防具のないところを打たれたらすごく痛いもんね。防具があっても痛いときは痛いから。」

萌がわかるわかると言ったふうにうなずく。


漫画や絵を描いたことは?

研二と裕香は全くないと言う。裕香は描けるようになりたいと言い、研二は評論をやりたいと言った。美和はイラストを簡単に描く程度らしい。


何で漫研に?

研二:科学関係の部に入らないなら、全く違うことをやってみたくなったからです。漫画はもっぱら読むだけですが興味がありました。でも絵が下手で漫研は無理と思っていたんです。でも、描けなくてもやれると昨日のオリエンテーションで聞いて安心しました。

ここで一斉にみんなが俺を見る。

由衣は笑いをこらえるのに必死だ。

頼むから入ったばかりの子たちにいらないことを言わないでくれよ。

美和:もっと本格的にイラストが描けるようになりたいと思ってましたから、初めから漫研が第一候補でした。でも私には部の雰囲気ってとっても大切で、昨日のオリエンテーションでここでならやれるって思って決めました。

裕香:文化部にしようと決めてましたが、ずっとどの部に入るか迷っていました。昨日のオリエンテーションを見て漫研に入りたいと思いました。先輩が優しそうで、活動が楽しそうに思えたからです。もちろん漫画は好きです。

これは嬉しい。

3人ともオリエンテーションが決め手になっているとは。

練習しながらみんなで話して何度も脚本を書き換えた。

新入生の心に俺たちの思いを届けようと。

その甲斐があった。


その後は、みんながまたもや興味本位で好きなことを聞く。

推しを聞かれて、研二が「マイちゃん」と答えた。

「ポスターとか張ってるの?」

と真奈美。

「いいえ。持ってません。」

チラッと俺を見る真奈美と由衣。

頼むから、な。

でも、研二とは気が合いそうだ。

マイちゃんが好きなヤツに悪いヤツはいないはずだから。

誰もいないときに2人でマイちゃん談議をしたいものだ。


やっぱり俺の質問は一つだけ。

得意な教科は?

研二は理科、美和は英語、裕香は得意と言える教科は特にないとのこと。

やっぱり思う。

それを聞いて何になる?


質問タイムが終わり、今日はこの後どうするか、3人に部長が尋ねる。

部誌が見たいと美和が言う。

それを聞いて研二も裕香もそうしたいと。

「じゃ、私も一緒に。」

と綾。

そう言えば、俺も入部した日に部誌を見せてもらって、評論を書くって決めたな。

あれから1年か。

ほんと、早いな。


綾はすでに部誌を持っているので、今日入部した3人に部誌を渡すと、4人で集まって座った。

「ねぇ、中学はどこ?」

美和がみんなに聞く。

みんな違う中学校の出身のようだ。

ということは、一年生どうしも今日が初顔合わせということか。

どうやらこの感じでは、美和が一年生のまとめ役になりそうだ。


明日から、本格的に全員での活動が始まる。

今は何の決まりもないが、できる限りみんなで集まって活動したい。

悪いが、俺が入った頃の漫研にはしたくない。

先輩は来ないし、俺たちはほったらかしにされていた。

一年生も今はやる気に満ちているだろうし、部活は毎日するものと普通に思っているはずだ。

俺たちも指導と言えば大げさだが、この一年で得たものを伝えたい。


後輩が増えるって嬉しいな。

先輩としての自覚も強くなる。

漫研のことも評論も、もっともっと頑張るぞ。

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