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『ウォーム』の呪文

「俺はここの森に入るのは初めてだが、信じられない程ゴブリンが多かった。ゴブリンアーチャーやゴブリンメイジ、ホブゴブリンも多数いた。はっきり言って異常事態だと思う。ゴブリンキングは、確実にいると思う」


 アストレイ様がそう言った。

 

「明日もゴブリン討伐に行ってくれると助かる。冒険者ギルドからも連絡があった。Bランクパーティ【陽光の盾】が、今日から斥候を中心に森に入る。ゴブリンキングが見つかったら、一度引いて人数を集める予定だ。ジュリア、ルルーシュ、アストレイ様、どうか無理をしないようにお願いしますぞ」


「ええ、わかってるわ」


「おう、大丈夫だ」


「俺も了解です」


 ジュリアお姉様とルルーシュお兄様、アストレイ様が了承の返事をした。

 俺達は解散して、食堂を出た。

 俺はジュリアお姉様の部屋へ赴き、ノックをした。


「アルキスです。入って良いでしょうか?」


「どうぞ」


 俺はジュリアお姉様の部屋に入り、ソファに座った。

 ジュリアお姉様が対面のソファに座り、小首をかしげる。


「どうしたの?」


「実は、火と風の混合魔法を試して貰いたいんです。呪文は、『暖風よ 吹け ウォーム』。あったかい風が出るイメージです」


「へえ。初級呪文の合わせ技ね。良いわよ。始めはあっちに向かって撃つわね。『暖風よ 吹け ウォーム』!」


 ジュリアお姉様の手のひらの向こうは、何も見えなかった。

 

「とりあえず危険はないかしら。アルキス、こっちに来て。温かい風が出ているか、確認して頂戴」


「うん、わかった」


 俺はジュリアお姉様のそばに立ち、挙動を見守る。

 ジュリアお姉様は俺に向かって、呪文を唱えた。


「『暖風よ 吹け ウォーム』!」


 ジュリアお姉様の手から、温かい風が吹き出る。

 温かい風は15秒程で止まり、俺は大きくジャンプした。


「やったぁ! 本当に温かい風が出た! 一度で成功させるなんて、お姉様は天才だよ!」


「手から温風が出るなんてね。これで髪を乾かせれば良いんだけどね」


「うん? 髪を乾かしたいの?」


「ええ。背中まで伸びた髪は自慢だけれど、乾かすのに難があるの。櫛も濡れた髪だと通りにくいしね」


「じゃあ、俺が『ウォーム』の呪文で髪を乾かしやすい魔導具を作るよ! 待ってて、きっと上手くいくから!」


「あら、作ってくれるの? じゃあ、待っているわね。アルキスの魔導具だなんて、楽しみだわ」


 ジュリアお姉様は美しく微笑んだ。

 俺はジュリアお姉様にお礼を言って、部屋を出た。

 自室に戻り、ランプをつけて、途中まで配線と呪文を書いた木の基盤を取り出す。

 魔術ペンに魔術インクをつけて、呪文を書き込んでいく。

 乾燥時間は30分。

 『ウォーム』を複数設置して、洗濯物が回転するように設計する。

 時間経過で止まるようにして、と。


「よし、出来た! 明日、実際に動くか確かめてみよう!」


 俺は動きやすい服に着替えてから、ベッドに入った。

 魔導具作りは楽しい。

 プログラムを組むときのような高揚感がある。

 俺は明日を楽しみに、目を閉じるのだった。




 翌日、俺はぱっちりと目が覚めた。

 顔を洗って、礼服に着替える。

 すると、トントンとノックの音が響いた。


「アルキス様、朝食のお時間です」


「わかった、今行くよ」


 俺は鏡を見て髪を整えると、自室を出たのだった。

 食堂に入り、自分の席に座る。

 全員礼服で正装する姿も見慣れてきた。

 美味しそうな朝食が並び、食前の挨拶をしてから、スープを飲んだ。

 うーん、染み渡るような美味しさだ。

 しゃくしゃくと野菜サラダを食べて、目玉焼きとソーセージを食べる。

 焼きたてのゴマのパンが、最高に美味しい。

 朝食が済んだ後、お父様が話し出した。


「冒険者ギルドから、まだゴブリンキングは発見していないという連絡が入っている。くれぐれも、気を付けて行って来てくれ」


「ええ、大丈夫よ」


「おう、わかってる」


「わかりました」


 お父様の声に、ジュリアお姉様、ルルーシュお兄様、アストレイ様が返事をする。

 俺達は解散して、俺はジョルジュの元へ行った。


「おや、アルキス様。どうなさいましたか?」


「洗濯機の修理が終わったんだ。動かしてみたいんだけど、大きい魔石はある?」


「ございますよ。少々お待ち下さい」


 ジョルジュが執事室へ行き、少しして戻ってきた。

 その手には、5センチ位の大きさの魔石があった。


「こちらで宜しいでしょうか?」


「うん、ありがとう。魔石って高いの?」


「ゴブリンなどの下級魔物から取れる魔石は、銅貨30枚程です。次に中級の魔物、およそCランク以上の魔物から取れる大きな魔石は、銀貨1枚かかります。大きな魔石ほど高額になり、魔導具のもちも、良くなります」


「わかった。大きい魔石は高いんだね。大事に使うよ」


「はい。洗濯機が直っていたら、また教えて下さい」


「はーい」


 俺はメイドのサーラを捕まえて、洗って良い洗濯物を手に入れた。

 シーツ1枚とシャツ3枚をアイテムボックスにしまった。

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