第百二十章 死者は海を渡る
第百二十章 死者は海を渡る
伊勢。
名もない小さな入り江。
月明かりの下。
一艘の小舟が沖へ出ていく。
乗っているのは、一人の老人。
左の薬指がない。
腰には白鷺の根付。
右脚を。
僅かに引きずっている。
甲賀の忍び。
孫六は。
岩陰からそれを見ていた。
府内から届いた人相書き。
宗玄。
五十ほど。
右脚に僅かな跛行。
左薬指欠損。
白鷺の根付。
すべて。
一致する。
だが。
孫六は動かなかった。
高槻宗一郎から命じられている。
――追え。
――だが、すぐ捕らえるな。
その先を見る。
だから。
追った。
しかし。
海は。
忍びにとっても勝手が違う。
小舟は沖へ出る。
その先。
闇の中に。
もう一艘。
少し大きな船がいた。
「迎えか」
孫六が呟く。
老人の小舟が近づく。
縄梯子。
老人が乗り移る。
その時だった。
大きな船の上から。
光が。
三度。
点いた。
消える。
点く。
消える。
もう一度。
岸。
別の場所から。
二度。
光が返った。
孫六の顔が変わる。
見られている。
海ではない。
こちら側を。
孫六は。
振り返らなかった。
振り返れば。
気づいたと知らせる。
ゆっくり。
岩陰から下がる。
その瞬間。
風を切る音。
孫六は。
身体を倒した。
矢が。
首のあった場所を抜ける。
「走れ!」
もう隠す必要はなかった。
甲賀の者が二人。
森へ走る。
背後から。
足音。
三人。
いや。
四人。
「散れ!」
孫六が右へ。
もう一人が左へ。
追手も分かれる。
森。
暗い。
枝。
土。
息。
前に。
一人。
待っていた。
刀。
孫六は。
止まらない。
低く入る。
敵の刀が。
頭上を通る。
孫六の刃は。
腹へ。
入った。
抜く。
倒れる前に。
走る。
後ろから。
もう一人。
「待て!」
待つ理由はない。
孫六は。
腰の筒を取った。
火をつける。
投げる。
破裂。
大きな音。
火薬そのものではない。
音を出すだけの筒。
だが。
追手は一瞬怯んだ。
その一瞬で。
距離が開く。
「生きて帰れ」
源八郎から。
何度も言われている。
忍びは。
死ぬことが仕事ではない。
見たものを。
持ち帰ることが仕事だ。
◆
翌朝。
宗一郎は。
眠っていなかった。
宿の一室。
長秀。
一益。
半兵衛。
源八郎。
机の上には。
伊勢で押収した帳面。
夜明け前。
戸が。
強く叩かれた。
「入れ」
源八郎が言う。
孫六が。
入ってきた。
左腕。
血。
「孫六!」
「浅手です」
「座れ」
「先に」
孫六は。
座らなかった。
「見つけました」
部屋の空気が変わる。
「誰を」
宗一郎が聞く。
「鷺です」
沈黙。
「確かか」
源八郎。
「左薬指なし」
「右脚を引く」
「白鷺の根付」
「府内の人相書きと」
「すべて一致」
宗一郎が立った。
「どこ」
「海へ出ました」
「船は」
「沖で別の船へ乗り換えました」
一益が。
すぐ聞く。
「どちらへ向かった」
「南東」
「鳥羽か」
「あるいは」
長秀が言う。
「志摩」
一益が。
舌打ちする。
「九鬼へ知らせる」
「待って」
宗一郎が止めた。
一益が睨む。
「何だ」
「追うんですか」
「当たり前だ」
「何艘で?」
一益が黙る。
「相手の船の大きさ」
「護衛」
「行き先」
「何も分からない」
「だから逃がすのか」
「違います」
宗一郎は。
地図を見る。
「海で追わない」
一益の眉が動く。
「なら」
「先へ行く」
「先?」
宗一郎の指が。
志摩。
鳥羽。
さらに。
海沿いを動く。
「船は」
「どこかで必ず」
「水を取る」
「食べ物を積む」
「船を直す」
「風を待つ」
以前。
九鬼嘉隆から。
叩き込まれた。
――海の街道は港だ。
「九鬼殿へ」
「船を追ってくれじゃない」
「寄れそうな場所を」
「潰してもらう?」
「潰しません」
宗一郎が。
首を振った。
「見てもらう」
一益が。
じっと宗一郎を見る。
「また見るのか」
「違います」
宗一郎の声が変わった。
「見つけたら」
「今度は捕る」
長秀が。
口元を上げた。
「それでよい」
「宗玄は」
「もう十分」
「こちらへ刃を向けている」
宗一郎も。
頷いた。
「はい」
「捕縛を優先」
「抵抗したら」
一益が続ける。
「沈める」
宗一郎は。
一瞬だけ。
黙った。
そして。
「お願いします」
以前なら。
言えなかった。
今は。
言った。
◆
志摩。
九鬼嘉隆は。
届いた書状を読み。
鼻を鳴らした。
「今度は」
「船を追えではないのか」
宗一郎からの書状。
――伊勢から一艘。
――年老いた男。
――左薬指なし。
――右脚に不自由。
――白鷺の根付。
――宗玄の可能性極めて高し。
そして。
最後。
――九鬼殿の海を貸してください。
嘉隆が。
笑った。
「馬鹿め」
側近が見る。
「何か」
「海を貸せだと」
「海は儂のものではない」
書状を。
裏返す。
さらに。
一行。
――だから、海を知る九鬼殿に頼みます。
「……腹の立つ奴だ」
嘉隆が立つ。
「船を出せ」
「何艘」
「四」
「少なくありませぬか」
「戦ではない」
「獲物を驚かせるな」
「どこへ」
嘉隆は。
地図を見ない。
「水だ」
「は?」
「この風なら」
「今夜までは走れる」
「だが」
「明日の昼までには」
「どこかで水を取る」
「鳥羽は目立つ」
「大湊は織田が騒いでいる」
「なら」
嘉隆は。
海を指した。
「答志か」
「菅島」
「あるいは」
「もっと小さな入り江」
側近が頷く。
「全て見張りますか」
「違う」
嘉隆が笑う。
「儂らが」
「水場になる」
◆
昼。
沖。
鷺の男を乗せた船は。
進んでいた。
船上。
老人は。
黙って海を見ている。
船頭が。
近づく。
「伊勢は」
「失いました」
「ああ」
「尾張も」
「ああ」
「弥七も」
老人は。
少しだけ。
目を閉じた。
「死んだか」
「おそらく」
「そうか」
悲しんでいるのか。
いないのか。
分からない。
「玄蕃様」
老人の目が開く。
「その名で」
「呼ぶなと言った」
「申し訳ございません」
「もう」
「玄蕃は死んだ」
「では」
「何と」
老人は。
海を見る。
「名など」
「何でもよい」
「人は」
「名で動くのではない」
「欲で動く」
「恐れで動く」
「誇りで動く」
「信仰でも」
「動く」
船頭は。
黙る。
「織田信長は」
老人が言う。
「そこを分かっている」
「だから」
「厄介なのだ」
「高槻は」
「もっと厄介だ」
「何故です」
老人が。
初めて。
笑った。
「人を」
「仕組みに変える」
「一人殺しても」
「止まらなくなる」
宗一郎の。
学問所。
技術所。
帳面。
倉。
道。
忍びの報告。
役割。
標準。
「昔の国は」
「頭を落とせば」
「身体が止まった」
「だが」
「あの男は」
「頭を落としても」
「別の頭が動く国を」
「作ろうとしている」
船頭には。
意味が分からない。
「だから」
老人が言った。
「冬姫を狙ったのですか」
老人の目が。
冷たくなった。
「違う」
「冬姫など」
「娘一人だ」
「では」
「狙ったのは」
「結び目だ」
船頭が。
息を呑む。
「帝と」
「信長」
「朝廷と」
「武家」
「古い権威と」
「新しい力」
「それが」
「血で結ばれる」
老人は。
静かに言った。
「結ばれる前なら」
「切れる」
「結ばれた後では」
「切るために」
「国ごと裂かねばならぬ」
そこには。
狂信的な熱はなかった。
むしろ。
冷たすぎた。
「神のため」
「なのですか」
船頭が。
恐る恐る聞いた。
老人は。
しばらく答えなかった。
「昔は」
「そう思ったこともある」
船頭が。
老人を見る。
「今は?」
「神は」
「人間の都合など」
「聞いてはくれぬ」
老人は。
白鷺の根付を。
指で弄んだ。
「だから」
「人間がやる」
その言葉は。
信仰ではなかった。
ロレンソが。
最も嫌悪したもの。
神の名を借りながら。
最後には。
神すら必要としなくなった思想だった。
◆
夕刻。
「船!」
見張りが叫んだ。
鷺の男が。
顔を上げる。
遠く。
一艘。
漁船。
普通の。
漁船に見える。
「気にするな」
船頭が言う。
「漁師です」
だが。
老人は。
じっと見る。
「帆を」
「何です」
「帆を落とせ」
「何故」
「早くしろ!」
初めて。
老人の声が荒れた。
遅かった。
漁船の横から。
もう一艘。
さらに。
後方。
二艘。
「九鬼!」
船頭の顔色が変わる。
「どうして」
「水だ」
老人が呟いた。
「我らが水を欲しがる場所を」
「先に押さえたか」
九鬼の船。
四艘。
囲まない。
三方。
一方だけ。
開いている。
「逃げ道がある!」
船頭が叫ぶ。
「そちらへ!」
「駄目だ!」
老人が怒鳴る。
だが。
船頭は。
もう舵を切っている。
開いた場所。
そこへ。
船を走らせる。
老人は。
目を閉じた。
「愚か者」
岬を。
回った。
その先。
海面に。
黒い船影。
一艘。
大きい。
九鬼の船ではない。
見覚えが。
ある。
船頭が。
呟いた。
「高槻……」
試験船。
まだ。
完成した軍船ではない。
だが。
甲板には。
大筒。
宗一郎が。
海で試していたもの。
その横。
九鬼嘉隆が。
立っていた。
「帆を下ろせ!」
海上へ。
声が響く。
「止まれ!」
「止まらぬ場合!」
嘉隆が。
手を上げた。
「撃つ!」
船頭が。
老人を見る。
「どうします」
老人は。
答えない。
「玄――」
「呼ぶな」
老人が。
懐へ手を入れた。
紙。
小さな束。
火打石。
「何を!」
「残さぬ」
「待ってください!」
老人が。
火をつけようとする。
その時。
音。
轟音ではない。
乾いた。
鉄砲。
老人の手から。
火打石が。
飛んだ。
血。
右手。
「……!」
嘉隆の船。
鉄砲を構えた男。
「次は」
嘉隆が叫ぶ。
「頭だ!」
「捨てろ!」
老人は。
血の流れる手を見る。
そして。
笑った。
「九鬼嘉隆」
声は。
届かない。
それでも。
老人は笑った。
「海を」
「織田へ売ったか」
嘉隆には。
聞こえたのか。
聞こえなかったのか。
分からない。
だが。
返ってきた言葉は。
まるで。
答えだった。
「海は!」
「誰にも売らん!」
嘉隆が。
怒鳴る。
「だが!」
「我らの海で!」
「人殺しの鼠が好き勝手するのは!」
「もっと気に入らん!」
九鬼の船が。
一気に寄せる。
「乗り込め!」
鉤縄。
船縁。
兵が飛ぶ。
敵も。
刀を抜く。
狭い甲板。
逃げ場がない。
一人。
斬る。
一人。
海へ落ちる。
「降伏しろ!」
「武器を捨てろ!」
二人が。
刀を捨てた。
一人は。
捨てなかった。
嘉隆の兵が。
斬った。
老人は。
船尾へ下がる。
背後。
海。
前。
九鬼。
逃げ場は。
ない。
老人は。
白鷺の根付を。
外した。
海へ。
投げようとした。
「それも」
嘉隆が言う。
「置け」
老人が。
嘉隆を見る。
「何故」
「欲しい」
「鳥の飾りが?」
「違う」
嘉隆は。
刀を向ける。
「お前の持ち物は」
「今から全部」
「証だ」
老人の笑みが。
初めて。
消えた。
◆
二日後。
伊勢。
宗一郎は。
浜に立っていた。
九鬼の船が。
戻ってくる。
甲板。
一人。
縄をかけられた老人。
宗一郎は。
遠くからでも。
分かった。
右脚。
左手。
そして。
嘉隆が持っている。
白鷺の根付。
「生きて」
宗一郎が呟く。
「捕まえた」
一益が。
隣で笑う。
「嘉隆にしては」
「上出来だ」
「聞こえたら斬られますよ」
「返り討ちにする」
「やめてください」
船が着く。
嘉隆が。
最初に降りる。
「高槻」
「九鬼殿」
「面倒な土産だ」
「ありがとうございます」
「礼はいらん」
「貸しだ」
「高そうですね」
「高いぞ」
その後。
老人が。
降ろされる。
宗一郎と。
目が合った。
初めて。
直接。
向かい合う。
「宗玄」
宗一郎が呼ぶ。
老人は。
答えない。
「玄宗」
僅かに。
目が動く。
宗一郎は。
続けた。
「佐久間玄蕃」
老人の足が。
止まった。
ほんの。
一瞬。
だが。
今度は。
宗一郎も。
それだけで満足しなかった。
「あなたが」
「佐久間玄蕃ですか」
老人は。
宗一郎を見る。
そして。
笑った。
「違う」
「そうですか」
宗一郎も。
それ以上。
聞かなかった。
「連れていけ」
兵が。
老人を動かす。
老人の方が。
意外そうに。
宗一郎を見る。
「聞かぬのか」
「何を」
「私が」
「誰なのか」
「今聞いても」
「あなたは嘘をつく」
老人が。
黙る。
「だから」
宗一郎は。
老人の前へ。
一歩。
出た。
「名前なんて、今はどうでもいい」
「俺が知りたいのは」
「あなたが何をしたか」
「誰を殺そうとしたか」
「誰を使ったか」
「誰に金を渡したか」
「どこへ武器を流したか」
「何のために」
「国を戦へ戻そうとしたか」
老人の目が。
少しだけ。
変わった。
「それを」
「全部」
「死ぬ前に」
「明らかにする」
脅しではなかった。
怒鳴りもしない。
宗一郎は。
ただ。
決定事項として言った。
「死ぬ前に?」
老人が聞く。
「私を」
「殺すのか」
宗一郎は。
目を逸らさなかった。
「冬姫様への暗殺」
「帝への害意」
「伊勢屋への放火」
「武田と織田を戦わせる工作」
「本願寺への偽装」
「それらへの関与が」
「証拠で確定すれば」
一度。
言葉を切る。
「助命を願うつもりはありません」
半兵衛が。
宗一郎を見る。
一益も。
何も言わない。
老人は。
しばらく。
宗一郎を見た。
そして。
笑った。
「変わったな」
宗一郎の眉が動く。
「何が」
「高槻宗一郎」
「お前は」
「もっと」
「人を殺すことを怖がる男だと」
「思っていた」
宗一郎の顔から。
表情が消えた。
「どうして」
「俺を」
「そんなに知っている」
老人は。
答えない。
「連れていけ」
宗一郎が言った。
今度は。
声が。
冷たかった。
◆
その夜。
老人の持ち物が。
並べられた。
白鷺の根付。
銀貨。
火打石。
薬。
紙。
小さな帳面。
そして。
一枚。
古い紙。
宗一郎は。
その紙を開いた。
文字。
古い。
五年以上前。
そこには。
九つの名。
伊勢屋の箱にあったものと。
同じ。
ロレンソ。
ディオゴ。
そして。
佐久間玄蕃。
だが。
紙の裏。
別の筆跡で。
一行。
書かれていた。
――九では足りぬ。
その下。
――十二とする。
宗一郎は。
息を止めた。
半兵衛が。
隣から見る。
「これは……」
「十二使徒の」
「始まり?」
「少なくとも」
半兵衛が答える。
「名を十二とした者に」
「近いところから出た紙です」
宗一郎は。
裏を。
もう一度見る。
さらに。
小さな文字。
端。
折り目の近く。
――三は、信仰を持たぬ者より選ぶ。
宗一郎の目が。
止まった。
「……え?」
半兵衛も。
黙る。
「十二人」
「全員」
「キリシタンじゃない?」
「むしろ」
半兵衛が言った。
「最初から」
「そうするつもりだったのでは」
九。
布教について。
話し合った者たち。
そこへ。
三を足す。
だが。
その三人は。
信仰を持たない。
「何のために」
宗一郎が呟く。
半兵衛は。
答えなかった。
答えたのは。
背後からの声だった。
「信仰だけでは」
「国を動かせぬからだ」
二人が。
振り返る。
縄をかけられた老人。
宗玄。
玄宗。
あるいは。
佐久間玄蕃。
兵二人に挟まれ。
戸口に立っている。
「座らせろ」
宗一郎が言った。
老人が。
座る。
「今」
「何て言った」
「信仰だけでは」
「国は動かぬ」
「では」
「何で動く」
老人は。
宗一郎を見る。
「お前なら」
「知っているだろう」
「知らないから」
「聞いてる」
「銭」
「武器」
「食」
「道」
「港」
「血」
「恐れ」
「そして」
老人は。
僅かに笑う。
「未来だ」
宗一郎の。
心臓が。
一度。
強く鳴った。
半兵衛の目が。
鋭くなる。
老人は。
二人を見る。
「未来を」
「知る者ほど」
「動かしやすい人間は」
「いない」
宗一郎は。
何も言わなかった。
老人が。
続ける。
「何が起こるかを知っている」
「何が栄えるか」
「誰が滅びるか」
「どの戦に勝つか」
「どの国が強くなるか」
「知っていれば」
「人は」
「神になったつもりになる」
半兵衛が。
老人を見る。
「何が」
「言いたい」
老人は。
宗一郎から。
目を離さない。
「高槻宗一郎」
「お前が」
「何者なのか」
「私は」
「ずっと」
「知りたかった」
宗一郎の手が。
膝の上で。
ゆっくり。
拳になる。
だが。
声は。
静かだった。
「俺が知っている未来は」
老人が見る。
「答えじゃない」
宗一郎は言った。
「ただの警告だ」
老人の笑みが。
僅かに。
止まった。
「だから」
宗一郎は。
立ち上がった。
「俺の話は」
「しない」
「今夜」
「話すのは」
「あなたです」
老人の前へ。
伊勢で押収した帳面。
十二使徒の印。
伊勢屋の箱。
九人の名。
焼け残った紙。
白鷺の根付。
一つずつ。
置かれていく。
そして。
最後に。
宗一郎は。
冬姫暗殺に使われた文を。
置いた。
「始めましょう」
「佐久間玄蕃」
老人は。
今度は。
否定しなかった。
宗一郎も。
もう。
同じ質問を繰り返すつもりはなかった。
死人を。
ようやく。
席につかせたのだ。
次は。
墓の中に隠したものを。
吐かせる番だった。




