11話 ブリューメルとの念話
俺は薔薇の魔王フロレア―ルの吸血鬼眷属になってしまい、漆黒の魔王ブリューメル復活のために協力関係を組んだ。それから俺はそのまま監獄から出ろというフロレアから警告を食らった。
フロレアがこういうのは監獄奥深くに、憤怒の魔獣がいるからだとか。
やはりあの時俺たちが見ていたドラゴン、つまりは憤怒の魔獣は存在していたというのは間違いなかったわけだ。
さらに言えば、フロレアがどうやら今のドラゴンの飼い主らしいわけで、多分、ドラゴンに手出ししないほうがいいのだろう。まあレオナがドラゴンを利用する計画はとりあえずおじゃんになったというわけで。
ひとまず憤怒の魔獣の件は一旦この辺でいいだろうし、流石に住処を荒らす悪党にはなりたくないわけで。
「とりあえずお前はどこにでも行くのじゃ。必要になったら妾がお主を呼ぼう」
なんとも酷い仕打ちだ。勝手に人を眷属にしておいてこの仕打ちは流石にないと思った。
フロレアはなんというかそういうやつなのだと俺はこの時知ることになった。
俺はとりあえずフロレアと別れ、監獄を出ることにした。
監獄を出て、草原を目にし、俺はふと思った。
俺、今、どこに行けばいいのですか……。
《安心しろ。君には私がいるではないか》
ブリューメルは俺にそんな風に囁いてきた。
因みにブリューメルは今のところ俺の前にしか現れない、いわゆる幽霊みたいな存在だ。
《ブリューメル。いたのか……》
《ああ。少し黙ってはいたけど。なるほど、あの子も私の復活を望んでいるということだ》
《なあ、お前が復活すれば何が起きる……》
俺はブリューメルに今思っていることを率直に聞いてみることにした。
《まあ、私がお前に力を貸す代わりに私の頼みを聞けと言ったな》
《ああ、確かに、聞いた》
《それはな、薔薇の魔王と同じことなのさ。私は、私の復活を望む》
《なんだよ。そういうことか。なら、別にお前の話、逸らす必要なかったじゃないか?》
《まあ、探っていたところなんだ。私は慎重だからな。私の望む世界のためなら》
《お前は復活して何をしたい?》
《私は、いや、まだ言わないでおこう》
《そうか。まあ、聞かないでおこうか、今は》
《そうしてほしい。あ、因みにお前が今、行くべき場所を脳内に埋め込んだから、それ通りに従うことね》
何でもありだな、この魔王はと俺は少し苦笑いしつつ、
《なあ、お前のことってフロレア以外には言わないほうが良いよな》
《まあ、できればそうしてほしい》
《じゃあ、そうする》
俺はブリューメルの指示通りに数時間くらい歩いた。
そこでたどり着いたのは、ハイラー王国の宮殿近くの大きな街であった。
というか俺はここに来て大丈夫なのかと思ったが、まあ、街を歩いてみると、どうも俺は指名手配にはなっていなかったみたいだ。
「きゃあああああああああああ。誰か、その人を止めて!」
どこからか少女の悲鳴が聞こえてくる。
はあ、どうやら俺はいきなり面倒ごとに巻き込まれそうだった。
俺の目の前には被害に遭った少女、それからこちらへと向かう刃物を持つ男。
俺は男の前に立ちはだかった。
「おい、どけ! 邪魔だ、刺すぞ」
うわー、典型的な犯罪者じゃねーえか。
盗賊のように覆面姿をした男がいら立ちをあらわにしながらこちらに突っ込んでくる。
そしてそのまま俺はブスリと男から腹部を刺される。
俺から血が迸る。
だが、その瞬間すぐに、逆再生するかのようにみるみると刺された腹部が回復していく。
男はそこで俺の治癒力に恐れおののく。
「ば、バケモンが、し、死ねー」
はあ、こいつは懲りないようだな。
「まあ、死なない程度の『暗黒』」
俺の手のひらから黒いもやが噴き出し、それらは男の身体を締め上げる。
「あ、あ、やめて……」
まあ、そうなるよな。
俺は男の目の前に出て、
「じゃあ、さっき少女から盗んだものを返せ」
男は怯えながら、コクリと頷いた。
それから男は少女から奪ったもの、小袋を俺に手渡してきた。
「もう、どっか行っていいぞ」
男は怯えながら街の外へ出ていった。
俺は少女に小袋を手渡した。
少女はすぐ、嬉しそうに、
「ありがとうお兄ちゃん!」
「ああ、別に良いさ」
俺は少女にあるものを手渡される。
多分、お礼の品なのだろう。
それから少女は俺に手を振って帰っていく。
ん、お菓子か。なんとも子供らしくて良いわ。
俺はそう思いつつ、お菓子を口の中に放り込んだ。
「何やら、騒がしいと思ってきてみたら、ユキムラさんじゃないですか」
「ん、その声は」
俺に金髪の少女は話しかけてきた。レオナだった。
「ユキムラさん。優しいんですね」
「うっせー。気まぐれだよ」
「素直じゃないんですね」
「まあ、困っていたら誰だってする」
「いや意外とそうでもないですよ。だって男は刃物持っていたのですから」
「お前、見ていただろ。それでわざと出てこなかっただろ」
「えっと、何のことでしょう。フフッ」
レオナはいたずらっぽく俺を笑った。
「さ、メイラーの屋敷に戻りましょう」
「まあ、な。それでマリンはちゃんと送り届けれたか?」
「うん。マリンちゃん、良い子だったよ」
「なんかまるで子供みたいな言い方だな」
「え、だってあの子5歳だよ」
「は?」
「亜人の子はね、5歳で成人並みに成長する種族なの。だけど精神的にすぐには大人にはなれないみたいだからね」
「なるほどな。確かに終始考えてみれば、幼かったかもしれんな」
「でしょ」
何やら自慢げに微笑むレオナだった。
さて、この先もレオナと協力することになるのだが、この反面、俺はレオナにしばらく長い間、隠し事をすることになるだろう。
漆黒の魔王の復活、眷属になったこととか。
とりあえず今は平和に過ごしたいものだな。
俺がそう思っていても、この世界残酷なものなのだろうか。
突如、空から冷たい雪が降る。
「これは、雪。この時期に珍しいですね」
レオナは不思議そうに首を傾げた。
この世界にも一応、季節というものは存在するらしい。
だが、この雪は季節に反して振ってきたものだと。
ということはこれは何者かの仕業になるのだろうか。
ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
「なんだ、この雄たけびは」
「あ、あれは、白いオオカミ……」
レオナはそれを指差しながら言った。
どうやら俺はまた何かしらの面倒ごとに巻き込まれるらしい。




