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10月も半ばを過ぎ、窓を全開にしておけば、なんとか部室で過ごせるようになった。

ということで、俺たちはここのところ、部室で活動している。

真奈美と由衣は1枚目のイラストの下絵ができて色塗りをしている。

部室には画材道具は一通り揃っているが、ほぼ1セットずつしかないので、みんなが始めたら争奪戦になりそうで、早めに取り掛かるのだとか。

真奈美はアクリル絵の具を、由衣はパステルを使う。

俺はスマホで評論を読んでは、腕組みをして眉間にしわを寄せて唸るのがおもな活動だ。

もちろん、頭はフル回転している。


いつものように活動していたら、部室の扉がガラガラと開いた。

反射的に振り向く俺たち。

そこには萌が。

「どうしたの?」

と真奈美。

「えっ?活動しに来たんだけど。」

「あ、そうだよね。ごめんごめん。」

「何か傷つくな。私がよっぽど漫研の活動していないみたいじゃない。確かにそうだけど。」

笑いながらイスに座る。

萌でよかった。

これが美鈴だったら、おそらく、この程度では収まらなかったかも。

「私が活動しに来るのがそんなにおかしいの!」

なんて激しいバトルになってたりして。

でも前の美鈴と今の美鈴は違うからな。


「美鈴と咲良は?」

「用事があるんだって。帰った。」

「そう。で、イラストは進んでる?」

と真奈美。

「全然。今日から下絵を書こうかなってところ。真奈美も由衣ちゃんも色塗り?早いね。」

「うん。みんなが下絵ができあがったら、色塗りの画材が使えなくなるから。」

その瞬間に萌が

「あっ、そう言われればそうだ。このあと下絵ができたらみんな塗り始めるよね。部長や副部長がいたら、まず優先になるし。なんでもっと下絵だけでも早く仕上げとかなかったんだろう。」

萌がいかにもしまったという顔をする。

「じゃあ、今から集中して描いたらいいじゃないか。しゃべるのが私たちの活動なんて言ってる場合じゃないぞ。」

「もう、古い話しないでよ。」

バツが悪そうだ。


その後は、漫研特有の音だけが聞こえる静かな時間が流れる。

「フー。」

と由衣が大きな息を吐いたら

「少し休憩する。」

「うん、私も。」

「じゃ、俺も。」

由衣の部屋でのパターンだ。

「私も休もう。」

と萌も。


「ねぇ、だいぶ前から下絵を描いてたの?」

萌が2人に聞く。

「うん。文化祭の後の次の週くらいからかな。うちに集まってね。一人だとサボっちゃうから。」

「へー。真ちゃんも?」

「ああ。俺は評論だけど、やっぱり日々勉強だから。一人だと易きに流されてしまうから。ん、今の表現、よくない?」

「私は文才がないからわからないよ。評論なんて絶対に無理。・・・ところで、真ちゃんは、本当に絵を描かないの?」

それは、絶対にしてはいけない質問だ。

その瞬間に、待ってましたとばかりに2人が食いつく。

「描けるんだけど、描かないんだよねー。」

と由衣。

「もうその話はするなよ。」

「ほんとは描けるの?」

やめろって、萌。

「うん。でも描く対象が特化してるの、真ちゃんの場合は。天才って、そんな人多いでしょ。」

真奈美の悪乗りが尋常でない。

「へ~。その真ちゃんの描く特化した対象って何なの?」

2人が顔を見合わせて、呼吸を合わせたら

「犬!」


その後、2人が俺の『犬』の全貌や部長とのことなど一通りのまつわる話しを萌に話した

萌は楽しそうに聞いていたが、絵を描いてくれということもないし、笑い転げることもない。

これが普通だよな。


休憩を終わりにしたら4人はスッと続きに入るが、俺はとても冷静に続けることはできない。

なんでアイツら、言わなくていことまで言うんだ。

何をするわけでもないのに時間だけは過ぎて、やがて最終下校時刻の放送が入る。

そうだ、今聞くだけ聞いておいてもいいかな。

「なぁ、萌。聞きたいことがあるんだけど。」

「何?改まって。」

「来年、先輩たちが引退したら、俺たちの誰かが部長になるだろ。萌って部長する気ある?」

は~?という顔をしばらくした後

「あるわけないでしょ。ってか、私みたいなちゃらんぽらんな人間が部長したら漫研が終わっちゃうよ。」

あはは、なんて笑うが、それに反比例して真奈美の顔が険しくなる。

ひょっとして期待してたのか?

「では改めまして、その話は私には大変恐れ多く存じますので辞退させていただきます。」

萌の独特のユーモアを交えて、深々と頭を下げて帰ってしまった。


これで残るは咲良と美鈴だけになったな。

今日は用事があって来れなかったみたいだから、明日は来るかも。

来て欲しいが来ないでも欲しいと思うのは、真奈美のことを思ってか。

でも、こういうのは、早く決着を付けた方がいいとも思う。


今になって思う。

部活に入るって、それだけじゃないってことだ。

入った時は楽しいだけの1年生だけど、やがては2年生になる。

それでもまだ自分のことだけやってたらいい。

でも、すぐに現実を突きつけられる。

先輩たちがいなくなり、自分たちの代が来たことを。

誰かが部長になって部を牽引する立場になることを。

そう、この6人のだれかが部長と副部長になるんだ。

もちろん、みんなで部を盛り上げていくのは当り前だけど。


とは言っても、そんなことばかり考えているばかりじゃおもしろくない。

俺たちが上級生になるってことは、やがては、かわいい後輩ができるってことだ。

そんな想像したら少し笑ってしまう。

○○先輩なんて1年から呼ばれるんだろうな。

今の部長にはやめてくれといわれたからやめたけど、次の部長には絶対にやめてくれと言われてもやめない。

同級生だけど「部長」と呼ぶ。

それが俺のケジメでもあるから。

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