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ホワイトデー

この前バレンタインデーで俺の誕生日を祝ってもらったと思ったら、もうホワイトデーが明日に迫っている。

一か月がこんなに早く過ぎるなんて。

2月は逃げるか。

昔の人は上手いことを言う。

じゃあ、3月もあっという間に去るんだろうな。


ホワイトデーの話は2人からは全く出ない。

お返しの催促になるからかな。

忘れているとは思えないから。


2人からチョコをもらっているので、2人に返さないと。

バレンタインのような特別に大きなイベントではないから、一緒でいいか。


当日。

サプライズにはならないだろうけど、何の前触れもなく突然渡そうと思っている。

朝に由衣との登校が始まったら、放課後に由衣の家に帰るまで、一人でコンビニへ行くことができそうにないので、今朝は早く起きて、コンビニに行ってロールケーキを3個買って冷蔵庫に入れておいた。


今日の放課後も3人で由衣の部屋で活動する。

俺は自転車を自分の家に停めて、ロールケーキをカバンに隠して由衣の家に入る。


そう言えば、バレンタインデーのときに、真奈美がチョコを渡すときに何て言って渡したらいいのかわからないと言ってたな。

俺はどうだろう?

今まで由衣には「はい」くらいで渡していたから、改めて考えたら何て言って渡したらいいんだろう?

「ホワイトデーだから」は変だし「チョコのお返し」も変だ。

少し考えて「チョコありがとうな」くらいにしておくことにした。


由衣の部屋に入ったら、2人はすでに活動を始めていた。

書華美展で展示するイラストが仕上がってから、漫画の制作に入っている。

今回は、由衣も全部自分でやると張り切っている。

次の文化祭まではまだ半年ほどあるし、去年は手伝ってもらいながらも初めて自分の作品ができあがっているから段取りもわかったろうし、純粋な由衣の作品が見られそうだ。

真奈美は余裕で仕上がるのはわかっている。


「休憩しようか。」

と由衣。

「うん、疲れた。集中してやると時間を忘れるね。」

と真奈美。

由衣が紅茶を淹れてくれた。


「じゃあ。」

とカバンからロールケーキを取り出す。

シュミレーション通りに

「チョコ、ありがとうな。」

と2人に渡す。

「えっ!」

と驚く真奈美とは対照的に

「待ってました。」

とニコッとする由衣。

「そうだ。今日はホワイトデーだった。」

真奈美は本当に忘れていたみたいだ。

「こんなの初めて。嬉しい。」

真奈美にそんなに喜んでもらえるとは。

由衣にお返しするのは毎年のことだが、彼女にバレンタインのお返しするなんて俺も初めてだから嬉しくなる。

俺の分も出して、みんなで食べる。


「ねえ、真奈美ちゃん。手作りチョコって難しいの?」

由衣が遠慮がちに尋ねる。

「来年は手作りするなんて、無謀なこと考えてないよな。」

真奈美が答える前に俺が先にツッコむ。

予想どうりにムッとする由衣。

「何で無謀なのよ。やってみないとわからないじゃない。」

「手作りって言うからには、カカオの実を収穫するところから始めるんだぜ。」

「えっ?どこで?」

本気にはしていないだろうけど真面目に聞いてくるのが面白い。

「そりゃ、アフリカとか東南アジアとかでだろ。」

「そんなの無理に決まってるよ。」

「そうだよな。だから百歩譲ってカカオの実を買ってくるところからは始めないとな。」

「売ってるの?で買ってきて、それをどうするの?」

心配そうに由衣が聞く。

真奈美はもう笑いを押さえるのに必死で、わざと真面目な顔をして聞き入っているふりをしている。

「俺もよく知らない。醗酵させたり乾燥させたりローストしたり、いろいろやるらしいよ。ネットで調べたらいいんじゃない?」

「やっぱ、調べても無理ぽい。真奈美ちゃん、それやってるんだ。すごいね。」

羨望の眼差しで真奈美を見ている。

疑うそぶりもない由衣に、真奈美が辛そうな顔をする。

「真ちゃん、もうやめようよ。私まで悪者になって由衣ちゃんに嫌われちゃうよ。」

「えっ?」

何のこと?とばかりの由衣。

「由衣ちゃん、手作りチョコっていってもね、ほとんどの人は板チョコか何かの既製品のチョコを買ってきて、温めて溶かして型に流し込んで冷やすってことくらいしかしないよ。その際に、アーモンドを混ぜるとか、仕上げにパウダーを振りかけたたり何かでトッピングするくらいよ。手を掛ける人はガトーショコラやブラウニーなんかを作るけど。」

しばらく間が空くと、由衣が怒りに満ちた顔になる。

「また騙したな。」

「いや、そんなの本気にするほうがおかしいだろ。カカオを実からなんて工場でもないと無理だよ。」

「そんなのわかるはずないじゃない。何でいつもそんなんふうに私を馬鹿にして騙すのよ。この前の強力粉のことだって。」

由衣が大粒の涙を流し始めた。

やりすぎた。

いつもそうだ。

こうなって初めて気付く。

どうしよう。


うろたえることしかできない俺を真奈美が助けてくれる。

「由衣ちゃん、ごめんね。お詫びに、今度うちで手作りチョコを一緒に作ろう。次の土曜か日曜くらいどう?都合が悪かったら他の由衣ちゃんの都合がいい日でいいけど。」

「えっ、教えてくれるの?」

「うん。材料は私の使い慣れてるものを用意しとくから、何も持って来なくていいよ。」

「本当?ありがとう。教えてもらいながら一緒に作ったら、私にも作れそう。」

「温度とか気をつけないことがいくらかあるけどそう難しくはないよ。」

「そうなの。楽しみ~。」

由衣の機嫌が直った。

とても嬉しそうに涙をぬぐいながら笑っている。

真奈美に感謝しかない。

「来年のバレンタインには手作りチョコ作ろっと。」

「俺のためにか?他にあげる人はいないしな。」

また、いらないことを言ってしまった。

「あげるわけないじゃない、何言ってんの!」

きつい目で睨まれた。

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