表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/43

ナマコ

今日は土曜日。

明日は真奈美とデートだ。

文化祭も体育祭も終わって一息ついて、デートにはうってつけのタイミングだ。

付き合うようになって4か月ほど経つが、デートは2回目だ。

それも、付き合い始めた日以来になる。

その日は真奈美の希望で映画にしたので、次のは俺の行きたいところに行こうと言われた。


そうは言われてもな。

まだ決まらない。

世の恋人たちはどこでデートしてるんだろう?

遊園地?動物園や水族館?ショッピングモール?プラネタリウムってのもありか?

悩みに悩んだ末に水族館にした。

真奈美に言ったら、長らく行っていないから楽しみだと言ってくれた。


当日。

駅で待ち合わせる。

駅に着いたときにはもう真奈美が待っていた。

今日の真奈美は半袖のブラウスと膝上丈のスカート。

うん、かわいい。

「ごめん、待った?」

「ううん。私が早く着きすぎたから。」


電車に乗る。

すいているから向かい合わせで座る。

水族館の最寄り駅までは30分ほどだ。

「前に行ったのいつくらいだろう?小学生のころなのは覚えてるんだけど。」

思い出そうとしているが、記憶があいまいなようだ。

「そんなに行ってないの?俺、結構行ってるよ。水族館好きなんだ。高校に入る前の休みにも行ったよ。」

「へー、一人で?」

「いや。」

誰と?とは聞いてこない。

気まずいな。

「そのときは由衣と。一人で行くこともあるけど。」

真奈美が少し安心したように見えた。

前の彼女と、とか思ったのかな?

そんなのいるわけないのに。


話をしていたら時間はすぐに経つ。

電車を降りて、歩いて10分ほどで水族館に着いた。


「久しぶり~。」

と、嬉しそうな真奈美。

中に入ると

「わーすごい。こんなだったっけ?」

順番に見て回る。

俺にいろいろ聞いてくるが、水族館が好きなだけで魚に詳しいわけじゃない。

でも、何とか答えられるレベルの質問ばかりで助かった。

へー、よく知ってるね、なんて言われて、あるようなないようなプライドが保てた。

次までに魚のことも調べておこうかなんて思ったけど、次に水族館に行くのは何年も先のような気がする。

何年も付き合うのが決まっているみたいに思っている自分が厚かましいが、今はそうであって欲しい。


一通り見て回り、最後に海の生き物とのふれあいコーナーに立ち寄る。

ヒトデ、ウニ、ナマコ、小さなネコザメやエイもいる。

初めは見るだけのつもりだったのに、子どもたちが楽しそうに触っているのを見ると、俺も触りたくなってしまった。

真奈美と並んでしゃがむ。

ヒトデ、ナマコ、ウニと触っていき、ネコザメもなでてやった。

「私はいい。」

真奈美は怖がって触ろうとしない。

「だいじょうぶだから。どれも噛んだり挿したりしないよ。手を出して。」

なかなか出そうとしないから、真奈美の手をとって、両てのひらを上にしてくっつけさせる。

そう言えば、真奈美の手を触ったのは初めてだ。

「ちょ、ちょっと待って。」

おかまいなしにナマコを載せる。

「えっ!」

と大きな声を出すもんだから、一斉に周りの目が俺たちの方に向けられた。

子どもたちも興味津々の目で俺たちを見ている。

恥ずかしい。

「どう?かわいいだろ。」

「ん~。ビミョウ。」

本当かな?


水族館を出て、駅の方へ向かう。

今日は始めから昼食を食べるつもりで来ている。

駅に近いファミレスに入る。

俺たちにはそれが限界だ。

俺一人なら牛丼のチェーン店というのもアリだが、真奈美と一緒だから・・・。


案内されて座る。

「水族館、楽しかった~。」

真奈美が子どものような笑顔で喜んでいる。

「どう?ナマコデビューの感想は?」

「う〜ん。思ったより気持ち悪くなかったかな。」

「そうか、よかった。次はヒトデに挑戦だな。」

「もういいよ。おなかいっぱいです。」

「最後はネコザメで締めだな。」

「ほんと、もういいから。」

焦る真奈美。


「この前はランチにしたけど、オムライス食べないの?好きなんだろ。」

「え?何で知ってるの?」

「前に聞いたよ。付き合う前だけど。真奈美が毎日部室に来るようになったころ。」

「そんなこと話したっけ?」

「したよ。他にもいっぱい。卓球のこととか推しのこととか。」

「覚えてるんだ。」

「当り前だろ。」

真奈美はその続きを期待して待ってるようだが、俺は恥ずかしくて言えない。

その後、真奈美はオムライスを、俺は好物のカレーライスを注文した。


帰宅してしばらくしたら、由衣からラインが入ってきた。

「デート、どうだった」

「知ってたのか」

「真奈美ちゃんから聞いてた」

「そうか」

「真ちゃんは教えてくれなかったね」

「それが普通だろ」

「で、また水族館?」

「ああ。俺のホームグラウンドで試合を優位に進めないと」

「てことは、今日は決めたの?」

「何を?」

「わかってるくせに。」

「だから何を?」

「決めるときには決めないと愛想を尽かされるよ」

「わけがわからん」

「もういい。」

もう由衣からメッセージが入ることはなかった。


言いたいことはわかっているけど、由衣とする話じゃないからな。

それに今日は初めて真奈美の手に触れたくらいで何もしてないし。

しかもそれってナマコに触らせるためだし。

俺ってロマンチックのかけらもないな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ