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新年度になって授業も始まった。

そして、ついに新入部員が入ってくる。

真奈美の予告通りに真奈美の妹が。

聞かされていたとは言え、いざ現実になると思うと落ち着かない。


真奈美が言うには、綾は、昨日の入学式の日に最初のホームルームでいろいろなプリント類といっしょに入部届が配られると、解散になった後すぐに記入して顧問の先生に提出したらしい。


顧問の先生から部長が聞いて、その翌日、つまり今日に全部員が招集された。

俺たちが入部したときのように。


新入部員が入部届を出しにきたら、その翌日に部室に来るようにと顧問の先生に伝えてもらうようにお願いしている。

そして、先生から聞いた部長から連絡が来て、翌日に必ず上級生全員で迎えると言うオキテがある。

いい伝統だと思う。

俺たちも、あの日、全部員で迎えてもらえて嬉しかった。


「私と綾って似てないからね。私はお母さん似で、綾はお父さん似だから。」

あらかじめ、真奈美からそう聞いていた。


で、当日。

みんなで放課後に部室に集って、綾が来るのを待っている。

昨日からずっと引きずっていた美鈴との関係修復だが、何のことはない。

まるで何もなかったかのように普通に話せた。

美鈴のあの性格のおかげだな。

よくも悪くも。


「真奈美の妹ってどんな子なんだろうな。まさか、真奈美より激しいってことはないよね?」

と萌。

「それ、どういう意味?私ってそんなに激しいの?て言うか、あんたが言ってる激しいって、そもそも何なの?」

「え?自覚なし?普通に言われることが結構、心にグサグサきてたんだけど。」

萌が前の件のことで仕返しをしているようだ。

あのときは、俺がかぶってやったのに。

やっぱりバレてる。


と、そのとき、扉がノックされた。

緊張がみんなに走る。

「失礼します。」

扉が開いて、一人の女の子が入ってきた。

髪を後ろで一つ括りにした真面目そうなかわいい子。

確かに。

先に聞いていなければ真奈美の妹とはわからないほど似ていない。

「昨日、入部させていただきました小林綾と申します。よろしくお願いいたします。」

深々と頭を下げる。

まるでビジネスの世界での挨拶のように、きちんとした挨拶をする。


まず部長から活動の内容や年間の予定などが説明される。

そして上級生が自己紹介をしたら、綾からの自己紹介の代わりに、その後は、上級生からの質問攻めだ。


何で漫研に入ろうと思ったの?

「姉が入ってて、楽しいっていつも聞いてたからです。」

漫画は描いているの?

「いえ、書いたことはありません。でも書けるようになりたいです。」

何の部活をしていたの?(本当はみんな知っているけど。)

「卓球です。」

いいとこまでいったことは?

「市の大会でいつもベスト8止まりです。一度だけ4に入ったことがあります。」

それって、かなりじゃない?

そのレベルがわからないから真奈美を見る。

「うん、私が引退するころには私より上手かったよ。2年から団体戦のレギュラーだったし。」

「卓球はもういいの?」

由衣がわかっていながら聞く。

「はい、中学でもうお腹いっぱいです。」

合格だ。

そもそも合格も不合格もないのだが、もう同志といった感じだ。

その後も

「好きな漫画は?」

「好きな食べ物は?」

「好きなタイプは?」

「推しは?」

みんな、思いつくがままに好き勝手に聞いている。

俺は遠慮して一つだけ。

得意な教科は?

「数学です。」

これ、聞いて何かになるのか?。

最後に咲良が期待を込めて尋ねる。

「綾ちゃん、走るのは速いの?」

何をもって速いとか遅いとか答えていいのやら。

綾が答えに困っている。

「速いよ。」

真奈美が代わりに返事する。

「そう。」

咲良が満面の笑みで答える。


一年生1人でずっと緊張していただろうし、何を聞かれるかわからない不安もあっただろう。

綾の顔に疲れが見える。

質問タイムが終ると、今日はここまでということで、綾が帰っていった。

部長も副部長もすぐに帰ってしまった。


二年生だけになる。

「ねぇ、姉妹で同じ部活ってやりにくくない?」

萌が真奈美に。

「何で?よくあることじゃない。中学でも2年間一緒だったし。甲子園見てても兄弟で同じチームってよくあるじゃない。」

「そうなの?私のお姉ちゃん、将棋部だっただから、そういうの全然わからないな。」

剣道と将棋か?

それはわからないだろうな。


美鈴が少し遠慮気味に

「ねぇ、真奈美。あんたと真ちゃんが付き合ってるの、綾ちゃん知ってるの?それ次第で私たちも気を付けないといけないから。」

興味本位で聞いているんじゃないことを強調している。

美鈴もあれ以来、気を遣っているようだ。

少し間が空いたが、真奈美が

「知ってるよ。でも、真ちゃんがうちに来たことないし、綾にも会ったこともないし、今日が初めて。」

「そう。じゃあ、普通でいいか。」

「うん。」

「意外に真ちゃんの方がやりにくいかもね。」

と咲良。

「うん、そうだな。でも他の新入部員と変わらないように接するよ。」


それで解散。

3人が部室を出て行く。


俺たちは少し残る。

「一年生、もっと入って欲しいよな。」

「うん。私たちの後の代も5人いないとヤバいんだよね。綾にも友達誘うように言っとくよ。」

「頼むよ。漫研、面白いと思うんだけど、何でかな。」

「真ちゃんだって、どの部に入るかっかってときには漫研は候補になかったじゃない。私が漫研に決めたって言うまで。」

「確かにそうだな。やっぱ、みんなに知ってもらわないと。」

「じゃあ、やっぱり明日の新入生のオリエンテーションの部活動紹介が勝負ね。」

由衣が期待を込める。

「ああ、そうだな。気合が入るな。練習の成果を発揮しないと。」

「うん。頑張ってね。私たちも裏方、しっかりやるから。」

真奈美も気合が入っている。

俄然、やる気が満ちてくる。

明日は勝負の日だ。

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