次期部長
今日も由衣の部屋で活動とミーテイングだ。
休憩の時間にコーヒーをすすりながら、真奈美と由衣に
「なぁ、早いとは思うけど、来年の春には先輩が引退するだろ。そしたら、1年のだれかが部長や副部長になるんだよな。そのときには2年になってるけど。」
それを聞いて真奈美の顔色が変わる。
「うん、言われてみればそうなるね。」
「まだ早いよ。」
と由衣。
「まぁ、俺ってことは絶対にないから、残りの5人からだよな。」
「何で?」
由衣が不思議そうに聞く。
「だって、唯一絵が描けない部員だぜ。それが部長ってないよ。それに、いろいろとひんしゅく買ってるし。」
「そうかな。リーダーシップがあると思うよ。この前のリレーのときも仕切ってたし。部長に向いてるよ。」
真奈美が評価してくれてたなんて嬉しい。
言葉の裏があるとも知らずに喜ぶ俺。
「でも、漫画で仕切れないと部長になれないよ。なる気もないけど。」
真奈美が慌てて
「私もそんなの無理だよ。そんなガラじゃないし。部を引っ張るとかまとめるなんて絶対に無理。由衣ちゃんなんかいいんじゃない。」
何とか逃げようとしているのが見え見えだ。
由衣がもっと慌てる。
「何でそうなるのよ。私より漫画歴が長いし絵も上手なんだから、私って言うんならその前に真奈美ちゃんだよ。」
「部長と絵は関係ないよ。」
「あるよ。」
いつもは仲がいい2人で、よく組んで俺をはめたりするくせに、大きな利害が絡むと途端にこうなるのか。
「ところで、部長ってどうやって決めるんだろう?香月先輩は唯一の3年だったから、自動的に部長になるだろ。副部長は2年の2人のどちらかってことになるよな。」
「うん、そこは2人で話し合って決めたんじゃない?」
「ん~、どうだろう。2人とも副部長になるのが嫌で、ジャンケンで負けた方がなったってのもあるかもな。」
「ひどいな。志保先輩と澪先輩に言っとこ。」
「冗談だよ。でもその線は濃厚だけど。」
「まだ言ってる。絶対にチクっとこ。」
「やめてくれよ。でさ、俺たち5人いるだろ、どうやって決めるんだろう。」
「俺たちの俺が勝手に抜けてない?1年は6人なんですけど。」
「それは置いといてだな、どうやるんだろうな?まずは立候補?なかったら先輩の推薦?一年の中で話し合う?で決まらなかったらジャンケン?闘って一番弱いヤツがなるとかもありか。そうなったら剣道やってた萌が有利だな。」
「もう、変なこと言わないでよ。」
真奈美が顔をしかめる。
「やりたい子がいたらいいんだけどな。」
と由衣。
「誰が向いてると思う?」
具体的な話を真奈美が振ってきた。
みんな少し考える。
「美鈴か萌じゃないかな。どちらかが部長でどちらかが副部長。」
と由衣。
「俺もそう思った。咲良は絶対に嫌がりそう。」
「うん。私もそれがいいと思う。どっちが部長になっても上手くやってくれそう。」
と真奈美。
「熱い萌とクールな美鈴って、いいコンビニなりそうじゃね?」
うんうんとうなずく2人。
勝手に来年の人事を決める俺たち。
結局は、俺たちじゃなければいいって魂胆なんだけど。
「でもな、あの3人娘たちでもこんな話してたりしてな。」
「それ、あるあるだよね。」
と真奈美。
「で、真奈美と由衣で部長と副部長に決まってたりして。」
「だから何で1人抜けてるのよ。」
と由衣がそれは許さないと言いたげだ。
「それに、私は絶対にないって!」
必死で否定する真奈美。
「結局、みんなが嫌だって言って、最後はみんなでジャンケンになったりして。それが漫研の伝統だったりして。」
と由衣が面白そうに言う。
「無茶苦茶言うなぁ。」
苦笑いする俺。
「でもそうなったら、真ちゃんも逃げられないからね。みんな対等だから。」
と由衣。
「そうなるか。じゃあ今からジャンケンの練習しとかないと。死活問題だからな。」
冗談めかしく俺が言うが
「もう、この話やめようよ。」
悲愴な顔で首を振る真奈美。
ジャンケンになったら自分の可能性があるからか?
確率は6分の2だから3分の1だ。
これはかなり高いな。
本気で嫌がっているみたいだ。
「真奈美も今日から毎日俺とジャンケンの練習だな。」
「私も混ぜて。練習しておかないと部長になっちゃう。」
由衣は本気なのか冗談なのか。
「なんであんたたちは嫌がってるくせにそんなに余裕があるのよ。それなら2人でやってよ。」
真奈美が泣きそうになっている。
こんな真奈美も初めてだ。
頬を染めた真奈美にエロい真奈美、そして今の真奈美。
次々に新しい真奈美が現れる。
「先の話をしても仕方がないよな。どうなるかなんてだれにもわからないし。」
「そうよ、真奈美ちゃん。意外にサクッと決まるかもよ。」
「ほんと?だれかがしてくれるかな?」
「いや、ジャンケンでな。」
真奈美がついに泣き始めた。




