不穏なオルハラの森
「お姉様とお兄様達はいかがでしょうか?」
「勿論美味しかったわ。でも……あっと言う間に食べ終わっちゃった。次も期待しているわよ!」
「凄く美味しかったぞ、アルキス。お前は料理の才能もあるようだ」
「うまいけど、入れ物が小さくねえか? もっとドンとでかい入れ物で食いたいよ」
「それはすみません。適正な大きさの瓶をガストンに用意して貰いますね」
「ああ、そうしてくれ!」
ガストンがしっかり頷いてくれたので、俺はにこやかに笑って、食後のお茶を啜った。
口火を切ったのは、お父様だった。
「ジュリア、ルルーシュ。二人とも、オルハラの森はどうだった?」
「すごく沢山のゴブリンに遭遇したわ。倒した数は248体よ。ギルドに討伐証明を出したわ」
「上位種もゴロゴロいたぜ。俺は今日、剣で出かけたんだけど、わらわらと出るわ、出るわ。やっぱり、キングがいるんじゃねえの?」
「やはりそうか……。間引きを二人は明日以降も続けてくれないか。小遣いは弾むぞ」
「やったぁ。私もオルハラの森は心配だから、良いわよ。ガストン、毎日プリンを作ってくれる?」
「かしこまりました。お作りしましょう」
「俺も良いぜ。小銭が貯まるし、身体を動かすのに、実戦は丁度良いからな! 俺にはデカいプリンを頼むぜ、ガストン!」
「かしこまりました」
「ありがとう、2人とも。しかし、深追いはしないようにね」
そうお父様が締めて、俺達は解散した。
自室に戻り、ランプをつける。
俺は『魔導具の作り方・初心者向け』を読み込む。
基盤はスライムゼリーで作った樹脂板を使えば、曲げることが出来る基盤が出来上がる。
「へえ。曲げることが出来れば、色んな形の魔導具が作れそうだ」
その他にも色々書かれているが、今はこれ位で十分だ。
明日の午前中は、ランプを改造しよう。
俺はそう決意して、ランプを消し、ベッドに入った。
魔導具作りは、わくわくする。
とても楽しくて、プログラマー時代に戻ったようだ。
俺は楽しい明日を夢みて、目を閉じるのだった。
翌日、メイドのサーラに起こされて、ゆっくり起床した。
顔を洗って、服を着替える。
食堂に着くと、お父様とお母様が座っていた。
「おはようございます、お父様、お母様」
「おはよう、アルキス。よく眠れたか?」
「はい」
「おはよう、アルキス。今日も元気そうで何よりだわ」
「はい、お母様」
俺が自分の席に座ると、お姉様とお兄様達がやってきて、着席した。
すぐに料理が並べられ、それを食べ始める。
うーん、サラダ美味しいんだけど、たまにはポテトサラダが食べたいなぁ。
昨日厨房を借りたばっかりだから、もう少ししてから、マヨネーズとポテトサラダを作りに行こう。
大きなソーセージを食べつつ、そう言えばハンバーグってないなぁ? と思った。
ソーセージがあるんだから、挽肉にする文化はあるはずだ。
ハンバーグも今度作ろう。
お気に入りのゴマのパンを3つ食べて、お腹いっぱい。
食後のお茶を啜る。
「さて、今日は他領から客人が来る予定だ。ベイクブリッド辺境伯家の領主様とその嫡男、アストレイ・ベイクブリッド様だ。うちはベイクブリッド辺境伯家の寄子だから、ご訪問されるのに理由はいらないだろう。だが、アストレイ・ベイクブリッド様には、まだ婚約者がおられない。今、確か14歳の筈だ。もしかしたら、ジュリアを見に来るのかもしれない」
「まあ。ベイクブリッド家なら、そこそこ強いんでしょうけど、性格が悪い人とは婚約したくないわ」
「わかっている。ジュリアは性格重視だものな。今日もゴブリン討伐を頼むが、夕方は早めに帰ってきてくれ」
「わかったわ」
「ゴブリンは放置しておけない存在だ。ジュリアもルルーシュも、宜しく頼む」
「まっかせといて!」
「まあ、頑張ってくるよ」
それで俺達は解散し、俺は自室に戻ってきた。
俺は新しい木の基盤を持って、屋敷の裏手に回った。
馬小屋にピエールを発見し、声をかける。
「ピエール、おはよう」
「おはようございます、アルキス様」
ピエールは馬の世話を終えて、表に出て来た。
「ノコギリを貸して欲しいんだ」
「良いですよ、どうぞ」
俺はノコギリを借りて、基盤を半分の大きさに切った。
「廃材を貰って良い?」
「良いですよ。薄い板なら、これが良いでしょう」
「ありがとう! じゃあ、切っちゃうね」
俺は廃材を切っていき、1個分の魔石ソケットを作った。
それと、右と左に捻る調節つまみも切って作った。
白い箱にも切れ目を入れて、調節つまみの部分をくり抜く。
「ありがとう、ピエール。ノコギリを返すね」
「いえいえ。また用があるときは、来て下さい」
俺はうきうきで自室に戻り、半分の大きさの基盤に魔術ペンで、配線を描いていく。
縮小二分の一、色の変更と光量を変更する設定を加える。
右に捻ると色が変わり、左に捻ると3段階に光量が絞られるようにした。
半分の大きさだが、ランプの構造は単純なので、余裕を持って配線と呪文を書き終えた。




