俺の誕生日
2月が近付いている。
2月14日はバレンタインデー。
そして俺の誕生日だ。
こんなおめでたい日に俺は生まれ落ちた。
とは言え、今まで由衣以外の子からチョコをもらった記憶はない。
真奈美からは手作りチョコをもらう約束をしている。
俺から催促したわけではないのだが。
由衣からはいつものハートチョコレートだろうけど。
真奈美が俺への誕生日プレゼントが気になっている。
LINEで由衣に尋ねる。
「由衣ちゃんは真ちゃんの誕生日にはプレゼントをあげてるの?」
「小さいころはあげてたけど、いつの頃からかは忘れたけど、お互いにプレゼントはなしにしようってことになったよ。チョコレートはあげてるけど。私はもっぱらハートチョコだけど。で、真ちゃんがホワイトデーにロールケーキ買ってくれてた」
「私はプレゼントをあげたいんだけど、今までそんなことしたことないから、何がいいか全然わからなくて」
「何でもいいんじゃない。心がこもってたら」
「そうは言われても。変なものあげられないし」
「わかった。私もそういうの全然わからないから、ネットとか彼氏いる子に聞いてみるとか、リサーチするよ」
「ありがとう。私から他の子にそういうことを聞くのって聞きづらいのよね」
「わかるよ。そこのところは永遠のフリーの私にまっかせなさい」
「永遠のフリーって。そんなの聞いたら悲しむ男子、いっぱいいそう」
「もう、おもしろく言わないでよ。じゃ、リサーチ結果が出たら連絡するね」
「ありがとう、お願い。私も調べるけど、経験者から聞くのが一番信憑性があるよね」
「うん。その方向でいくね」
その後は、由衣が動いてくれて、いろいろとデータが集まった。
名前入りのものが人気なようだ。
文具、マグカップ、ハンドタオルといったところがメジャーらしい。
「真奈美ちゃん、どれがいい?」
「どれがいいんだろう。どれももらえたら嬉しいと思うんだけど。少し考えるね」
「うん。でも、名前入れてもらうんだったら日にちも掛かるから、そこは調べといたほうがいいよ」
「うん、ありがとう。これから調べるね」
明日から2月だ。
今朝も由衣と一緒に登校しながら、気になっていたことを由衣に聞いてみた。
「2月って俺の誕生日があるんだけど、真奈美から何か聞いていない?誕生日プレゼントのこととか。」
「だいぶ前から聞いてるよ。何がいいかなって。」
「えっ、そうなの。」
「何で驚くの。当り前のことなのに。」
「いや、俺としては由衣とみたいにプレゼントはお互いなしにしようって思ってたんだけど。」
「それはひどいよ。真奈美ちゃん、ずっと考えたんだから。名前入りのにするからって言ってたから、もう注文してるよ、きっと。」
「そうか。」
「そんなこと言うんだったら、もっと早く言ってあげないと。年内には言うのが当り前だよ。」
「そうか、そうだよな。」
「それに、私と真奈美ちゃんは違うんだから。彼氏と彼女でしょ。誕生日にプレゼントをもらわないしあげないなんてないよ、絶対に。」
「そうだよな。俺、馬鹿なこと考えてたよな。」
「うん。」
「じゃあ、今までの話、なしでな。」
「当り前よ。絶対にないよ。」
前日の13日の木曜日の朝。
登校しながら由衣が
「悪いけど、明日、用事があって帰るの遅くなることになっちゃたの。活動とかするんだったら、真ちゃんちでやってくれる?」
由衣が申し訳なさそうに言う。
ウソだ。
ウソが上手い由衣にしてはわかりやすすぎる。
明日は俺の誕生日だから活動しないとか、2人で祝うとか、俺や真奈美が由衣に言いにくいと思ったんだろうな。
悪いとは思いながらも、その気遣いに甘える。
「そうか。じゃ、俺んちでやるわ。」
「うん、ごめんね。」
真奈美にLINEでそのことを伝える。
「悪いな、由衣ちゃんに」
とだけ返ってきた。
俺は何も返せなかった。
明けて今日は14日。
朝、由衣からチョコをもらった。
昨年までと違うのは、ラッピングされていたこと。
去年までと同じハートチョコレートだが、ラッピングされているだけで、見た目もそうだけど、味も各段に違って感じるのが不思議だった。
放課後に俺の家に真奈美と一緒に帰る。
俺のベッドに座って
「どっちを先にしようか?」
と真奈美。
「どっちって?」
「バレンタインと誕生日。」
「どっちでも。真奈美がいい方からににして。」
「じゃあ、バレンタインから。」
真奈美がカバンからラッピングされたチョコを取り出す。
そして俺に差し出すが、それに沿える言葉がない。
困った表情の真奈美。
「こういうの、何て言って渡すのかな。こんなの初めてだからわからないよ。」
「俺も初めてだからわからない。真奈美、ありがとう。」
「うん。」
手作りチョコなんてもらうのも食べるのも初めてだ。
この後も、お互いに初めてのことが続くんだろうな。
「次は誕生日ね。」
「ありがとう。」
「まだ渡してないのに。」
「だいぶ前から考えてくれてたったって由衣から聞いたよ。これは言いうなって言われたけど。」
「そう。由衣ちゃんから聞いてたんだね。私、男の子にプレゼントなんてしたことないから全然わからなくて、由衣ちゃんに相談してたんだ。」
「やっぱり。嬉しいよ。」
「じゃ、誕生日、おめでとう。」
真奈美がプレゼントを渡してくれる。
「ありがとう。」
少し重い箱が入っているような形のラッピング。
「何なのかな?」
「開けていいよ。」
ラッピングを破らないように丁寧開く。
このラッピングもずっと大切にとっておくつもりだから。
白い箱が現れた。
ふたを開けると真ん中で仕切られて、白と黒のマグカップが。
白い方から箱から出すと「Manami」と入っている。
「それは私の。持って帰るよ。見て欲しかったから入れといたの。」
黒い方には「Shin」と。
どちらにも、名前の下に今日の日付が。
ペアのマグカップか。
机の上で並べる。
こんなの貰えるなんて。
彼女からのプレゼントなんて初めてで、余計に嬉しくなって泣きそうになる。
「ありがとう。特別なときに使うよ。」
「うん。でも普通に使ってくれる方が嬉しいな。」
「真奈美。」
ベッドの端に座っている真奈美の前に立つ。
えっ!という顔をした後、立ち上がる真奈美。
しばらく真奈美を見つめる。
目を閉じない。
なら。
ぎゅっと真奈美を抱きしめた。
「えっ!」
という声がしたが、すぐに真奈美も手を回してくれた。
キスはまだ早いようだ。




