9話 シルフの王女
トルネルとの会談から数日が経ち、スレンはハイラー王国から密かに出国した。
出国してからはハイラー王国の西にあるシルフ王国へと向かっていた。
シルフ王国とはエルフの王が統べる国である。主にシルフの森を領土としているハイラー王国に比べれば小さい領土あるが、それでも1000年もの間、どの国からも支配を受けていない。そして永久中立国であり、もし世界で大戦が起きてもどの国を味方することはないとされる。
そんなシルフ王国に向かっていたスレンはとある人物に謁見を申し出ていた。
スレンがシルフ王国で謁見に応じるのはシルフ王国の王女、シノ・ハイラーである。
シノ・ハイラー齢14の少女。家名でハイラーと名乗っている理由、それは父親がハイラー王家の出身であること、それからハイラー王国の王位継承権を持っているためである。
しかしながらシノはハイラー王国のことに対して全くの興味を持たなかった。
そもそもが王位継承権が3位であることもそうだし、シノ自身が争いごとが嫌いであるためだ。
かといってシルフ王国の王である母親は完全たるエルフの血筋であるため長寿であり、王を退位することもないため、次期シルフ王国の王になることもない。
だが、もしシノがハイラー王国で王になり、更にはシルフ王国の王にもなった場合、ハイラー王国はシルフ王国の属国になり、消滅するという結末さえある。
そんな立場でありながら、シノはその立場にすら興味を示さず、王宮に閉じこもっているのだそう。やんごとなき立場にあるシノは閉じこもざるを得ない。
スレンはシルフ王国に入り、シノ・ハイラーの居る王宮の一室へと入っていた。
シノ・ハイラーに会う目的、それはシノ・ハイラーの従者であり、騎士であるサラ・ユグドラとの面会の許可をもらうためだった。
スレンはシノと対面してすぐ深くお辞儀をした。
「ご無沙汰しております。ハイラー王国聖騎士長スレン、ただいま参上しました」
シノはスレンの顔を見て、少し青ざめた表情で見ていた。
それからすぐにシノはおどおどしながら、
「あ、あ、もしかして、さ、サラちゃんに会いたいんじゃ」
「ええ。私はそのつもりでお伺いしました」
「だ、だめです……」
「それはどうしてですか?」
スレンは少しだけ眉間にしわを寄せながら聞いてみた。
シノはさらにビクビクを震わせていた。
「さ、サラちゃんは、会いたくないって、言ってます。だから、その……」
「分かりました。ですが、これだけはその、渡していただけませんか?」
スレンはシノに小袋を一つ渡した。
「こ、これは……」
「えっと、これは妹、にお渡ししていただきたいものです。決して怪しいものではありません。昔、妹が好きだったものでして、実家から取り寄せたものです。よろしければ、シノ様からお渡ししていただけると嬉しいです」
「わ、分かりました」
「それでは私はこれにて。また、伺います」
「えっと……、その」
シノは少しもじもじしながらスレンを見ていた。
「いかがなさいましたか?」
「いえ、その、なぜ、諦めないのですか、サラちゃんに、会いたくないと言われて……」
「それは……」
スレンは少し考えるように天井を仰いだ。
「私が、兄だからでしょうか。たとえ拒絶されようとも、私はサラの唯一の家族ですから」
「そう、わ、私からもサラちゃんにお願い、しますね」
「それはありがたいことです。よろしくお願いいたします」
スレンはそう言うと、シノの部屋から去っていった。




