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有名人

2日間に亘って行われた学園祭も終わり、今日から通常授業だ。

充実した日々を過ごせて結果も出せて、今日からまた頑張ろうという気持ちになる。


9月なんてまだ真夏だから、とても部室には入れない。

これまでどうりに由衣の家で活動する。

ノートパソコンは真奈美が使うので、俺はスマホを使って、ネットでいろいろな評論を読むことをしばらくは続けることにした。

思ったことや感じたこと、琴線に触れた文章などを書き留めながら。

真奈美も由衣と同じく、ストーリーを作ることから始めている。


「ねぇ、部対抗リレーで、何か、私たち有名人になってない?」

由衣が複雑そうに、でも少し嬉しそうに俺たちに話を振ってきた。

真奈美も同じような顔をしてうなずく。

「私もそう思ったよ、今日は。何か、廊下を歩いてても、私を見てあっ!て顔する人、結構いたよ。」

「あっ!て顔ならまだいいじゃん。俺なんか、指さされて『あっ漫研だ!』って言われたよ。俺の名前は漫研じゃねえ。」

みんなで笑う。

何はともあれ、漫研の知名度が上がったのは嬉しいことだ。


「新しい部員、入ってくるかな?」

と真奈美。

「年の途中だし、入る気がある人はもう何かに入ってるだろうからそれはないんじゃないかな?」

と由衣。

「入ってきて欲しいか?」

「そりゃ、多いほど活発になるんじゃない?」

と真奈美。

「リレーのときにそんな話を美鈴としたけど、美鈴は今のままがいいって言ってたな。」

「へー、美鈴が。そんなんこと言う子じゃないって思ってたけど。」

由衣が意外そうだ。

「俺も、今のメンバーがいいなって思うよ。いい関係でやれてるって思う。リレーもあって、特に一年がぐっとまとまった感じがする。」

真奈美がウンウンとうなずきながら

「そうね。言われてみたら、そう。後輩が入るまで今のままでいいかな。」

由衣もうなずく。


「次は、活動で認めて欲しいね。」

と真奈美。

「そのためにはもっとアピールしないと。」

と由衣。

「そうそう、お前たちには書華美展があるじゃないか。俺にはないけど。」


1月の初めごろに書華美展と名づけられた催しが開かれる。

名前の通り、書道部と華道部と美術部および一年の芸術の授業での書道と美術の選択者の有志で、中央ホールで作品が展示されるものだ。

先生の作品も添えられる。

その一角に漫研もスペースをもらって、作品を展示させてもらう。

作品を貼って展示することになるので、漫画は向いていないし、評論は芸術ではないので、主にイラストの展示になる。

今年の部員の数からすると、1人が2~3点描くことになると聞いている。

人物が入る場合は漫画やアニメのキャラに似るのはしかたがないとしても、デザインは絶対にオリジナルで、色も付けることになっている。

アクリル絵の具や色鉛筆、パステルなどは部室にあるので、色塗りは涼しくなって部室が使えるようになってからだ。

それまでは下絵を描くことに専念することになる。

イラストと言っても奥が深い。

下絵を描くのに何か月も掛かることもあると聞いたことがある。

何をもって完成となるのかわからないが、納得のいく作品にしなければ何も伝わらない。

俺は描けないが。


「じゃ、ストーリーが一区切りついたら下絵を書こうか。最低2枚でしょ。結構な時間が掛かりそう。色塗りもあるし。」

と由衣。

「そうよね。漫画と違って絵が大きいからごまかしがきかないし。私は1枚もののイラストって描いたことがないから、まずネットでいろんな作品を見て勉強するよ。」

と真奈美。

「真ちゃんも出すよね。」

とてつもなく意地悪な目で由衣が俺を見る。

「わかってて聞くな。」

即答する。

「当り前よね、漫研の部員だもの。変なこと聞いちゃってごめん。」

謝りながら目が笑ってる。

「だから、知ってて聞くな。」

「何のこと?」

とぼける。

何がしたいんだ。

「俺が絵を描かない主義のことだよ!」

「えっ、なんで。真ちゃんには必殺の『犬』があるじゃない。あれ出したら、リレーのときよりもっと有名人になれるよ。『あっ、犬の人だ!』ってね。」

あのときのことを思い出して、真奈美が吹き出す。

もう笑いが止まらない。

「そんなんで有名人になりたくねーよ。好き勝手言いやがって。」

由衣にいじられることに腹が立ってきた。

「でも部員なんだから、何かを出すように言われるかもよ、志保先輩に。」

と真奈美が含みをもった言い方をする。

「何かって言われても出せるものがないよ。思いつくのは色紙に手形くらいかな。」

不安になってきた。

部長に聞いてはっきりさせたいが、藪をつついてヘビを出す必要もない。

これは精神衛生上よくないな。

由衣の目がもっと意地悪になった。

「一番手っ取り早いのは、志保先輩に『犬』を見てもらうことじゃない。」

「ダメだよ由衣ちゃん。・・・志保先輩・・・笑いが止まらなくなっちゃうよ。」

自分も笑いがとまらないくせに。

「それならいいけど、倒れるってのもあるかも。」

「うん、たしかに。あれって破壊力すごいから。」

「志保先輩の常識とか判断基準とか、一瞬で破壊されそう。」

いつまでふざけた会話を続ける気だ?

「志保先輩もあきらめがつくよ、絶対。それで決着が付くんじゃない?」

「うん、そうしよう、真ちゃん。」

真奈美が本気なのかふざけているのかわからないから困る。

そうしたい気もあるが、俺はもう誰にも絵は見せないと決めている。

ならどうするのがいいんだろう。

作戦を練らないと。

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