プロローグ
気付いたら、真っ白な世界にいた。
右を向いても、左を向いても、どこまでも真っ白な世界。
俺は左右を見渡して、ため息をついた。
「ここは何処なんだ……?」
「峰岸 良太君。お目覚めかしら?」
「うわっ!」
透明感のある女性の声だった。
正面に光が集まり、人を形作る。
そこには、女神としか言いようのない美しい女性が立っていた。
「女神様……?」
「ふふっ、正解よ。私は豊穣神エルキュール。宜しくね」
「はぁ……宜しくお願いします……」
わけがわからないが、女神様の慈愛の微笑みを見ていると、そう悪いことにはならない気がする。
俺は軽く会釈して、姿勢を正した。
「それで、峰岸 良太君。貴方は死んでしまったの。それを覚えているかしら?」
女神様のその言葉で、仕事場の様子がフラッシュバックする。
納期が迫った仕事があり、何日も徹夜していた。
俺は会社のデスクにいたはずだった。
「そうだ……、仕事が終わってない! 困ったな、明日の納期のものもあったのに」
「んもう、お仕事が好きなのはわかったわ。でもね、あなたは働きすぎて、過労死してしまったの。死んだ実感がないからか、貴方の魂は輪廻の輪に弾かれてしまったのよ。いい、あなたは死にました。もう仕事はしなくていいのよ」
「そうなのか……。ご迷惑をおかけしております。俺はどうしたらいいのでしょう?」
「そうね。良かったら、私の作った世界に転生してみない? 剣と魔法の世界で、魔法を使ったり、魔物を倒したり出来るわよ!」
「魔法ですか。まるでゲームですね」
「実際は現実だから、死んだらおしまいよ。でも、実り豊かな大地に美しい景色。美味しい食事も保証出来るわ。あなた、ゆっくり過ごしてみたら良いんじゃない?」
「……そうですね。あくせく働くのは疲れました。その異世界に転生したいと思います。ちなみに、ステータスは見れるのでしょうか?」
「そういう魔法はないわね。ただ、鑑定っていうスキルはあるわ。物の名前とか、詳細が見えるの。人物は名前や種族、状態なんかが見えるわ」
「わかりました。何かスキルを授けて頂けるのでしょうか?」
「そうね。鑑定とアイテムボックスを授けるわ。スキルは修行次第で身に付くから、やりたいことが出来たら頑張ってみるのも良いかもね。まずは、親の元でゆっくり過ごす事ね」
「はい……。わかりました」
「前世の記憶は10歳になったら思い出すようにするからね。赤ちゃんの時に成人男性の意識があるのは、色々まずいと思うの。あと、質問はある?」
「俺は転生をして、何か果たさなければならない事柄がありますか?」
「そうね。自由に生きなさい。それで、たまに教会に足を運んでくれると嬉しいわ。時間が空いてれば、私とまた話す事も出来るわ」
「わかりました。では、時折伺わせて頂きます」
「じゃあ、異世界クラウディアに、行ってらっしゃい。また会いましょう」
俺は光に包まれ、意識を失った。




