↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/12

第8話:終わらない局、見下された少女の武器

挿絵(By みてみん)

「現在のレートは、初戦から100倍……さらに跳ね上がり、現在は1点につき1万円の計算です。ハコテンのペナルティによる精算が発生すれば、あなたは2億5千万円の負債を、親の私と、残りのプレイヤーに分割して支払うことになりますが……本当に、ここで降りるんですか?」


その言葉に、男の動きがピタリと止まった。

静まり返った地下室に、私の声だけが冷たく響く。


「な……にをバカなことを言ってやがる。そんなふざけたルールは無かったことに――」

「ルールは」


私は男の言い訳を遮り、強い口調でピシャリと割り込んだ。

そして、男たちとGGGの役員を真っ直ぐに見据える。


「変更しないと約束していただきました」


「…………ッ」


男の顔が微かに引きつった。

彼らはようやく気付いたのだ。


『絶対に勝てるイカサマ』にタダ乗りして私を食い物にしようとした結果、自分たちで自分自身の退路を断ってしまったことに。


私からすべてを搾り取るために設定された「天和禁止」という理不尽なルール。

私を確実に絶望させるために用意された「国士無双13面待ち」というイカサマ配牌。

私を絶対に逃がさないために敷き詰められた「莫大なハコ割れペナルティ」。

そして、私が連戦の条件として突きつけた「ルール変更の絶対禁止」。


すべての罠が完全に裏返り、今や彼ら自身の首へと太い鎖となって巻き付いていた。


「ふん……だとしても、こんな茶番がいつまでも続くわけがない」


男は顔を引きつらせながら強がって鼻を鳴らすと、忌々しそうに再び椅子へと腰を下ろした。

私のような小娘が、何時間もこの異常な緊張感に耐えられるはずがない。


いずれ根負けして、どこかでうっかり牌を捨てるに違いない。

そう高を括っているのがありありと分かった。


「じゃあ、続行します」


私が静かに宣言し、役員が冷や汗を拭うような手つきで全自動卓のボタンを押す。

ジャラジャラジャラジャラ……!

冷たい機械音が鳴り響き、再び同じ牌山がせり上がる。


10ループ目。 「『九種九牌』」

20ループ目。 「『九種九牌』」


イカサマを仕組んだのは彼ら自身だ。

裏のプログラムを解除しない限り、配牌は永遠に変わらない。


そして、この状況下で機械に触れてプログラムをいじることは、そのまま「ルール変更」あるいは「不正の自白」に他ならない。


50ループ目。 「『九種九牌』」


「おい……いい加減にしろよ、ガキ! いつまで同じことを繰り返す気だ!」


「ルール通りに打っているだけです。……次、お願いします」


男たちの顔から完全に余裕が消え去り、焦燥と泥のような苛立ちが浮かび上がっていた。

私が牌を一枚でも捨てさえすれば、『人和』で一網打尽にできる。


しかし、私が第一ツモの時点で流局させ続ける限り、彼らには永遠に手番すら回ってこない。

盤石だと思っていた絶対的な暴力が、たった一つのルールの盲点によって完全に無力化された瞬間。

見下されていた少女が放った、静かで、そして最も残酷な反撃。


ここから先は、麻雀の技術も運も関係ない。

どちらの精神が先に崩壊するか。

それだけを競う、血を吐くような「削り合い」の無限地獄が幕を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。