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それは、みらいをつげた
ふぁと欠伸を零して、春真は口に手を当てた。
結局日付が変わるまで黄波戸と飲み明かしたこともあって今日は寝不足だ。
珍しい、というより初めてかもしれない。
次の日に響くほど、飲み明かしたのは。
個人レッスンの前にはしゃきりとしようと、練習室の鍵を借りると、ピアノ専攻の教授に呼び止められた。
「紅野君」
「はい?」
「先日の演奏、大変良かったよ」
それが指す早朝の演奏を思い出して、春真は小さく苦笑する。
「ありがとうございます」
「ついてはだね、前々から打診していた構内コンクールの件。本格的に考えてくれないかね?」
構内コンクールは、教授陣の推薦をうけた学生による専攻問わずのコンクールで、予選、本選からなる。予選は大体20名で、ソロだが、本選は5名で、オーケストラと共に演奏することになる。勿論学年を問わず、毎年優秀な学生が選出されていた。
「俺には、荷が重いですよ」
「いや、そんなことはない。これまで我が大学は世界に通用するピアニストを出してきた。数日前まで、君の演奏は少し空虚な感じがしていたが、あの演奏なら、君は彼らに続けると思う。良く考えて、返事をくれ」
ぽんと肩を叩いて出ていった教授の後ろ姿を眺めて、春真は小さく息をついた。




