魔導具ギルド
自室を出て、訓練場を覗く。
あっ、見つけた、ジャックだ。
「ジャック! 町に行くから護衛をお願いしたいんだけど」
「アルキス様、良いですぜ。ちょっと団長に言ってきますね」
そう言ってジャックは詰め所へ入っていった。
少しして、身支度を整えたジャックが出て来る。
「お待たせしました。今日はどこへ行きましょうか?」
「今日は、魔導具ギルドに行きたいんだ」
「わかりました。行きましょう」
俺はジャックの後について、歩き出した。
食料品エリアでは、相変わらずジャックがモテモテだった。
「ジャック、エーラが寂しがってたよ?」
「ジャック、いい野菜入ってるよ!」
「ジャック、肉ならうちがいいぞ!」
ジャックは仕事中だからと丁寧に断っていた。
羨ましくなんて、ないやい。
職人街に入り、大きな建物の前に立つ。
「ここが魔導具ギルドですぜ。中に入りましょう」
俺達は魔導具ギルドに足を踏み入れた。
一階は受付らしく、空いているところへ顔を出してみる。
「魔導具ギルドへようこそ。本日はどうされましたか?」
「魔導具ギルドに登録と、乾燥機能付き洗濯機を作ったので、その報告に来ました」
「ふむふむ、まずは新規登録から行いましょう。こちらの用紙にご記入下さい」
氏名、住所、年齢、工房名、販売店。
俺は順番に書いていった。
工房名は、アルキス工房。
販売店は、クレベルタ商会っと。
「書けました」
「はい、ありがとうございます。貴方の作った、乾燥機能付き洗濯機は、今日お持ちになっておられますか?」
「はい、あります。アイテムボックスにしまってあります」
「では、そちらにお出し下さい」
「わかりました」
俺はアイテムボックスから、乾燥機能付き洗濯機を取り出した。
受付の女性が洗濯機をチェックする。
「外観も構造も普通の洗濯機と変わりませんね。基盤を見ていいですか?」
「はい、どうぞ」
基盤を取り出して、机に戻った受付の女性は、呪文図鑑と思われる分厚い辞書をぺらぺらとめくり、何やら確認している。
俺とジャックは椅子に座り、のんびりと待った。
「おめでとうございます。『暖風よ 吹け ウォーム』は新魔法です。新魔法の開発者には、報奨金が支払われます。一度その洗濯機を使ってみたいのですが、お時間は大丈夫でしょうか?」
「はい、大丈夫です」
「では、洗濯機を収納して頂いて、こちらへどうぞ」
俺は言われたとおりに、洗濯機を収納し、受付の女性の後についていった。
開けた場所に出て、洗濯機置き場がいくつもあった。
「洗濯機はこちらに設置をお願い致します」
「はい」
俺は洗濯機を設置した。
受付の女性がシャツとズボン、シーツを持ってきて、洗剤と共に洗濯機に入れ、基盤をセットしてスイッチを入れた。
水が出て来るのを確認してから、受付の女性は俺達を待合室へと案内した。
「こちらでおくつろぎ下さい。洗濯に30分、乾燥に30分かかります。どうか、乾燥が終わるまでお待ちください」
「わかりました」
お茶とクッキーが振る舞われ、俺はジャックと談笑して1時間を過ごした。
トントンと、ノックの音がして、受付の女性が入ってきた。
受付の女性は対面に座ると、にこやかに話し始めた。
「お待たせしました。洗濯機の確認が終わりました。洗濯物がふわふわに仕上がっていて、驚きましたよ」
「えへへ、ありがとうございます」
「では、報奨金の事から説明しますね。『ウォーム』の魔法は汎用性が高く、実用性もあると認められ、白金貨10枚が支払われる事になりました」
「白金貨10枚?! ありがとうございます……」
なんてこった、大金じゃないか。
俺はトレイに乗せられた白金貨を10枚数え、アイテムボックスにしまった。
「次に、洗濯機を販売するときの注意点です。特定の呪文は特許があり、使用料を払う必要があります。金額は、売値の1割です。今回の洗濯機の場合は、短縮の呪文が該当します。ちなみに、『ウォーム』の魔法はアルキス様が特許をお持ちなので、使用料を支払う必要がありません」
「ふむふむ。短縮の呪文は1割お支払いするんですね。俺は家で使うランプに短縮の呪文を使っていますが、お支払いが必要ですか?」
「いいえ、あくまで販売した時のみ、お支払いが必要になります。贈答品も例外です」
「わかりました。『ウォーム』の魔法は、乾燥の呪文として、『魔導具呪文一覧』に載るんでしょうか?」
「はい、その通りです。そして、乾燥の呪文を他の魔導具師が使い、販売したら、売値の1割が、アルキス様に支払われます。その際は魔導具ギルドの口座に振り込みたいのですが、宜しいでしょうか」
「口座ですか?」
「こちらが、アルキス様の魔導具ギルド証になります。こちらを使えば、お金を預ける事が出来るのです。お引き出しも無料で行っております。金額の明細もお作りしておりますので、お近くに寄られた際は、残金のご確認をして下さい」
へえ、銀行口座になってるんだな。
俺はギルド証を受け取り、首からかけた。
「わかりました。ギルドの口座に入金をお願いします。ところで、乾燥機能付き洗濯機は、いくらぐらいで売れば良いでしょうか?」
「金物屋で仕入れた洗濯機の値段のおよそ倍額が適正な値段です。一般的な洗濯機は、金貨40枚程度。乾燥機能付き洗濯機は、短縮の呪文を使っていることもありますから、金貨50枚ですね」
「1台金貨50枚ですか……わかりました。そのようにします」
「問い合わせがあったら、クレベルタ商会にご案内して宜しいですか?」
「はい、大丈夫です」
「では、本日のご案内は以上となります。本日は誠にありがとうございました」
俺とジャックは立ち上がり、待合室を出た。
俺は洗濯機を収納し、出口へ向かう。




