表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/11

第1話「クールな同級生」


第一章「朝倉美咲編」を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


ここから第二章「白石玲奈編」が始まります。


今回のヒロイン・白石玲奈は、主人公・神代悠斗と同じ大学に通う同級生。


学年トップクラスの成績を誇る才女であり、その美貌と近寄りがたい雰囲気から「氷の女王」と呼ばれる存在です。


しかし、その冷静な表情の奥には、誰にも打ち明けられない大きな秘密を抱えています。


そんな彼女が、なぜ悠斗だけには心を開いていくのか。


新たな恋の始まりを、ぜひ最後までお楽しみください。


それでは、第二章第1話「クールな同級生」をご覧ください。



夏休みが終わり、大学では後期の講義が始まった。


朝のキャンパス。


多くの学生が友人と話しながら講義棟へ向かう中、神代悠斗も教室へ足を運んでいた。


「後期も頑張るか。」


そう呟きながら教室へ入ると、教授がすでに教壇に立っていた。


「皆さん、おはようございます。」


「おはようございます。」


講義が始まり、出席確認が終わると教授が口を開く。


「後期はグループ研究を行います。」


教室が少しざわつく。


「今回は私の方でグループを決めました。」


スクリーンへ名前が映し出される。


神代悠斗。


白石玲奈。


藤原健太。


小川美優。


四人グループだった。


「よろしく。」


健太が笑顔で話し掛ける。


「よろしく。」


「よろしくね。」


美優も笑顔で挨拶する。


その隣では、一人の女性が静かに資料を見つめていた。


長く綺麗な黒髪。


透き通るような白い肌。


凛とした雰囲気。


そして整った美しい顔立ち。


白石玲奈。


大学でも有名な才女だった。


「よろしくお願いします。」


悠斗が声を掛ける。


玲奈は顔を上げ、小さく頭を下げた。


「……よろしく。」


それだけだった。


◇◇◇


講義終了後。


四人は研究テーマを決めるため図書館へ向かう。


「何にする?」


健太が尋ねる。


「地域活性化とか?」


「AIも面白そう。」


美優も意見を出す。


すると玲奈が静かにノートを開いた。


「候補をまとめてあります。」


「え?」


「昨日、教授が後期は研究になると言っていたので。」


四人分の資料。


参考文献。


研究方法。


すべて綺麗にまとめられていた。


「すごい……。」


悠斗は思わず声を漏らす。


「準備が早いね。」


玲奈は表情を変えず答える。


「時間を無駄にしたくないだけ。」


その言葉通り、作業は驚くほど効率的だった。


◇◇◇


数日後。


研究室。


四人で資料をまとめていると、美優が困った表情を浮かべる。


「ごめん……。」


「パソコンのデータ消えちゃった。」


「えぇ!」


健太も驚く。


その時だった。


玲奈は静かにUSBメモリーを差し出した。


「予備を作ってあります。」


「え?」


「全員分。」


「万が一を考えて。」


美優は目を丸くする。


「ありがとう!」


「助かった!」


玲奈は小さく頷くだけだった。


悠斗はその様子を見つめていた。


(冷たい人だと思ってた。)


(でも違う。)


(ちゃんと周りのことを考えてる。)


ただ、それを表に出さないだけ。


そう気付いた。


◇◇◇


昼休み。


学食。


「神代君。」


玲奈が珍しく悠斗へ声を掛けた。


「少しいい?」


「もちろん。」


二人は窓際の席へ座る。


「この前の資料。」


「確認してくれてありがとう。」


「こちらこそ。」


「すごく分かりやすかった。」


玲奈は少し驚いた表情を見せる。


「そう。」


「うん。」


「白石さんってすごく努力してるんだね。」


その瞬間だった。


玲奈はほんの少しだけ笑った。


「努力しないと。」


「何も手に入らないから。」


その笑顔は一瞬だった。


しかし悠斗は確かに見た。


大学では「氷の女王」と呼ばれる彼女が見せた、柔らかな笑顔を。


◇◇◇


その日の帰り道。


大学の正門を出ると、一人の女子学生が重そうな段ボールを運んでいた。


「あっ……。」


箱が傾き、中身が散らばる。


「大丈夫?」


悠斗が駆け寄ろうとした時には、すでに玲奈がしゃがんで荷物を拾っていた。


「ありがとうございます!」


女子学生がお礼を言う。


「気を付けて。」


玲奈はそれだけ言うと立ち去ろうとした。


その姿を悠斗は見逃さなかった。


(誰にも見られてないところでも。)


(ちゃんと人を助けるんだ。)


◇◇◇


駅までの帰り道。


偶然、玲奈と悠斗は同じ方向だった。


「今日はありがとう。」


悠斗が話し掛ける。


「何が?」


「グループ研究。」


「助かった。」


玲奈は少しだけ歩みを止める。


「私は自分の役割をしただけ。」


「でも。」


悠斗は笑った。


「白石さんって、本当は優しい人なんだね。」


玲奈は驚いたように悠斗を見る。


そのあと、小さく微笑んだ。


「……そう思うの?」


「うん。」


「ありがとう。」


その笑顔は、教室で見せたものよりもずっと自然だった。


二人は駅で別れ、それぞれ帰路につく。


悠斗は歩きながら考えていた。


(もっと話してみたい。)


(白石玲奈って、本当はどんな人なんだろう。)


一方の玲奈もまた、帰りの電車の窓から夕焼けを見つめながら、小さく呟いた。


「神代君だけは……。」


「私を見た目だけで判断しないんだ。」


その胸には、少しだけ温かい気持ちが芽生え始めていた。


しかし悠斗はまだ知らない。


大学一の才女と呼ばれる彼女には、誰にも言えない「もう一つの人生」があることを。


そして、その秘密を知る最初の一人になることを――。



最後まで第二章第1話をお読みいただき、本当にありがとうございました。


今回は、白石玲奈との最初の出会いを描きました。


大学では「氷の女王」と呼ばれ、周囲からは近寄りがたい存在と思われている玲奈。


しかし、その姿は彼女のほんの一面に過ぎません。


困っている人をさりげなく助け、誰にも見えないところで努力を積み重ねる姿を、悠斗は少しずつ知り始めました。


そして、玲奈もまた、自分を外見や噂ではなく、一人の人間として見てくれる悠斗に少しずつ心を開き始めます。


次回、第2話「秘密の芸名」。


悠斗は偶然、玲奈の誰にも知られてはいけない秘密に触れることになります。


その出来事が、二人の距離を大きく縮めるきっかけとなっていきます。


引き続き、『五つの誓い――僕だけの五人の花嫁』をよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ