004:廃墟に潜む者たち
外に出た俺は周りの気配に気を配りながら歩く。
……とは言っても一般人から見たら単なる散歩にしか見えないだろう。セクター4を散歩する物好きがいればだが。
今いるセクター4は丘や廃墟、遺跡っぽい何かが配置されている緩衝地帯だ。そういった遺跡や廃墟に俺達のような棄民が住めるようになっている。
もちろん管理局の調整プロトコルを行う設備もそこにある。
管理局の受け売りだが、住民が壁を意識しないように緩衝地帯が設けられているのだそうだ。
……管理に対してはやたらと気を使う連中だ。
ウェアラブルデバイスを装着し、しばらく廃墟を歩いて行く。
たまに人の気配はするが、システム上の不穏分子ではない。罪のない棄民だ。
……俺も登録上は棄民だが、こいつらとは違う……。
この廃墟の先に丘があり、そこを登ればゲートが見えるはずだ。
「……ゲートのパスなんてどこで手に入れた?」
「しっ!誰か来たっ!」
何か聞こえた。
俺は気づかないふりをして歩き続ける。
声の主は見えてないと思っているようだが、デバイスを通せばこちらから丸見えだ。
瓦礫の向こうで姿は見えなくともIDは視える……。
ID:1468330184910404
ID:1477330174920404
何だ、こいつらはまだ処理対象ではない……。
技術者だから偽造なんてこともできたのだろうか。
しかし、管理局もザルだな。こんなにあからさまなのに危険思想だとすら判定されてないのか……。
俺は正直放置しようと考えていた、危険思想であるのは明白だが、管理局が認定していないのだから。
しかし、俺に課せられた指示は危険思想の住民を探し出すことだ。
……俺は通り過ぎざまに自然に声をかけてみることにした。
「うわ、びっくりした!こんなところでしゃがみ込んでたら見えないじゃないか!」
思っていた以上に棒読みになってしまった……自然な演技というのは難しいものだな。
しかし、相手は俺が声を掛けたこと自体に驚いたようだ。
うまく隠れていたつもりらしい……。
俺は構わず続ける。
「そんなに驚かないでくれよ!びっくりしたのはこっちなんだぜ」
男達はお互い目を合わせ、何も話そうとしない。警戒させてしまったようだ。
「俺は別にあんたらに何かしようとしてるわけじゃない、朝の散歩中なんだ。あんたらもそうなんだろう?」
「……そんなところだ」
年下と思われる男がポツリと答える。まだ警戒しているのが丸分かりだ。
「……関わるな。適当にはぐらかして逃げるぞ」
小声で年上の男が耳打ちした。
……そういう時、唇は隠すものだぞ。俺はもちろん読めるし、唇を読むのは特殊技能ではないからな。
……あぁそうか、お前らはそういう技能所持者とは縁遠いのか……それならこの辺りのことに詳しくはないだろう。
こういう連中にウロウロされると警備局から派遣されるやつが増えて俺が面倒になる、だから警告することにした。
「散歩はいいが物見遊山ならやめとけよ。特にこの丘の向こうにあるゲートに近づかないほうがいい。」
「あそこは管理がすごく厳重でな、近づいたら正規の資格を持ってないとやられるぞ」
男達は顔を見合わせた。
まさかそんなことを言われるとは思ってなかったんだろう。
「いいか。忠告はしたぞ。……じゃあな」
俺は軽く手を上げて挨拶すると男達の前を通り過ぎた。
丘を回り込んで反対側からゲートを眺めることにしたのだ。
……あいつらが言っていたパスというのが本当に外殻ゲートのものかは分からない。いいシノギがあるのかもしれん。
IDから察するにあいつらは高レベルの技術者だろう。そんな連中が外に憧れるなんてのは……よく分からん……。
だが、俺が声を掛けた時の反応を見る限り、やましいことがあるのは間違いない。
……通報するかどうかはまた別の話だ。




