第八十七章 十七歳の帝と十四歳の姫
第八十七章 十七歳の帝と十四歳の姫
襖が。
開いた。
姫は。
顔を上げた。
そして。
一瞬。
目を止めた。
若い。
それが。
最初に抱いた。
感想だった。
もっと。
年上だと。
勝手に思っていた。
足利義昭を。
裁いた帝。
織田信長と。
天下について語る帝。
公家たちを。
黙らせる帝。
だから。
もっと。
恐ろしい男を。
想像していた。
だが。
目の前にいるのは。
十七歳の。
青年だった。
◆
帝も。
姫を見た。
織田信長の娘。
十四歳。
名は。
冬姫。
まだ。
少女と呼んでも。
おかしくない。
だが。
背筋は。
まっすぐ。
伸びている。
緊張している。
それは。
分かる。
それでも。
目を逸らさない。
――なるほど。
帝は。
心の中で。
思った。
信長の娘だ。
◆
「冬」
鷹司家の当主が。
静かに促した。
冬姫は。
我に返った。
深く。
頭を下げる。
「織田信長が娘」
「冬にございます」
声は。
僅かに。
震えていた。
帝は。
それを。
責めない。
「顔を上げよ」
冬姫が。
ゆっくり。
顔を上げる。
帝は。
少しだけ。
笑った。
「緊張しているか」
冬姫は。
一瞬。
迷った。
ここで。
否定するのが。
礼儀なのかもしれない。
だが。
父は。
言った。
――自分で見ろ。
――自分で聞け。
――自分で決めろ。
ならば。
最初から。
嘘をつく必要はない。
「はい」
冬姫は。
答えた。
「とても」
帝が。
僅かに。
目を丸くした。
そして。
笑った。
「そうか」
◆
その笑顔を見て。
冬姫の肩から。
ほんの少し。
力が抜けた。
だが。
次の瞬間。
帝が。
鷹司を見る。
「少し」
「話をしたい」
「は」
鷹司は。
頭を下げる。
女房だけを。
少し離れたところへ。
残した。
完全な。
二人きりにはしない。
だが。
普通の声なら。
内容までは。
聞き取れない。
それだけの。
距離。
十七歳の帝。
十四歳の姫。
二人が。
向かい合った。
◆
先に。
口を開いたのは。
帝だった。
「まず」
「謝っておこう」
冬姫が。
驚く。
「主上が」
「私に?」
「ああ」
「何故でございましょう」
「驚かせた」
帝は。
あっさり言った。
「突然」
「鷹司の養女になり」
「朕の妻になれと」
「聞かされたのであろう」
「……はい」
「普通なら」
「驚く」
冬姫は。
少しだけ。
帝を見る。
「主上でも」
「普通と」
「仰るのですね」
帝が。
止まった。
そして。
笑った。
「朕も」
「人だからな」
冬姫は。
また。
少しだけ。
驚いた。
◆
帝。
それは。
冬姫にとって。
人というより。
遠い存在だった。
父。
信長でさえ。
帝の前では。
臣下として。
頭を下げる。
その人物が。
自分を前に。
普通。
という言葉を。
使っている。
不思議だった。
「冬」
帝が。
名を呼ぶ。
冬姫の背筋が。
また。
伸びる。
「はい」
「今日は」
「返事を聞くために」
「来たのではない」
冬姫が。
帝を見る。
「聞きたいことを」
「聞けばよい」
「何でも?」
「ああ」
「答えられることなら」
「答える」
帝は。
少しだけ。
間を置いた。
「答えられぬことは」
「答えられぬと言う」
冬姫は。
僅かに。
首を傾げた。
不思議な。
言い方だった。
◆
冬姫は。
少し。
考えた。
そして。
最初の問いを。
口にした。
「では」
「お尋ねいたします」
「うむ」
「何故」
冬姫は。
帝を見る。
「私なのでございますか」
来た。
帝は。
そう思った。
当然の。
問い。
「織田家との」
「御縁が必要なのであれば」
「私でなくとも」
「よいはずです」
その通りだった。
信長には。
娘がいる。
政治だけなら。
誰でも。
よい。
だが。
帝は。
首を横に振った。
「最初は」
「織田の娘であれば」
「誰でもよいと」
「考えていた」
冬姫の顔が。
僅かに。
曇った。
帝は。
それを見た。
「だから」
「それでは駄目だと」
「思った」
「……え?」
◆
「朕は」
「織田と」
「朝廷を」
「結びたい」
帝が。
静かに言う。
「それは」
「間違いない」
「お前を」
「選ぼうとした最初の理由には」
「政治がある」
冬姫は。
黙って聞く。
帝は。
誤魔化さない。
「幕府は」
「終わった」
「武家と朝廷の間にあった」
「古い形が」
「一つ消えた」
「これから」
「新しい形を」
「作らねばならぬ」
「そのために」
「織田と」
「朝廷が」
「争わぬ形を」
「作りたい」
冬姫が。
静かに尋ねた。
「そのために」
「私が必要なのですか」
「ああ」
帝は。
答えた。
「だが」
「それだけなら」
「お前である必要はない」
冬姫の目が。
帝を見る。
◆
「だから」
帝が続ける。
「会いたかった」
「私に?」
「ああ」
「朕が」
「生涯を共にする相手だ」
「織田信長の娘」
「それだけで」
「決めてよいはずがない」
冬姫は。
何も言えなかった。
帝の口から。
生涯。
という言葉が。
出た。
十四歳の少女には。
あまりにも。
重い。
だが。
不思議と。
嫌ではなかった。
◆
冬姫は。
次の問いを。
口にした。
「では」
「もう一つ」
「聞こう」
「私が」
「鷹司家の養女となれば」
一度。
息を吸う。
「私は」
「織田の娘では」
「なくなるのでしょうか」
帝は。
すぐに。
答えなかった。
冬姫は。
その沈黙を。
じっと待つ。
やがて。
帝が。
口を開いた。
「ならぬ」
冬姫の目が。
僅かに。
大きくなる。
「家の上では」
「鷹司の娘となる」
「だが」
「お前が」
「織田信長の娘として」
「生きてきた十四年まで」
「消えるわけではない」
帝が。
冬姫を見る。
「人は」
「家を移れば」
「それまでの自分を」
「捨てねばならぬのか」
「朕は」
「そうは思わぬ」
◆
冬姫は。
俯いた。
少しだけ。
目が。
熱くなった。
自分でも。
気づいていなかった。
怖かったのだ。
織田を。
離れることが。
父を。
家族を。
捨てるように。
感じていた。
「父に」
冬姫が。
小さな声で言う。
「会うことは」
「できますか」
「できる」
即答だった。
冬姫が。
顔を上げる。
「本当に?」
「何故」
「会わせぬ必要がある」
帝は。
逆に。
不思議そうだった。
冬姫が。
少し笑った。
「父が」
「頻繁に参りましたら」
「禁裏が」
「騒がしくなりそうです」
帝が。
黙った。
そして。
「それは」
「困るな」
冬姫が。
初めて。
声を出して。
笑った。
◆
帝も。
笑った。
不思議だった。
ほんの少し前まで。
足利義昭の。
生死を決めていた。
その自分が。
今は。
信長が。
頻繁に訪ねてくると困る。
そんな話を。
している。
十七歳。
前世を含めれば。
もちろん。
それだけではない。
だが。
この体で。
この世界に生まれ。
十七年。
帝として。
生きてきた。
そして。
目の前の冬姫は。
十四歳。
この世界しか。
知らない。
だからこそ。
帝は。
思う。
未来の記憶を。
この少女へ。
背負わせるつもりはない。
◆
「冬」
「はい」
「朕からも」
「一つ聞いてよいか」
「はい」
「怖いか」
冬姫は。
少し考えた。
「主上が」
「でございますか」
「ああ」
冬姫は。
帝を見た。
父の言葉を。
思い出す。
――怖い男だ。
思わず。
少し笑った。
帝が。
眉を上げる。
「何だ」
「申し訳ございません」
「父上も」
「同じことを」
「仰いました」
「信長が?」
「はい」
「主上は」
「怖い男だと」
帝が。
黙った。
「……あの男」
冬姫が。
また笑う。
◆
「それで」
帝が。
少し不満そうに。
聞く。
「お前は」
「どう思う」
冬姫は。
考えた。
そして。
正直に。
答えた。
「まだ」
「分かりませぬ」
帝の目が。
少し。
変わった。
「分からぬ?」
「はい」
「今日」
「初めて」
「お会いしたばかりです」
あまりにも。
当然。
帝は。
一瞬。
言葉を失った。
そして。
笑った。
「それも」
「そうだな」
◆
冬姫は。
少し。
勇気を出した。
「ですが」
「うむ」
「父上から聞いたほど」
「怖くは」
「ございません」
「そうか」
「今のところは」
帝が。
冬姫を見る。
「今のところ?」
「はい」
「……本当に」
「信長の娘だな」
「よく」
「言われます」
◆
空気が。
変わっていた。
帝と。
織田の姫。
それだけではない。
十七歳の少年と。
十四歳の少女。
少しずつ。
互いの言葉を。
聞き始めている。
だが。
冬姫には。
まだ。
最も聞きたいことが。
残っていた。
「主上」
「何だ」
「もし」
冬姫は。
少し。
言葉を探した。
「私が」
「妻となったなら」
「私は」
「何をすれば」
「よいのでしょう」
帝は。
黙った。
「公家の作法も」
「歌も」
「私は」
「まだ」
「十分には存じませぬ」
「鷹司家で」
「学ぶとは聞いております」
「ですが」
冬姫は。
手を。
膝の上で。
握った。
「私は」
「武家の娘です」
「禁裏で」
「役に立てるのでしょうか」
◆
帝は。
しばらく。
冬姫を見た。
そして。
静かに。
答えた。
「役に立とうと」
「しなくてよい」
冬姫が。
驚く。
「え?」
「朕の妻は」
「役目ではない」
「だが」
「后には」
「役目があるのでは」
「ある」
帝は。
頷く。
「学ばねばならぬことも」
「多い」
「鷹司で」
「苦労もするだろう」
「だが」
帝は。
一度。
言葉を切った。
「お前を」
「道具として」
「迎えるつもりはない」
冬姫の目が。
帝を見る。
◆
「織田の血を」
「朝廷へ入れる」
「政治だけを見れば」
「そういう話になる」
「だが」
「お前は」
「血ではない」
帝の声は。
静かだった。
「一人の人間だ」
「だから」
「嫌なら」
「断れ」
冬姫が。
息を呑む。
父と。
同じ。
言葉。
「信長にも」
「同じことを」
「言われたか」
「……はい」
「そうか」
帝は。
少し笑った。
「そこは」
「意見が合ったらしい」
◆
冬姫は。
帝を見る。
怖い男。
父は。
そう言った。
だが。
今。
目の前にいる。
十七歳の帝は。
少なくとも。
自分の言葉を。
聞こうとしている。
そして。
断ってよいと。
言っている。
それなら。
もう一つ。
聞いてみたい。
「主上」
「何だ」
「側室は」
帝の顔が。
止まった。
鷹司家の当主が。
遠くで。
僅かに。
顔を上げた。
女房も。
目を伏せたまま。
耳だけが。
こちらを向いた。
◆
冬姫自身も。
言った後で。
顔が。
赤くなる。
十四歳。
だが。
知らないほど。
幼くはない。
帝の妻になる。
なら。
避けて通れない。
帝は。
しばらく。
黙っていた。
そして。
答えた。
「置かぬ」
冬姫が。
顔を上げた。
「……え?」
「側室は」
「置かぬ」
「ですが」
冬姫が。
戸惑う。
「皇子が」
「生まれなければ」
「その時は」
「その時に考える」
帝は。
平然と答えた。
◆
鷹司家当主の。
表情が。
わずかに。
変わった。
それは。
軽く言えることではない。
皇統。
継承。
公家社会。
すべてに。
関わる。
冬姫も。
分かっている。
「本当に」
「よろしいのですか」
帝は。
少し。
考えた。
そして。
答える。
「よいかどうかは」
「これから」
「周りに」
「散々言われるだろうな」
冬姫が。
思わず。
笑った。
「ですが」
帝が続ける。
「朕は」
「そのつもりだ」
◆
冬姫は。
黙った。
政略結婚。
そう。
思っていた。
もちろん。
政治だ。
帝も。
隠していない。
織田と。
朝廷を。
血で結ぶ。
そのための。
縁談。
だが。
それだけでは。
ないのかもしれない。
少なくとも。
そうするかどうかを。
自分に。
選ばせてくれている。
冬姫は。
少し。
考えた。
そして。
帝へ。
頭を下げた。
「主上」
「何だ」
「私は」
「まだ」
「お返事できませぬ」
帝は。
すぐに。
頷いた。
「それでよい」
冬姫が。
顔を上げる。
「よいのですか」
「今日」
「初めて会った男へ」
「一生ついて行くと」
「今すぐ言う方が」
「朕は怖い」
冬姫は。
また。
笑った。
◆
「ですが」
冬姫が続ける。
「もう一度」
「お会いしたいと」
「思います」
帝の表情が。
止まった。
ほんの。
一瞬。
十七歳の。
顔になった。
「……そうか」
「はい」
「では」
帝が。
少しだけ。
姿勢を正す。
「また」
「会おう」
「はい」
冬姫は。
深く。
頭を下げた。
◆
面会が。
終わった。
冬姫が。
部屋を出る。
廊下へ。
進む。
そこで。
一度。
立ち止まった。
女房が。
尋ねる。
「姫様?」
冬姫は。
小さく。
首を横に振る。
「何でもありません」
だが。
少し。
頬が。
赤い。
怖かった。
今も。
怖い。
だが。
来る前とは。
違う。
少なくとも。
帝という。
遠い存在では。
なくなった。
十七歳の。
一人の青年。
そう。
思えるように。
なっていた。
◆
一方。
部屋に残った。
帝。
鷹司家当主が。
静かに。
頭を下げる。
「いかがでございました」
帝は。
少し。
黙った。
「信長に」
「似ている」
「左様にございますか」
「思ったことを」
「聞いてくる」
「それは」
「悪いことで?」
帝は。
首を横に振った。
「いや」
そして。
小さく。
笑った。
「面白い」
鷹司は。
その表情を。
見逃さなかった。
◆
その日の夕刻。
冬姫は。
信長のもとへ。
戻った。
信長は。
一人で。
待っていた。
「どうだった」
第一声。
それだった。
冬姫は。
父を見る。
「父上」
「何だ」
「主上を」
「怖い男と」
「仰いましたね」
「ああ」
「嘘では」
「ございませぬか」
信長の眉が。
上がる。
「何?」
「思ったより」
「怖くありませんでした」
信長が。
冬姫を見る。
そして。
鼻で笑った。
「まだ」
「一度しか」
「会っておらぬからだ」
「主上も」
「同じようなことを」
「仰いました」
信長が。
止まる。
◆
「何を話した」
「いろいろと」
「いろいろでは」
「分からぬ」
冬姫は。
少し考える。
「何故」
「私なのか」
「鷹司の娘になれば」
「織田の娘では」
「なくなるのか」
「それから」
一度。
言葉を止める。
「側室のことも」
信長が。
盛大に。
咳き込んだ。
「お前!」
「初対面で」
「何を聞いておる!」
冬姫が。
驚く。
「聞いておいた方が」
「よいかと」
信長が。
額を押さえる。
「宗一郎か」
「宗一郎に」
「何か言われたのか」
「高槻様とは」
「お話ししておりませぬ」
「なら」
「誰に似た!」
冬姫は。
父を。
じっと見た。
信長が。
黙った。
「……儂か」
「はい」
◆
しばらくして。
信長が。
尋ねた。
「それで」
「答えは」
冬姫は。
首を横に振る。
「まだ」
「決めておりません」
「そうか」
信長は。
それ以上。
急かさない。
「ですが」
冬姫が続ける。
「もう一度」
「主上に」
「お会いしたいと」
「お願いしました」
信長の目が。
僅かに。
変わった。
「主上は」
「何と」
「また会おうと」
信長は。
娘を見た。
しばらく。
何も言わない。
やがて。
「そうか」
それだけ。
答えた。
◆
冬姫が。
部屋を出た後。
信長は。
一人。
座っていた。
十四年。
あっという間だった。
小さかった。
娘が。
自分の人生を。
自分で。
選ぼうとしている。
しかも。
相手は。
帝。
「面倒なことに」
「なったものだ」
そう。
呟きながら。
信長の顔は。
少しだけ。
笑っていた。
◆
その夜。
宗一郎は。
報告を。
聞いた。
冬姫。
十四歳。
帝。
十七歳。
初めての面会。
返事は。
保留。
だが。
再び会うことを。
双方が。
望んだ。
宗一郎は。
息を吐いた。
「よかった」
半兵衛が。
横を見る。
「何がです」
「急いで」
「決めなかったこと」
「なるほど」
半兵衛は。
少し。
考える。
「しかし」
「十四と十七ですか」
「若いな」
宗一郎が。
呟く。
そして。
自分で。
苦笑した。
この時代では。
珍しい話ではない。
だが。
現代の感覚が。
残る宗一郎には。
どうしても。
若く見える。
だからこそ。
急がせたくない。
◆
だが。
天下は。
二人の若者が。
ゆっくり。
互いを知るのを。
待ってはくれない。
その夜。
石山本願寺。
顕如の前へ。
一人の男が。
駆け込んだ。
「申し上げます」
「鷹司家へ」
「織田の姫が」
「入ったとのこと」
顕如の顔が。
変わる。
「養女か」
「いえ」
「まだ」
「そこまでは」
「では」
「何をしに」
男が。
一度。
息を整えた。
「同じ頃」
「禁裏より」
「主上が」
「密かに」
「鷹司家へ」
「御出ましになったとの噂が」
沈黙。
◆
顕如の目が。
ゆっくり。
細くなる。
織田の姫。
鷹司。
帝。
三つ。
ようやく。
線が。
繋がり始めた。
「まさか」
教如が。
父を見る。
「父上?」
顕如は。
答えない。
もし。
自分の考えていることが。
正しければ。
これは。
単なる。
公家と織田の。
付き合いではない。
政治同盟でもない。
もっと。
深い。
切れにくい。
結びつき。
「血か」
顕如が。
小さく。
呟いた。
教如の顔が。
変わる。
顕如は。
立ち上がった。
「確かめよ」
「ただし」
「絶対に」
「姫へ」
「手を出すな」
「は」
「主上にもだ」
声が。
鋭くなる。
「調べるだけだ」
「一線を越えれば」
「義昭と」
「同じになる」
教如が。
頭を下げた。
◆
十七歳の帝。
十四歳の冬姫。
二人の。
最初の面会は。
誰にも。
知られぬまま。
静かに。
終わった。
まだ。
婚姻は。
決まっていない。
冬姫は。
まだ。
織田の娘。
鷹司の養女でもない。
帝の妻でもない。
だが。
二人は。
もう一度。
会うことを。
選んだ。
政治が。
始めた縁だった。
だが。
その先を。
政治だけで。
決めるつもりは。
二人とも。
なかった。
そして。
この小さな選択が。
やがて。
織田と。
朝廷を。
血で結び。
さらに。
この国の。
皇統そのものへ。
大きな変化を。
もたらすことになる。




