大口注文を受けた
外に出たら、ジャックが言った。
「んじゃあ、クレベルタ商会に行きますかい?」
「うん。販売の件を相談しなくちゃね」
俺達は職人街を通り抜け、商店街にやってきた。
一際立派なクレベルタ商会に入ると、女性がにこやかに対応してくれる。
「アルキス様、ジャック様、いらっしゃいませ。本日はどうされましたか?」
「あの、アズール叔父様はいますか? 魔導具の販売について、相談があります」
「では、来賓室へどうぞ。今、お茶を持ってくるわ」
俺達は豪華な来賓室に通された。
ふかふかなソファに座り、出されたお茶を飲む。
お茶菓子はお饅頭だった。
小豆があるんだ、俺も欲しい!
「お待たせ、アルキス。お茶菓子は口にあったかな?」
「これ、小豆だよね? あるなら俺も買いたい!」
「美味いだろう。じゃあ、帰りに少し持たせてやろう。ところで、魔導具の販売だって?」
「うん。俺、乾燥機能付き洗濯機を作ったんだ。今、魔導具ギルドで登録してきたところなんだけど、販売はクレベルタ商会に任せていい?」
「勿論だとも。乾燥機能付き洗濯機だって? 大発明じゃないか。今までにない、新型の洗濯機だ。これは売れるぞ! 俺も実物を見てみたいんだが、裏に出してくれるか?」
「うん!」
俺は裏へ回り、洗濯機を出した。
アズール叔父様は、シャツとズボン、シーツを入れて、洗剤を入れてスイッチオン!
水が出るところを確認して、来賓室に戻った。
「洗濯に30分、乾燥に30分かかります。洗濯の部分は、従来品と同じです」
「ふむふむ、構造は同じものだよな。基盤を書き換えれば、うちの在庫も乾燥機能付き洗濯機になるかな?」
「なります。ただ、短縮の呪文を使っているので、売上の1割を魔導具ギルドに支払わないといけません」
「わかった。じゃあ、まず6台分、鉄の基盤に乾燥機能付き洗濯機の配線と呪文を書いてくれるか。今、基盤と魔術インク、魔術ペンを持ってくる。おやつのおかわりも、持ってこよう」
「わかりました」
アズール叔父様がドアの向こうに消えて、綺麗なお姉さんがお茶のおかわりを注いでくれた。
お饅頭も追加で2つ、乗せてくれた。
俺はお饅頭を食べながら待つ。
少しして、アズール叔父様が戻ってきた。
机に基盤が並べられ、魔術インクと魔術ペンも渡される。
「俺は洗濯機を見てくる。アルキス、頼んだぞ」
「うん、任せておいて」
俺はアイテムボックスから、木の基盤を出して、鉄の基盤に書き写していく。
ジャックはのんきにお茶を啜っている。
俺は集中して、6枚の基盤を書き終えた。
俺がお茶を飲みつつ、お饅頭を食べていると、興奮した様子のアズール叔父様が入ってきた。
「洗濯が終わったよ。乾燥もバッチリだ! ふわふわに仕上がって、とても満足したよ。アルキスの発想は凄いな! 他にも作っている魔導具はあるのかい?」
「次は、乾燥の呪文を使ったドライヤーという魔導具を作ろうと思っています。女性の髪を乾かす為に作りました」
「ほほう、それは良いね。じゃあね、ここから商談だ。洗濯機100台と、ドライヤーも100個作って欲しい。販売はうちがやる。うちの取り分は純利益の2割でどうだ? 短縮の呪文の使用料をギルドに収めに行くのと、アルキスの工房の帳簿はうちでつけてやる。クレベルタ商会の雇われ魔導具師ってことになる」
「うん、良いよ。乾燥機能付き洗濯機の適正値段は金貨50枚って聞いたよ。そんなに高い物が売れるのかなぁ?」
「当たり前だ。だって最新型なんだぞ。欲しがる奴はいくらでもいる。注意点としては、基盤だけ売り買いしてはいけないんだが、部品としてならセーフだ。さっき書いて貰った6台分の基盤代は、パーツ代として金貨25枚払う。6台で金貨150枚だ。受け取ってくれ」
アズール叔父様は、白金貨1枚と金貨50枚をトレイに乗せて、俺の前に置いた。
俺は金貨を50枚数えて、白金貨と共にアイテムボックスに入れた。
「確かに受け取ったよ。納期は早くても一ヶ月かかると思うよ。ドライヤーはもう少し早く出来るかもしれない」
「予約をどんどん取っておくから、出来たらすぐ持って来い。わかったな?」
「わかりました。じゃあ、発注をしに向かいます。これからお世話になります」
「こちらこそ。素晴らしい取引をありがとう。気を付けて帰ってくれ。それとこれが、小豆と餅粉だ。ガストンに調理して貰え」
「ありがとう、貰っていくね」
俺は荷物をアイテムボックスに収納し、裏に回って洗濯機を収納して、クレベルタ商会を出た。
「さて、アルキス様。トムの所に行かなきゃですよね?」
「うん。あとジョージさんのところも行きたい」
「分かってますよ、まずは金物屋だ。さぁ、行きましょう」
ジャックの先導で歩いて行き、職人街に入って、しばらく歩いた。
やがてトムさんの工房が見えてきた。
中に入ると、カウンターに誰もいない。
ジャックが大声を上げた。
「トムさん、トムさーん! 俺だよ、ジャックだよ!」
「騒々しいぞ! おう、ジャック。坊主も一緒か。今日は何用だ?」
「普通の洗濯機を、100台作って欲しくて来ました。普通の洗濯機なら金貨20枚位で作れますか?」
「洗濯機を100台だと! 確かに普通の洗濯機は、金貨20枚で作れるが……100台ともなると、白金貨20枚だ。シカラーゴ子爵家は、そんなに払えるのかよ?」
「問題ありません。納期はいつぐらいになりますか?」
トムさんはもじゃもじゃの髭をひとなでして、ため息をついた。
「一ヶ月後に50台。もうひと月貰って50台。普通の洗濯機とは言っても、買うのは富裕層だからな。簡単な装飾もつける。それでいいか」
「はい! お願いします!」
「アルキス様……だったな。売るなら自分の紋章を入れた方が良い。アイディアはあるか?」
「うん! 紙とペンをお借りしても良いですか?」
「ああ、良いぞ。これを使え」
俺は紙に丸を書いて、その中に紅葉を描いた。
「これでお願いします」
「ほう、こりゃあ紅葉か。良いだろう、これを洗濯機に入れておく。ところで、洗濯機の大量注文は珍しい。新型なのか?」
「はい。乾燥機能付き洗濯機を開発しました。今日、魔導具ギルドに登録してきたばかりです」
「乾燥機能付き洗濯機か。そりゃあすごい。どこで売ってるんだ?」
「クレベルタ商会です。在庫は数台しか、ありません」
トムさんは考え込み、腕を組んだ。




