誕生日会
まだまだ先と思っていたら、すぐに来てしまった。
由衣の誕生日会の日が。
今日は、真奈美が俺の家に来て、由衣の家に一緒に行くことにしている。
前日の土曜日の夜に真奈美からLINEが入った。
「明日のこと、すごくドキドキする」
「俺も。小学校の頃から毎年行ってるけど、こんなの初めて」
「由衣ちゃんの両親ってどんな人?」
「おじさんは基本普通。おばさんは話好きのおばちゃんって感じ」
「それじゃ何もわからないよ」
「人の印象なんて人それぞれで違うから。会ったらわかるよ」
「うん。でもやっぱり緊張するよ。今になってやめといたらよかったかもなんて思うよ。今晩眠れるかな」
「食い気に負けた真奈美が悪い。もう、観念しろよ」
「うん。観念する。じゃ」
「うん、おやすみ」
明けて翌日。
呼ばれている時間より30分ほど早く真奈美が来た。
かなり緊張しているのがわかる。
10分前くらいに行こうと思っていたので、俺の部屋で少し待機。
「ポスターは貼らないんだね。」
「その話ができるんだったら、落ち着いてるってことだな。」
「落ち着いてるわけないでしょ。心臓が口から飛び出しそうだよ。」
「オーバーだな、真奈美は。」
「真ちゃんは?」
「俺はもうどうにでもしてくださいって感じ。美味いもの食わせてもらえるから、少しくらいのリスクはあってもしょうがないかな。」
「はー。いいな、そんなに割り切れるって。」
電波時計で11分前になったので家を出る。
インターホンを押す。
「はーい。」
と由衣の返事。
ドアを明けてくれる。
「ご招待いただきましてありがとうございます。真奈美ともども楽しみにしておりました。」
照れるからわざとふざける。
「来てくれてありがとう。」
由衣がニッコリしてくれて緊張がほぐれる。
そのままダイニングに通される。
まずは挨拶。
「おじさん、おばさんご無沙汰しています。」
小さい頃はタメ口だったが、いつからか敬語で話すようになった。
おじさんもおばさんが嬉しそうに迎えてくれる。
おばさんが
「真ちゃん、本当に久しぶりね。この前に会ったのは夏休みくらいじゃない?真奈美ちゃんも来てくれてありがとう。」
「いえ、私こそ、お招きいただいてありがとうございます。」
「そんな堅苦しい挨拶は抜きよ。ゆっくりしていってね。」
「俺は真ちゃんとは春以来かな。真ちゃん、高校生になって大人っぽくなったな。由衣とは大違いだよ。そりゃ、彼女がいるんだもんな。大人っぽくもなるよな。」
いつも結構KYなおじさんがいきなりだ。
返事に困って由衣を見る。
保障してくれるんだよな。
一瞬目が合ったのに慌てて目をそらす由衣。
やっぱり。
期待していなかったけどこりゃダメだ。
大きなテーブルに美味しそうな料理がところせましと並んでいる。
俺にはわからないがフレンチやイタリアンやその他の洋食らしい。
和食や中華でないことだけはわかる。
真奈美と並んでおじさんとおばさんの向いに座る。
食事会が始まる。
無難なところで、俺たちの共通の話題の漫研の話から入る。
文化祭のこと、体育祭のこと、今は書華美展に向けて頑張っていることなど。
「俺は真ちゃんって高校でも野球するものだって思ってたから、漫研に入ったって聞いて意外だったよ。」
「はい。中学で野球には限界を感じていましたから。レギュラーになれないのをわかっていて野球部に入るほど野球が好きってわけじゃないですから。」
「そうか。由衣も中学でバレーはもうやり切ったなんて言ってたな。」
お母さんが話に入ってくる
「でも漫研って聞いてビックリしたわ。由衣がいっぱい漫画を買っているから好きなのは知ってたけど、まさかそんな部活に入るなんて、ねぇ。」
「はぁ。」
「私も意外だったわ。真ちゃんも漫研にだなんて。漫研って漫画を描くんでしょ。」
由衣が怪しいい目になった。
保障するどころか逆じゃないか。
この流れはもうやめて欲しい。
俺の苦しい気持ちを察して真奈美が助けてくれる。
「そうですね。始めたばかりですけど彼なりに毎日頑張っています。」
「そう。」
ウソだけどウソも方便だ。
こんな話、長々としてもしょうがない。
これで話が終わって由衣が少しつまらなさそうだったが、何とかスルーできた。
その後は、由衣の両親が真奈美にいろいろと聞いたが、許容範囲で助かった。
やっぱりおとなだ。
それにしても今日の料理も美味しかった。
話は由衣と真奈美にほぼほぼ任せて、俺は欠食児童のようにひたすら食べてた感じ。
食事会が終わりに近付いてきたのを察してか、おばさんがつぶやくように言う。
「由衣の彼氏も交えて誕生日会がしたいけど、それっていつになるやら。」
由衣がピクッと反応する。
「前にも言ったでしょ。私は付き合う気がないの、今は。」
キッパリ言う。
「なんでかな?そこは教えてくれないし。ねぇ、真ちゃん知ってる?そのワケ。」
「まぁ、何度か聞いていますけど。」
それは言わないでとばかりに由衣がお願いの目をしてくるが、それは都合がいいってもんだ。
「何でなの?」
「由衣が言うには、付き合うってことが面倒らしいです。付き合って男に束縛されるのが嫌みたいですよ。」
何で言うかなとばかりのきつい目になる由衣。
おばさんが納得した様子。
「そう。やっぱり親子って似るもんなのね。私もそうだったな。高校くらいのときは。」
昔を懐かしんでるような、遠くを見る目になっている。
「確かに誰かと付き合うってことになったら、束縛されるから、誰とも付き合わないって決めてたわ。でも、この人しつこくって。何回断っても、告白に来て。つい情にほだされちゃったんだよね。」
由衣が「えっ!」と驚く。
こんな話を聞いたのは初めてか?
おじさんがバツが悪そうにしていた。




