木工細工職人のジョージ
白い箱の中の大きな基盤を取り出し、魔石ソケットから魔石を抜く。
そこに半分の大きさの基盤を入れて、魔石ソケットに魔石を入れた。
新しい調節つまみを取り付け、スイッチを入れる。
ピカッと白く光るランプ。
よし、一応成功だ。
俺は調節つまみを右に捻った。
ランプは暖かみのあるオレンジ色に変わった。
よしよし。
次は左に捻る。
光量が下がり、若干灯りが小さくなる。
もう一度左に捻ると、更に光量が絞られる。
もう一度左に捻ると、豆電球程の明るさになった。
右に捻ると、白色の灯りに戻る。
光量はそのままだ。
更に左に捻ると、明るい灯りに戻った。
どうやら意図通り動いているらしい。
右に捻ると色が変わって、左に捻ると、光量が変わる。
うん、これで良い。
よし、家族の分のライトを作ろう。
紙を用意して、デザインを描いていく。
お姉様は女の子らしいランプが欲しいと言っていた。
俺は円柱状の照明にレースをつけたデザインにした。
次はジークフリートお兄様の分。
ジークフリートお兄様は、書類仕事に使うそうなので、デスクスタンドにした。
細長いランプ部分に、曲がる首がついているタイプだ。
次はルルーシュお兄様の分。
お兄様はまん丸い球体のランプにした。
お父様の分は、デスクスタンドにして、なるべく最小化することにした。
お母様の分は、鈴蘭の花をイメージして、綺麗で可愛い印象のランプにした。
「よし、書き上がったぞ。あとは木工細工屋に発注するだけだ。書いた紙を鞄に入れて、と。出来上がったランプも、アイテムボックスに入れて持っていこう。さぁ、外出する許可を貰わなくちゃ」
俺は短剣を装備して、肩掛け鞄を肩にかけて、部屋を出た。
執事室の前にたどり着き、ノックをする。
「どうぞ」
ジョルジュの声に導かれ、部屋に入る。
「アルキス様、どうしましたか?」
「ランプ作成の目処がついたから、木工細工屋に行ってこようと思うんだ。外出して良い?」
「今日もルーカスはオルハラの森です。じゃあ、ジャックを護衛として連れて行って下さい。木工細工屋は、どこか行く先が決まっていますか?」
「ううん。どこが良いかな?」
「職人街の西にある木工細工屋で、エリックという男が凄腕のようです。今、地図を書きましょう」
「うん。お願いします」
ジョルジュはサラサラと地図を書き、書き上がった紙を俺に渡してくれた。
俺は貰った地図を鞄に入れて、お礼を言った。
「行ってらっしゃいませ、アルキス様。お客様はお昼にはお見えになる予定です。お早めにお帰り下さい」
「うん、わかった。じゃあ、行って来ます!」
俺は元気よく返事をして、執事室を出た。
訓練場に行くと、ぽつりぽつりと兵士がいる。
その中に、お目当ての人物がいた。
金髪に赤い瞳の、凛々しい風貌の男だ。
「ジャック! ちょっと良い?」
「おや、アルキス様。お出かけですか?」
「うん。職人街に用事があるんだ。護衛として、ついてきてくれない?」
「いいっすよ。ちょっと団長に一言言ってくるんで、少し待っていて下さい」
「うん、わかった」
俺はその場で待機し、ジャックは詰め所に駆け込んでいった。
そして5分程度経ったところで、身支度を終えたジャックがやってきた。
「じゃあ、行きましょうか。行き先は決まっていますか?」
「うん、職人街の西に工房を構えるエリックさんのところへ行くよ。これ、地図だよ」
「ふむふむ。俺の記憶が確かなら、エリックさんは現役引退して、代替わりしてますよ」
「えええ?! どうしよう!」
「息子の方も腕は良いそうだから、一度行ってみましょう」
「うん、わかった。宜しくね」
俺はジャックと共に歩き出した。
食料品エリアで、ジャックはたんまり呼び止められた。
「ジャック、元気かい? うちの野菜を食べておくれよ!」
「ジャック、久し振りだな。飲みに行こうぜ!」
「ジャック、今度遊びに連れて行って!」
老若男女にモッテモテ。
ルーカスだって、これほどではない。
ジャックはとにかく顔が広いのだ。
「アルキス様、地図通りだとここですね。入ってみましょうか」
「うん。お邪魔しまーす!」
工房に足を踏み入れ、声をかける。
出て来た店主はまだ若そうな、20代前半の男性だ。
「すみません、こちらにエリックさんはいらっしゃいますか?」
「あー、すいません、お客さん。エリックは俺の親父で、俺は息子のジョージって言います。親父はもう引退してまして、もう木工細工を作っていないんです。俺で良ければ承りますが……」
「じゃあ、相談させて下さい。ランプを作って貰いたいんです。デザインは、これです」
俺は鞄からデザインした紙を取り出した。
「ふむふむ。お客さん、魔導具師かい?」
「はい。なりたてですけど」
「このレース模様は木の細工だと手に刺さるかもしれねえ。布のレースを併用するって事で良いか?」
「はい、構いません」
「球体は中身をくり抜くんだよな? 材料費がプラス銀貨1枚かかるぞ」
「はい、構いません」
「この細長い形のランプは、初めて見るな。土台にしっかりした木材を使えば、倒れないだろう」
「この首の部分を、折れるようにして欲しいんですけど、出来ますか?」
「木をしならせるのとは、違うのか?」
「出来れば形状記憶みたいな感じで、ライトを上向きにしたり、下向きにしたり、出来るようにしたいんです」
「うーん……じゃあ、木材じゃねえ方が良いな」
「スライムゼリーを使った樹脂でも無理でしょうか?」
「ふむふむ。樹脂なら出来そうだな。基盤は底で良いのかい?」
「はい。それと、これを見て貰って良いですか?」
俺はアイテムボックスから、白い箱を取り出した。
机の上に置いて、スイッチを入れる。
「このランプのように、スイッチと調節つまみをつけて欲しいんです。どうでしょうか?」
「触ってみて良いか」
「勿論です。どうぞ。右に捻ると色が変わり、左に捻ると、光量が絞られます。光量は3段階に分けてあります」
ジョージさんは、俺の作ったスイッチを入れて、ランプを点灯させた。
そして、調節つまみを右に捻って色を変え、左に捻ってカチカチカチッと光量をチェックした。
その後もランプを点灯させたり消したりして、動作確認をしっかりやっていた。
「中を見ても良いか?」
「はい、どうぞ」
ジョージさんは、基盤と魔石ソケットを取り出し、なにやらチェックをしている。
「魔石は底をくり抜いて入れれるようにしようと思うが、どうだ?」
「はい、それで良いです。作り方は……これから調べます」
「基盤の裏に魔石があるってことになる。呪文はな、転覆の呪文が使えるぜ。あとは、何個作れば良い? 基本は銀貨15枚だが、材料費でプラス銀貨2枚。1枚1個ずつ作れば良いのか?」
「このデスクスタンドだけど、なるべく小さくしたものを1つと、普通の大きさのものを2つ。それと他は1枚1つずつでお願いします」
「じゃあ、6個だな。銀貨92枚だが、良いか?」
「はい。請求はシカラーゴ領主舘にお願いできますか?」
「わかった。坊ちゃんは領主の息子かい?」
「はい。3男のアルキスと申します。宜しくお願いします」
「俺は兵士団のジャック。また来るから、覚えといてくれ」
「ああ、わかった。アルキス様、スイッチと調節つまみもちゃんとつけましょう。これはしまっていいですぜ」
俺は白い箱のランプをアイテムボックスにしまい、頭を下げた。
「じゃあ、お願いします。どれ位で出来ますか?」
「2週間は貰うぞ。領主様の家で使うんだろう? 装飾も入れてやるから、任せておいてくれよ。また2週間後に来てくれ」
「分かりました。じゃあ、来月ですね。出来た頃に伺います」
俺はジャックと一緒に工房を出た。
帰り道では、またジャックがモテモテで、ちょっと羨ましかった。
そんなこんなで領主舘まで帰ると、馬車止めに、立派な装飾の馬車が停まっていた。
「ジャック、あれが今日のお客様の馬車かな」
「そうだな。あそこに家の紋章が見えるだろう。あれはベイクブリッド辺境伯家の紋章だ。アルキス様は正装した方が良いんじゃないか?」
「そうだよね。ジョルジュに確認してみる。ジャック、護衛ありがとう。また宜しくね」
俺はジャックに別れを告げて、屋敷に入った。




