エアコンと扇風機の注文
執事室から出て、自室に戻る。
俺は紙とペンを出して、エアコンのデザイン画を書いた。
それともう一つ、扇風機のデザイン画も描く。
よし、書き終わった。
俺は動きやすい服に着替えて、短剣を装備し、肩掛け鞄を肩にかけた。
鞄にデザイン画をしまいこみ、自室を出る。
訓練場に行くと、ジャックを見つけた。
「ジャック、町まで付き合って」
「おう、良いですぜ。ちょっと待っていて下さい」
ジャックは詰め所に入っていき、少しして出てきた。
「お待たせしました。今日は何処に行きますかい?」
「トムさんのところと、ジョージさんのところだよ。連日付き合わせて、悪いね」
「いえいえ、町の様子も見れるんで、一石二鳥ですよ。まずは、トムさんのところから行きましょうか」
俺はジャックと並んで歩いた。
食料品エリアでは、またジャックがモテモテだった。
「ジャック、元気にしてるか?」
「ジャック、うちの野菜はどうだい?」
「ジャック、うちのユリアとまた遊んでおくれよ」
ジャックは仕事中だと、丁寧に断っていた。
職人街に入り、しばらく歩いてトムさんの工房に到着した。
中に入ると、誰もいない。
ジャックが奥に向かって大声を上げた。
「トムさん、いないかい? おーい、トムさん!」
「なんだ、騒がしい。ジャックとアルキス様じゃないか。今日はどうしたんだ?」
「注文したいものがあります。まずは、これを見て貰えますか?」
俺はエアコンのデザイン画と、小型エアコンを取り出した。
「これは実際の寸法じゃありませんが、試作機を持ってきました。スイッチを入れます」
カチッ。
小型エアコンから冷風が吹き出す。
もじゃもじゃの髭を揺らして、トムさんが驚きの声を上げた。
「おお、凄いじゃないか。冷風の魔法は新魔法の筈だ。アルキス様、すぐに魔導具ギルドに申請をした方が良いぞ」
「えっ、まだエアコンが完成していないんですけど……」
「魔法が動いとる。それだけで十分だ。商品の開発はじっくりやったら良い。エアコンというのか。大きさは大きいんだろう?」
「はい。棚の上に置くイメージです。幅は一般的な棚の幅に合わせて下さい。吹き出し口は広く開けて貰って、冷房と暖房の切り換えスイッチを本体につけます。それと、スイッチのオンオフを紐で引っ張って出来るようにして貰いたいんです。冷房は25度、暖房は26度になったら止まるけど、紐を引っ張ったら再度オンになるようにね」
「ほほう、こりゃあ白金貨並の魔導具だな。紐で引っ張ってオンオフか。勿論出来るぞ。そのままの箱じゃあ、見栄えがしねえ。きっちり調度品として、仕上げてやるよ。何台欲しい?」
「普通のを10台と、ベイクブリッド辺境伯家に献上するのを5台。ただ、商品が出来上がったら、また100台注文するかもしれない」
「わかった。ベイクブリッド辺境伯家に献上する分は、金貨60枚、普通のは金貨50枚で作ってやる。紐も高級感のある感じに仕上げよう。納期は二週間だ。鉄の基盤が1枚ずつつく。魔石はついてねえ。請求はシカラーゴ子爵家で良いか?」
「はいっ、宜しくお願いします! それと、このデザイン画も見て貰いたいんですが……」
俺は小型エアコンのスイッチを切って、アイテムボックスにしまった。
鞄から扇風機のデザイン画を出す。
「これは、扇風機といいます。床に置いて使うイメージで、このプロペラが回り、ここから冷風を出します。部屋を冷やすんじゃなく、涼む為の魔導具です。この首の所を、180度回転させるようにしたいんですけど、どうでしょう?」
「ふむふむ。スイッチはこの部分だな。回転の呪文を使うんだな。うん、出来るぞ。首振りを止めスイッチもあった方がいいな」
「はい、お願いします。材質を、鉄で作るのと、木で作るのと、2種類作ろうと思ってるんですけど、どうでしょうか?」
「長く使うもんは、金属と決まっておる。だが、エアコンは白金貨が必要だしなぁ。まあ、木造があっても良いだろう。これ、木工細工屋に持っていくのか?」
「はい。あっ、デザイン画、1枚しか書いてこなかった!」
俺は扇風機は木造のイメージがあったから、1枚しか書いていなかった。
「今書き写すから待ってろ。プロペラは3枚羽根で、首振り機能付きで、スイッチがここ。足は丸形でいいな? プロペラの前には網をつける。よし、何台作る?」
おお。
トムさんのデザイン画、すごく上手だ。
「ベイクブリッド辺境伯家に献上する分を5台と、普通のを10台お願いします。こっちも、実物を確認したら、100台注文するかもしれません」
「わかった。ベイクブリッド辺境伯家に献上する分は、金貨40枚、普通のは、金貨30枚だ。鉄の基盤が1枚ずつつく。魔石はついてねえ。いいな?」
「はい、宜しくお願いします。請求はシカラーゴ子爵家に回して下さい」
俺は扇風機のデザイン画と、小型エアコンをアイテムボックスにしまった。
トムさんに挨拶をして、工房を出る。
「んじゃあ、ジョージの工房へ行きましょうか。それとアルキス様。あの冷風が出る魔導具、私兵団も欲しいですよ。夏は暑さで死にますからね」
「うん、シカラーゴ子爵家用に10台確保してるから、1台くらいは、貰えるんじゃないかな?」
「やったぁ! 絶対ですよ、アルキス様」
「うん、ジョルジュに言っておくね」
俺はジャックとしばらく歩き、ジョージさんの工房にやってきた。
中に入ると、ジョージさんがカウンターにいた。
「よぉ、ジョージ。元気でやってるか?」
「おう、ジャックとアルキス様。今日はどうしたんだ?」
俺はアイテムボックスからデザイン画を出して、机に置いた。
「今日は注文に来ました。これは扇風機と言います。プロペラがくるくる回って、風を起こすと同時に、首振り機能も付けます。更に、プロペラの所から冷風を噴き出します。夏に涼む為の魔導具です」
「なるほど。冷風が吹き出すって、新魔法かい?」
俺はアイテムボックスから、小型エアコンを取り出し、スイッチを入れた。
冷風が勢い良く吹き出す。
「おう、こりゃあいい。これも商品かい?」
「これは試作機です。本物は大型で、部屋を冷やす為の魔導具で、エアコンというものです。それは金物屋に依頼しました」
「この扇風機も鉄で作った方が良いんじゃないか?」
「一応、注文してきました。木造と鉄と選べた方が良いかと思ってるんですけど、どうでしょう?」
「それなら良いか。承るよ。この首の所が回れば良いんだろ? それと、首を止めるスイッチも必要だな。プロペラは3枚羽根で、網をつける。ふむふむ、足は丸形でいいな。何台作ろうか?」
「ベイクブリッド辺境伯家に献上する分を5台と、普通のを10台お願いします。ただ、販売するとなったら、100台注文するかもしれません」
「わかった。贈答品が5台と普通のが10台だな。値段は贈答用が銀貨60枚、普通のが銀貨50枚だ。合計金貨8枚だ。納期は2週間。請求はシカラーゴ子爵家に回しておく」
「はい。宜しくお願いします!」
俺は小型エアコンをオフにして、アイテムボックスにしまった。




