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第八章 明智十兵衛
第八章 明智十兵衛
その頃、京には一人の男がいた。
明智十兵衛光秀。
だが、宗一郎が最初に見た光秀は、後世に知られる「織田家の名将」ではなかった。
足利義昭に従う一人の幕臣。
そして、細川藤孝と深い縁を持つ男だった。
「明智殿ですな」
宗一郎が声をかけると、光秀は振り返った。
「これは高槻殿」
二人は互いに頭を下げる。
光秀の目は静かだった。
だが、その静けさの奥に鋭さがある。
宗一郎はそれを見逃さなかった。
―危険だ。
直感だった。
秀吉とは違う。
家康とも違う。
この男は、人の感情を表に出さず、物事を長く考える。
そして何より、朝廷と幕府、武家社会の仕組みを理解している。
「明智殿は、京の政務を?」
「将軍家のお役目として」
その答えは慎重だった。
宗一郎もそれ以上踏み込まなかった。
この時点で光秀は、まだ織田家臣ではない。
だが、信長も光秀の能力を無視してはいなかった。
やがて両者の距離は縮まっていく。
それを、宗一郎は遠くから見ていた。
明智光秀。
――羽柴秀吉。
――徳川家康。
宗一郎は、この三人を特に警戒していた。
ただし、その理由を誰にも話すつもりはない。




