第八話
10層は空気が違った。
通路が入り組む迷宮ではなく、広い広間が一つポツンとあるだけだった。
そんな広間に僕と光の剣士たちのメンバーは立っていた。
肌に触れる空気が冷たい。
僕は息をゆっくりと吐いた。そうしないと緊張で吐きそうだった。
「行けそう?」
香月さんが、心配から様子を聞いてくる。
「ダメだったら、私たちが倒すから、安心してね」
「ありがとうございます」
痺れるような感覚。
空気がひりついている。
こんなプレッシャーを放つ敵を倒せるのだろうか。
足が少し震えていた。
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フロアボスはオーガだ。
人型のモンスターで体格は 3m ほどあり、筋骨隆々。攻撃力だけでなく、防御力も高い弱点の少ないモンスターだ。
F ランクでは基本的に無理。それがギルドの見解だった。
そのオーガが僕たちの目の前にいた。
こちらを伺いつつ、攻撃しようとはしてこなかった。
僕は一歩前に出た。
「やばそうだったら助けるからな」
タンクの猪狩さんがそう声をかけてくれた。
いくしかない。
ダメだったら逃げよう。
僕は頷いた。そしてオーガの方を見ると、右足を前に出した。
そのまま、僕は一気に地面を踏みしめた。
その瞬間、体がオーガの方に飛ぶように向かっていく。
> 早い
> 今回は流石に苦戦するだろw
> 無事に倒せますように
そんなコメントが流れていく。
オーガが棍棒を構えた。
怖かった。でも体は軽かった。
僕は鉄パイプを握りしめると、思いっきり振りかぶった。
オーガも同時に棍棒を振った。
棍棒と鉄パイプが激突した。
その手に棍棒の感触が伝わってきた。全く重たくなかった。
吹っ飛んだのは棍棒だった。
くるくると棍棒は勢いよく飛んだ。
そのまま棍棒はオーガの顔面にめり込んだ。
オーガの顔から赤い血がでた。
うわあ、痛そう。思わずそんなことを考えた。
予想していなかったのだろう、オーガが顔を庇うように押さえた。
チャンスだ。
そのままオーガの頭部に鉄パイプを振り下ろした。
オーガが地面にめり込んだ。
そして光に変わった。
> つっよw
> 1000 ええ、瞬殺...
> 5000 おめでとうございます!!
終わった。怪我一つなく。
香月さんたちの方を見ると、目を丸くしてこちらを見ていた。
「はは、強いとは思っていたけど、本当に強いね」
「やばいな、こりゃ強い」
僕は困ったように眉を八の字にした。
安堵と恐怖の余韻で、なんて言えばいいのかわからなかったのだ。
「えー皆さん、今日は見てくれてありがとうございました!無事にフロアボスまで倒せたので、今日はここまでにしようと思います!」
> 1000 もう終わり??もっと見たい
> 5000 お疲れ様です!
> 30000 次回希望です!
とりあえず香月さんがその場を締めてくれた。
僕としても、今日はこれ以上行くつもりはなかった。
「皆さん、見てくれてありがとうございました。また次回もぜひ見てください」
> 1000 次回楽しみにしてます!
> 40000 怪我しないようにね!
> 5000 バーサーカー最高!w
祝福のコメントとスパチャが流れてくる。
僕はほっとすると共に、安心してその場にへたり込んでしまった。




