表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/44

一年生が終わる

あのホワイトデーから5日経った今日、3学期の終業式が行われた。

実質、学校での1年間が終わったことになる。

早かったな。

こんなに早く一年間というより一年生が終わるなんて。

オーバーな言い方とわかっているが、この前入学して漫研に入部したような気がする。

こうやって、あっという間に卒業するのかな?


3月も下旬に近くなって、部室にいても寒さは感じなくなってきたのが嬉しい。

終業式の毎度の決まりで、部室に集まって部長からのありがたいお話を聞く。


「だいぶ前のことになりますが、皆さん、書華美展お疲れ様でした。今年もいい作品を展示できて、お褒めの言葉もたくさんいただけたました。新年度には新入部員を迎えますが、やはり目立たないと私たちの存在を知ってもらえません。そのためにも、入学式の2日後に行われる部活動オリエンテーションで、漫研の活動をしっかりとアピールする必要があります。内容について話し合いたいと思いますので、明日からいつもの時間で集まりましょう。都合の悪い人は前もって言ってくれれば大丈夫です。話は変わりますが、私と副部長は、新年度は3年生になりますので、5月くらいに新体制ができたら引退することになります。そうなると今の一年生が最上級生になって新入部員を指導して部を引っ張っていくことになります。スムーズに引き継ぎができるように、今から、次期部長や副部長の話をしておいてください。今年はたくさん一年生が入ってくれて、活発に活動ができてとてもよかったと思います。」

これで話は終わりとばかりに少し間を空けて

「皆さん、一年間、お疲れ様でした。」

「お疲れ様でした。」

体育会系のように、みんなの張りのある大きな声が重なる。

もうこれが当たり前になっている。

こんな言い方をしては悪いのだが、入部したときには考えられなかったことだ。

それだけ、部がまとまったということだ。

俺は猛烈に感動している。


解散になるや否や、萌がみんなに声を掛ける。

「この後、どうする?」

由衣がその気持ちをいち早く察する。

「少し1年で話さない?」

「いいね。次に話すのは2年だし。」

美鈴が賛成してくれる。

「カフェでもいいけど、さすがに6人が座れる席はなさそう。」

真奈美がそう言うと

みんなもウンウンとうなずいている。

俺もつい気持ちが昂って

「いろいろあったけど、チームマンケンで一年の締めだな。」

「それよね。いろいろいっぱいあったけど、一番になって新記録出したこと。私には一年での最高のこと。」

美鈴が嬉しそうに振り返る。

「うん。」

みんなが笑う。

もちろん咲良も。


その流れで、そのまま部室で話をすることになった。

「部長の話にあったけど、次の部長と副部長のことだけど。」

と萌が切り出す。

しばらく居心地の悪い沈黙が流れる。

「結局、私と咲良になるのよね。」

と美鈴。

それまでだれも美鈴を見ることができないでいた。

美鈴を見ると、意外にサバサバとしたさわやかな顔でみんなを見ている。

「いろいろ考えるところもあるけど、みんなが私が部長をすることを納得してくれて認めてくれるんだったら、私、喜んで部長をするよ。」

「私も副部長、させてもらう。」

と咲良。


ここにきて、やっと逃げてばかりの自分が恥ずかしくなった。

2年ではこんな俺じゃなくて、絶対に逃げない俺にならないと。

「ああ。俺、2人を全力で支えるよ。」

言葉通りに誓う。

「私も。みんなでやっていこうね。」

萌が自分に言い聞かせるように言う。

「そうよね。みんなでね。ごめん。」

真奈美が目を潤ませている。

「チームマンケンだもん。何があっても負けないよ。」

由衣が自信満々に微笑む。

こうして、チームマンケンは来年度に向けていいスタートを切った。


「で、この後は?」

とみんなに尋ねる由衣。

「そうだな、せっかくだし、ゆるゆるだった一年の締めの活動でもして帰るか。」

それを聞いた5人の顔がキッとなる

「ゆるゆるじゃなかったよ。真ちゃんはゆるゆるだったかもしれないけど、私たちはかなり締まった一年だったから。」

と美鈴。

「そうよ。文化祭までなんて、生きた心地がしなかったよ。そのあとの書華美展のイラストも大変だったし。ゆるゆるだったのは真ちゃんだけだよ。」

と由衣。

みんなの顔が怖い。

まずいな。

なんとか、話の方向を逸らさないと。

「わかったよ。悪かったよ。俺も次の文化祭にはちゃんと自分で、みんなを唸らせるような評論書くから。それまで、いろいろ批評してくれよな。」

「うん、わかった。ビシバシ批評してあげる。」

真奈美が意地悪そうな笑みを浮かべた。


「新年度が始まったら俺たち2年だし、1年の新入部員が入ってくるんだろうな。」

「そうだね、そうなるんだよね。」

嬉しそうな由衣。

「そうなったら、私たち先輩になるのか。中学のときは、卓球じゃあ新入部員に負けない自信があったけど、漫画はどうだろう。凄い一年が入ってきたりして。」

「いいんじゃないか。俺、そんな子が入ってきてくれたらいいなって思うよ。漫画って、勝つとか負けるとか、そういった世界じゃないし。互いに教えあいながら、部のレベルが上がったらいいなって思うよ。」

「そうよね。でも一人だけそこにはまらない人がいるけど。」

皮肉めいた言い方の由衣。

5日前の仕返しか?

でも、もう慣れているから流す。

「そうだな。残念だな、そいつ。」


「ねえ、私たちも後輩から萌先輩なんて呼ばれるのかな?」

萌のテンションが高い。

「えっ!言われてみればそうなるのか。」

美鈴の反応が意外だ。

「咲良先輩か。そんな呼ばれ方、後輩に今までされたことないな。」

咲良が少しはにかむように微笑む。

「先輩って呼ばれるからには、上手いかどうかとは別にしても、漫画に対する姿勢をきちんと見せないとね。」

真奈美が自分のポリシーを示す。

「うん、そうだな。でも、新入部員にはお手柔らかに頼むぜ。俺たちは同級生だったからまだ耐えられたけど、あれを入ったばかりの子が先輩から浴びせられたら、その子、次の日から来なくなるからな。」

「そんなことわかってるよ。始めは褒めて伸ばすよ。」

と、したり顔の由衣に

「そうか。由衣もこの一年でおとなになったな。」

褒めたつもりだったのに

「もう。そうやっていつも私を馬鹿にするんだから。」

また由衣の機嫌を損ねてしまった。


「そう。私、最初に真ちゃんと由衣ちゃんが入ってきたき、2人は付き合てるって思ったよ。『真ちゃん』と『由衣』だったし。絶対にそう思うよね。」

と美鈴が面白そうにみんなに振る。

「うん、そうとしか思えなかったよね。やたら仲がいいし。」

と咲良。

「行きも帰りも一緒だし。それがねー、真奈美とくっつくなんて。」

と萌。

毎度ながら悪いことをしているわけじゃないのに言い訳をしているようで嫌になるが

「だから、俺と由衣は。」

「はいはい。家が隣の幼馴染なんでしょ。」

萌が代わりに答えてくれる。

「そうは言ってもね。真奈美は心配はないの?」

またもや美鈴がいらないことを言ってくる。

真奈美を見ると余裕の笑みを浮かべている。

「そんなこと思ったこともないよ。それに、私、由衣ちゃんのことも好きだし。」

「こりゃ本物だわ。ごめん。」

美鈴が片目をつむった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ