005:外に憧れる者たち
先ほど出会った奴らがデバイスで補足できなくなる位置まで歩いた。
このデバイスは、一度補足した奴をマークしておけば範囲外に出たことを教えてくれる。
便利といえば便利だが、あまり使いどころのない機能ではある。
……普段であれば目視で補足できる位置まで近づくからだ。
俺はのんびりと丘を登る。
先程の連中は見つからないように動いていたように思う。……無駄なことだが。
……やがて頂上についた。
ここからなら外郭ゲートがよく見える。
座ればこちらからは見えるが、下から発見することはできない。……絶妙な位置だ。
ここでしばらく待ってみる……。
さっきの奴らが来れば良し、来なくても酒場が賑わうまでの時間つぶしにはなる。
俺は手近な石柱にもたれかかり、仮眠を取ることにした。
◇
……妙な気配がして意識が覚醒する。
覚悟を決めたやつが放つ刺すような気配……。
目を開けると二人組の男が外郭ゲートに向かって走り込んでいた。
「……やめとけばいいのに……」
俺は思わず呟いてしまう。結末を知っているからだ。
棄民は怪我などで稼ぎを失うと生活できなくなる。
街の住民と違ってセーフティーネットなんかないからな……。
……そんな奴が最後にすがる場所。それが外郭ゲートだ……。
今、そこにいる二人は単純に外に憧れたんだろう。
このドームの外はすべらかな茶色い世界だ。生きていくことはできない。
……楽園教とか言ったか?良くは知らんが……本当は外の世界は緑豊かだと説いている連中の影響だろう。
信仰は自由だから止める気はないが、お前たちのような楽園に住んでいる奴が望むべきではない……。
……俺の知っていたやつもここを死に場所に選んだ。
見届けろと言って去っていった……。
あの時を思い出すと、少し胸の辺りが締め付けられる気がする、循環器系の作動不良だろうか……そう考えればバグの一種だと推測できる。
あの時と同じであれば、扉の5m圏内にまで近づいたら警告があって、自動迎撃兵士のダンゴムシが出てくるはずだ。
『警告!あなたは資格外のエリアに立ち入ろうとしています。速やかに退去して下さい。……繰り返します。……警告!あなたは資格外のエリアに立ち入ろうとしています。速やかに退去して下さい……』
その警告が発せられると同時に、偽装していた瓦礫の中から自動迎撃兵士のダンゴムシが2台のそのそと出てきた。
ダンゴムシというのはおとぎ話で出てくる生き物だ。
敵に襲われると丸まって防御するらしい。こいつらが丸まったのは見たこと無いが……。
万が一戦うことがあればどう立ち回るべきか。
あの装甲はナイフでは撃ち抜けない、射角から逃れるのも難しい……。
懐に潜り込んでひっくり返せれば勝機があるかもしれない、かなり無理筋だが。
そんなことを考えていると、シュッっと何かが動く音がした。あれはきっと攻撃用のニードルガンをセットした音だ。
……攻撃準備を完了したらしい。
男達は突然現れたダンゴムシに怯えつつも、持っていたカードをスキャナに当てる。
ピンッ!乾いた電子音がした。ランプはグリーン。
……あのパスは本物だったのか。
しかし、その行動が命取りだった。
「やったぞ!通った!」
男達は喜んでいた。
ID:1468339984910404E
ID:1477339974920404E
俺にはウエアラブルデバイスで男達のIDが赤く変色し、末尾に即時処理対象であるEが付与されたのが見えた。
……これであいつらは終わりだ。
『権限以外のパス使用を確認、即時処理します』
再度行われた警告、それは死刑宣告に等しい……。
シュッ!という鋭い音が重なって2回程聞こえた。
ほどなく、男達はその場に崩れ落ちた。
「外の世界になんか憧れるからだ……。」
この光景を見ても胸が苦しくなることはない……やはり先程のアレはバグだな。
次回のプロトコルで修正を依頼しよう……。
俺は振り返らずに立ち去った。
初回投稿は5話です。
ヒロイン出すとこまでと思ってましたが、ちょっと目測誤った。
次回以降は毎週木曜日に投稿予定です。
よろしくお願いします。




