前世を思い出した
「……知らない天井だ」
俺は目覚めてすぐ、木造の天井を見つめていた。
ベッドは固めだが、安眠できた。
手足はまだ細く、幼い子供の身体を思わせる。
俺は本当に転生したのかと、喜びに打ち震えた。
そこに、控え目にノックの音が鳴った。
ガチャリとドアを開けて入ってきたのは、若いメイドの少女だった。
茶色い髪は三つ編みに編まれており、メイド服がとても似合っている。
確か……サーラだったな。
よしよし、10年分の記憶もちゃんとあるようだ。
「おはようございます、アルキス様。お目覚めのお時間ですよ」
「おはよう、サーラ。今、起きるよ」
「今日はアルキス様の10歳のお誕生日ですね。料理長のガストンが腕によりをかけて、料理を準備しております。夜の晩餐が楽しみですね」
「うん! ありがとう、サーラ」
俺は起きて服を着替えて、顔を洗った。
食堂に顔を出すと、両親と二人の兄、一人の姉が席に着いていた。
俺が自分の席に座ると、次々に料理が運ばれてきた。
目玉焼きとソーセージ、野菜サラダにスープ、焼きたてのパン。
「いただきます」
食前の挨拶をして、食事を食べ進める。
うん、すっごく美味しい。
俺はぱくぱく食べて、朝食を味わった。
食後のお茶を飲んでいると、お父様が切り出した。
「アルキス、10歳の誕生日おめでとう。夜は盛大に祝うから、楽しみにしていなさい」
「はい、ありがとうございます」
お父様は金髪に緑色の瞳のイケメンだ。
名前は、ジョイスン・シカラーゴ。
シカラーゴ子爵家の領主をしている。
「アルキス、お前は剣も魔法もそこそここなす器用さがある。将来やりたい事が決まったら、相談しに来なさい」
「わかりました」
「アルキスは魔法が大好きだから、魔法使いになったらどうかしら?」
そう言ったのは、お母様。
名前はエレノア・シカラーゴ。
緑色の美しい髪を背中まで垂らし、瞳は金色。
お母様は優しく微笑みかけてくれる。
「俺は剣も魔法も得意というわけではありません。凄い魔法使いなら、お姉様がいますし」
「まあ、私は確かに凄い魔法使いだけれど、まだまだひよっこよ。一緒に鍛錬しましょうよ」
そう言ったのは、お姉様。
名前は、ジュリア・シカラーゴ。
金髪をポニーテールに纏めたヘアスタイルで、とても活発な姉だ。
魔法使いの中でも珍しい、3属性の適正を持ち、魔力の量も規格外に多い、魔法の天才。
それが、ジュリアお姉様だ。
「ちょっと待て。剣や魔法だけでなく、アルキスは座学も成績が良い。将来文官を目指すのも良いな」
そう言ったのは一番上のお兄様だ。
名前は、ジークフリート・シカラーゴ。
金髪に緑色の瞳。
お兄様もお父様に似て、イケメンだ。
今年15歳になるお兄様は、次期領主として、様々な仕事をこなしている。
「いやいや、剣だって捨てたもんじゃねえぜ。アルキスにはやる気がある。うちの兵士位の力量は、もう持ってる。剣の才能を伸ばしてやろうぜ」
そう言ったのは、下のお兄様だ。
名前は、ルルーシュ・シカラーゴ。
剣だけじゃなく、槍や斧、鈍器まで使いこなす武器のスペシャリストだ。
若干13歳ながら、その才能を聞きつけて、王都の騎士団からスカウトが来たほどだ。
緑色の短髪に、金色の瞳。
ルルーシュお兄様もお父様に似たイケメンである。
「これからも、剣と魔法は訓練をします。だけど、何か違うことをやってみたい。今日、アズール叔父様のところに行っても良い?」
「クレベルタ商会だな。良いぞ。護衛にルーカスを連れて行きなさい」
「はい。何かないか探してくるね!」
元気よく答えた俺は、緑色の髪を肩まで伸ばした長髪で、瞳は緑色。
顔はお母様に似ていて、少し中性的なんだ。
名前は、アルキス・シカラーゴ。
剣と魔法と座学もそこそここなす、兄弟の中では平凡な存在だ。
「いきなりアズールのように、商人になるなんて、言い出さないでくれよ?」
「そうよ。元々アズール叔父様はアルキスのアイテムボックスと鑑定スキルに目を付けているんだからね!」
お父様とジュリアお姉様の言うとおり、俺はアズール叔父様の経営するクレベルタ商会にスカウトされている。
アイテムボックスと鑑定は100人に一人の確率で見つかるらしく、結構珍しい。
確かに商人は、アイテムボックスと鑑定は欲しいことだろう。
だけど、アルバイトなら受けるが、正社員になる話はずっと断っている。
なぜなら、まだまだ世の中を知らない自分のなりたいもの、やりたい事を探したいからだ。
前世の俺はシステムエンジニアで、過労で死んでしまったが、プログラムを組むのは楽しかった。
この世界には電気がないので、コンピュータはない。
しかし、同じように心を燃やすものを何か探したかった。
「商人になるつもりは、今のところないよ。何かやりたいことを探すつもりなんだ。アズール叔父様には悪いけど……」
「アズールのことは、気にせずとも良いぞ。アルキスがやりたい事が、何か見つかると良いな」
お父様の声に頷き、お茶を啜る。
そうして朝食は終わり、俺は部屋に戻った。
短刀を装備して、肩掛け鞄を肩にかける。
俺は訓練所に行き、ルーカスを探し出した。
「いたっ! ルーカス、アズール叔父様の所に行くから、護衛をお願い」
「アルキス坊ちゃん。10歳の誕生日おめでとうございます。護衛の件、聞いてますよ。準備は整ってるんで、早速行きましょうか」
ルーカスはうちの私兵で、凄く腕が立つ。
ルルーシュお兄様が勝てない位、強いので、しょっちゅう護衛に駆り出される。
髪は赤毛で短髪、瞳は青色。
華やかなイケメンで、年下の奥さんがいる。




