10話 吸血鬼眷属
トルネルとの戦いを終え、レオナはマリンを王国に連れて帰るとのことで、一旦、監獄から離脱していった。
それで俺はなぜかフロレアによって荊で身体を締め付けられているという状況にあった。
レオナが「ちょっとこれ以上は」と俺のことを擁護しようとしてくれたが、フロレアに「問題ない」と返された。
結局何というか放置されてしまったのだが。
魔王フロレア―ル。そいつは俺の目の前に現れた魔王であり、薔薇に関するスキルを持っているらしくて、デバフとして毒ダメージを食らってしまうらしい。
しかしながら俺はというと、毒のダメージを食らっていないという不思議な感覚だ。
というか荊で俺の身体を巻き付けられているけど、全く痛みすら感じていない。
フロレアは俺に近づいてくる。
「ぐふふ。貴様は中々骨のあるやつじゃな。妾は嬉しいぞ。久しぶりに壊れないおもちゃが見つかった気分だ」
「俺のことをおもちゃ扱いするなんて心外だな」
「まあ、ただ、お前は少しだけ懐かしい気がするな。なんというか、漆黒の魔王を思い出す」
漆黒の魔王。それは俺の目の前にしか現れないブリューメルという女のことを指していた。
《ユキムラ。話を逸らせ。あいつ、多分、私の存在に気付いている》
ふと語り掛けてくる感覚がした。ブリューメルだ。
《分かった。とりあえずどうにか話を逸らしてみる》
《ああ、頼んだよ》
俺はブリューメルとの会話を済ませ、フロレアを見た。
「漆黒の魔王って何?」
「漆黒の魔王は、この世界を漆黒に包み込もうとした魔王のことじゃ。それはそれはこの世界で最も最古の魔王で、最も最強の魔王のことじゃ。そやつは神になり替わろうとしていた存在じゃ。あ、因みに妾は会ったことあるぞ」
「へえ、なるほどな」
「ところでお前さんは、妾に何か隠しておるな?」
「さて、何のことやら」
「お前さんが答えなくてもいい、直接心臓に聞いてみるか」
フロレアはそう言うと、荊で俺の胸部分を突き刺してくる。
こいつ、まじで気持ち悪いなと思ってしまう。
「ふむふむ。なるほどな。お前さん、やっぱり漆黒の魔王が憑いておるな」
「まさか」
「隠さなくてもよいぞ。そもそもお前さんの心臓を触って気づいたんじゃ」
「お前、気持ち悪いスキル測定の仕方だな」
「ああ、そうじゃな。心臓に荊を突き刺して、お前さんの血を少し飲ませていただいたのじゃ」
どうやら俺の心臓に荊を突き刺した瞬間に俺の血まで一瞬飲んでいたらしく、それだけでスキルを測定できたらしい。おまけにブリューメルの存在にも気づかれた。
「お前、悪趣味だな」
「カカッ。妾は悠久の時を生きる魔王じゃぞ。じゃが、妾は万物を殺すことができない魔王なのじゃ、不幸なことに」
「それはどういうことだ?」
「妾は昔、禁忌を犯して、漆黒の魔王にとある罪を背負わされたのじゃ」
「そんなことまだ味方でもないやつに言っていいのか?」
「ああ。構わん。なぜなら妾はこれからお前を永遠の苦しみを与えるからな」
突き刺されている心臓から何か送られてくる感覚がした。
フロレアはクスっと笑った。
「お前さん、気に入ったぞ。じゃからお前さんを妾の眷属にしてやった。これでお前さんは吸血鬼じゃ」
「お前、何のつもりだ?」
「お前さんはこれから魔王ブリューメルの復活に協力してもらうぞ」
「それを断ったら?」
「心臓を潰す。そうして永遠と潰された心臓の痛みを感じるがよい」
「断れないな。いいよ」
俺はどうやらヤバい魔王に目をつけられて、これからフロレアに協力しなくてはいけないらしい。
それはまた、世界を揺るがすことになるとは俺はまだしらない。
俺がそんな風にフロレアと会話をしているのだが、ブリューメルは何も答えない。




