魔導具に触れる
ルーカスを連れて町を歩く。
ここはルーセント王国の北西にある、シカラーゴ子爵領の首都カンゲリムという町だ。
規模は2万5千人程度と聞いている。
ルーセント王国は人族以外の獣人やドワーフ、エルフ等に対して広く門戸を開き、分け隔てなく住める良い国だ。
勿論、基本の建造は木造だし、金属はとても高い。
中世ヨーロッパのような世界観だ。
しかし、電気がない代わりに、魔導具が発達しており、コンロや水道はある。
ルーセント王国は多数のドワーフがおり、鍛冶も人気だが、魔導具の開発も盛んだ。
一番人気は、冷凍機能付き冷蔵庫。
次に、吸い込み式掃除機。
更に、回転式洗濯機。
やはりこの3種の神器は、どこの世界でも必要とされているみたいだ。
「あっ、坊ちゃん。ちょいと、冒険者ギルドに寄って良いかな?」
「良いよ。じゃあ、冒険者ギルドに向かおう」
食料品を売るエリアを通り抜けて、しばらく歩くと、冒険者ギルドがあった。
ルーカスは慣れた様子で中に入る。
俺もついていき、中に入ると、ガヤガヤとした人の喧噪が聞こえてきた。
まだ午前中ということもあり、そんなに混んでいない。
ルーカスは受付嬢に声をかけて、ギルドマスターを呼んだ。
やがてやってきたのは、熊のような筋肉でムキムキの、ギルドマスターだった。
領主舘に来ることもあるので、挨拶はしたことがある。
名前は、エリオット・ムカングル。
元冒険者で、Aランクの剣士だったそうだ。
「よぉ、ルーカス。今日はアルキス様と一緒か」
「おう。東門の先のオルハラの森だけどな、やっぱりゴブリンが多いんだわ。間引きに行く必要があると思う」
「そうか……。じゃあ、うちのDランクとCランク冒険者に声をかけよう。上位種はいるのか?」
「ああ。ゴブリンアーチャーやゴブリンメイジ、それとホブゴブリンが確認されてる」
「キングがどこかに生まれている可能性もあるな。わかった、こっちでも斥候を出そう」
「宜しく頼む。私兵団も狩りに行くが、週に一度程度だ。もっと頻繁に間引いた方が良い」
「了解だ。領主様には改めて報告書を出そう」
「んじゃな。たまには訓練所に顔を出せよ」
ルーカスはギルドマスターに手を振って、冒険者ギルドを後にした。
「坊ちゃんは12歳になったら、冒険者になりますか?」
「うん! やってみたい!」
「そりゃあいい。坊ちゃんは剣も魔法も使えるから、心強いや」
「えへへ。ルーカスにそう言って貰えると、嬉しいな」
とてとて歩いて行くと、やがて武器や防具などを売る鍛冶エリアに入る。
そこを通り過ぎて、しばらく歩くと、商業ギルドがあり、たくさんのお店が建ち並んでいる。
その中でも、一際立派なたたずまいのお店が、アズール叔父様のクレベルタ商会だ。
中に入ると、ちりりん、と鈴が鳴る。
店員さんが俺を見ると、笑顔で挨拶してくれた。
「アルキス様、ルーカス様。いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
「今日は色々見せてもらいたくて来たんだ。2階に上がっても良い?」
「勿論でございます。お二階へどうぞ」
僕は1階の食料品を見回し、そうだ、甘味でも作ろうかな、と考えながら2階に上がった。
2階には、最新型の洗濯機、冷蔵庫、掃除機が展示されている。
ふむふむ、洗濯機に乾燥機能がついたやつはないんだな。
「おっ、これは何だろ?」
四角い箱に基盤らしき物が入っている。
なになに、魔導具作成初心者キット。
どうやら簡単な魔導具を作れる初心者キットらしい。
説明書をパラパラめくると、意外にも重要な呪文が書かれていた。
その呪文の羅列が、なんだかプログラムのように見える。
簡単に言うと、『光を灯せ ライト』の呪文を基盤に書き込み、スイッチを入れるだけ。
インクは魔術インクが必要。
魔物の魔石を砕いて使うらしい。
なんだか、とっても面白そうだ。
値段を見る。
金貨2枚。
初心者キットなのに、この値段?!
高いよーっ!
「坊ちゃん。それが欲しいんですかい?」
「うん……。でも手持ちのお金じゃちょっと足りないみたい。アルバイトするしかないなぁ」
「領主様から、お買い物用に資金を貰ってますぜ。金貨1枚ありますが、どうします?」
「えっ、使い切って良いの? 是非、お願いします! 俺も金貨1枚なら持ってるんだ」
「じゃあ、足りますね。じゃあ、会計を済ませましょう」
僕は山積みにされている白い箱から1つ選び、お会計に持っていった。
「いらっしゃいませ。金貨2枚になります」
ルーカスと俺とで金貨1枚ずつ出して、お会計が済んだ。
白い箱をアイテムボックスにしまい、1階に降りると、アズール叔父様がいた。
「おや? アルキスじゃないか。何か欲しいものは見つかったかい?」
「うん。魔導具の初心者キットを買ったよ。ちょっと勉強してみるつもり」
「なんだ、魔導具師を目指すのか? お前は商人に向いていると思うんだがなぁ」
「ごめんね、アズール叔父様。また来ます」
クレベルタ商会を出て、ルーカスと一緒に家に戻る。
30分程で我が家である領主舘に着いた。
「坊ちゃん。もう昼食の時間です。あの初心者キットを開けるのは、もうちょっと待ちましょう。午後からは剣の訓練でしょう?」
「ええーっ、じゃあ今日は開けれないじゃん」
「明日の午前中に開けると良いでしょう。食事を抜いたりすると、奥様が悲しまれますよ」
「うん、わかった。気を付けるよ」
俺はルーカスと別れて、自室に戻った。
鞄を置いて、短剣も外し、買ってきた初心者キットを机に置く。
説明書をはじめに読もうと思い、椅子に座る。
そこには、魔導具の基礎が書かれていた。




