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第5話「幼馴染の初恋」


第一章「朝倉美咲編」も、いよいよ最終話です。


これまで幼馴染として当たり前のように過ごしてきた悠斗と美咲。


料理を作り、一緒に買い物へ出掛け、思い出の場所を歩き、お互いを支え合う日々の中で、美咲の恋心は少しずつ大きくなっていきました。


そして迎える夏祭り。


美しい花火が夜空を彩るその夜、長年胸に秘めてきた想いが、ついに言葉となります。


幼馴染から、一人の女性へ。


美咲の勇気ある一歩を、ぜひ最後まで見届けてください。


それでは、第一章最終話「幼馴染の初恋」をお楽しみください。



八月。


夏の夜空を彩る花火大会の日。


街には色とりどりの浴衣姿の人々が行き交い、屋台からは焼きそばやたこ焼きの香ばしい香りが漂っていた。


午後六時。


神代悠斗は待ち合わせ場所である神社の鳥居の前に立っていた。


「まだかな……。」


周囲を見渡していると、一人の女性がゆっくりと歩いてくる。


淡い桜色の浴衣。


髪はいつもより少しだけ大人っぽくまとめられ、小さな髪飾りが揺れている。


「悠斗。」


その声に振り向いた瞬間、悠斗は思わず言葉を失った。


「……美咲。」


「待った?」


「いや。」


「今来たところ。」


少し照れくさそうに笑う美咲。


「変じゃないかな、この浴衣。」


悠斗は首を横に振った。


「すごく似合ってる。」


「本当にきれいだ。」


その一言だけで、美咲の頬はほんのり赤く染まる。


「ありがとう……。」


胸の鼓動が少しだけ速くなった。


◇◇◇


二人は並んで屋台通りを歩く。


「何食べる?」


「まずは焼きそば!」


「美咲らしい。」


「えへへ。」


焼きそば、たこ焼き、かき氷。


射的では悠斗がぬいぐるみを取り、美咲へプレゼントした。


「可愛い!」


「ありがとう!」


金魚すくいでは、美咲が一匹だけ上手にすくい上げる。


「やった!」


「昔より上手になったね。」


「昔は全部逃げられてたもん。」


笑い声が夜店に響く。


どこから見ても仲の良い恋人同士のようだった。


◇◇◇


祭りも終盤。


花火会場へ向かう人の波はどんどん増えていく。


「すごい人……。」


「はぐれそうだね。」


その瞬間だった。


後ろから人が押し寄せ、美咲の身体が少しよろける。


「きゃっ。」


悠斗はとっさに美咲の手を握った。


「大丈夫?」


「う、うん。」


「人が多いから。」


「離れないように。」


「……うん。」


指先から伝わる温もり。


幼い頃にも手を繋いだことはあった。


しかし今日のそれは、まったく違って感じられた。


美咲はそっと悠斗の手を握り返す。


(このまま……。)


(もう少しだけ。)


(繋いでいたい。)


◇◇◇


ドーン――。


大きな花火が夜空へ打ち上がる。


「わぁ……。」


色鮮やかな大輪の花。


次々と夜空を彩る光。


二人は並んで見上げていた。


「きれいだね。」


「うん。」


「でも。」


悠斗が笑う。


「今日は花火より、美咲の浴衣姿の方が印象に残りそう。」


「えっ?」


「本当にきれいだから。」


その言葉に、美咲は胸がいっぱいになる。


(もう……。)


(そんなこと言われたら。)


(好きが止まらないよ。)


◇◇◇


花火大会が終わり、人通りの少ない川沿いの道を歩く。


虫の声だけが静かに響いていた。


美咲はゆっくり立ち止まる。


「悠斗。」


「ん?」


少しだけ震える声。


「聞いてほしいことがあるの。」


悠斗は静かに頷いた。


「うん。」


美咲は深呼吸をする。


「私たち。」


「ずっと幼馴染だったよね。」


「そうだね。」


「嬉しいことも。」


「悲しいことも。」


「全部一緒だった。」


悠斗は何も言わず、美咲を見つめる。


「でもね。」


「私は。」


「もう幼馴染として悠斗の隣にいたいんじゃない。」


美咲の目には涙が浮かんでいた。


「小学生の頃も。」


「中学生の頃も。」


「高校生の頃も。」


「大学生になった今も。」


「ずっと。」


「ずっと好きだった。」


涙が頬を伝う。


「神代悠斗。」


「私は、あなたが好きです。」


「幼馴染じゃなく。」


「一人の女性として。」


「私を見てください。」


夜風が二人の間を静かに吹き抜ける。


悠斗は驚きながらも、美咲の真っ直ぐな想いを受け止めた。


ゆっくりと口を開く。


「美咲。」


「ありがとう。」


「そんなふうに思ってくれていたなんて知らなかった。」


「……うん。」


「正直、今すぐ答えは出せない。」


「でも。」


「美咲の気持ちは、本当に嬉しい。」


「ちゃんと向き合いたい。」


「だから少しだけ時間をくれる?」


美咲は涙を拭きながら笑った。


「うん。」


「待つ。」


「悠斗の答えなら、何年でも待てる。」


二人はもう一度手を繋いだ。


今度は人混みではない。


お互いの意思で繋いだ手だった。


◇◇◇


その夜。


家へ帰った美咲は、浴衣を脱ぐ前に鏡の前へ立つ。


「言えた……。」


何年も胸にしまってきた想い。


ようやく伝えることができた。


涙はもう流れていなかった。


そこには、晴れやかな笑顔があった。


一方、帰宅した悠斗はベッドへ腰掛けながら空を見上げる。


「美咲……。」


幼馴染。


家族のような存在。


そう思っていた彼女は、いつの間にか一人の女性として自分を見つめていた。


そして、自分自身もまた、美咲を違う存在として意識し始めていることに気付き始めていた。


こうして、長い幼馴染の関係は、新たな恋の始まりを迎える。


しかし、悠斗はまだ知らない。


この先、自分の人生にはさらに四人の運命の女性たちとの出会いが待っていることを。


その運命が、五つの恋を一つの未来へと導いていくことを――。



最後まで第一章「朝倉美咲編」をお読みいただき、本当にありがとうございました。


幼馴染という、誰よりも近くて、誰よりも特別な存在。


そんな関係だからこそ、恋心を伝えることは簡単ではありません。


美咲は長い年月をかけて育んできた想いを、夏祭りの夜にようやく悠斗へ伝えることができました。


悠斗はすぐに答えを出すことはできませんでしたが、美咲の気持ちを真っ直ぐ受け止め、自分自身の気持ちと向き合うことを決意します。


二人の関係は、ここから新たな一歩を踏み出しました。


そして次章では、大学で出会うクールな同級生・白石玲奈が登場します。


成績優秀な才女でありながら、誰にも明かせない秘密を抱える彼女。


悠斗だけに打ち明けられる「もう一つの顔」とは何なのか。


新たな出会いが、悠斗の運命をさらに大きく動かしていきます。


次回、第二章「白石玲奈編」。


引き続き、『五つの誓い――僕だけの五人の花嫁』をよろしくお願いいたします。


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