第1章-5 二人はお嬢様
「初めましおさなっ!?」
変な言い方になってしまったことをどうか許してほしい。
初めましてだお♥️とか可愛く言わなかっただけマシだと思う。
だってご主人様と呼ばれたはずなのに、目の前の二人はどう見ても幼い子ども。よくて10歳くらいにしか見えない。
「驚くのもわかるわ。セレスにはいつもお嬢様って呼ぶように言ってるのにご主人様って呼ぶのよね。
なんか老けて聞こえて嫌じゃない?」
「いや驚いたのは想像以上に幼かったからなんだけど……」
僕がそう言うと、なんだそっちかぁとため息混じりに言われた。
まずい、つい本音を口にしてしまった上に思わずため口を使ってしまった。せめて想像以上の美少女で驚いたとか言っておくべきだったな。
「改めて、私はシャーロット・ベネクン」
「……エリザベス・ペネロス」
赤毛でややカールしている長髪の元気そうな印象の少女がシャーロットで、セミロングくらいの金髪で大人しそうな雰囲気の少女がエリザベスというらしい。
シャーロット様のほうがハキハキ喋るしっかり者タイプで、エリザベス様のほうが会話が始まるまでにワンテンポ遅れるゆったりタイプみたいだ。
二人とも緑色と水色の色違いの可愛らしいドレスを着ていた。フリルとかは少な目だけど、フワッとした優雅な印象が伝わってくる上品なドレスのように見える。
「えっと、アーサーです。よろしくお願いします」
明らかに年下ではあるが侯爵家の人間なのであれば丁寧に対応するほうがよいだろうと、挨拶しながらペコリと頭を下げた。
「あれ、ベネクンとペネロス……? じゃあお二人は……」
もしかしてと思い、つい疑問を声に出してしまった。
「ええ、私はベネクン侯爵家の長女で、エリザベスはペネロス侯爵家の長女よ」
「そうなんですか……。てっきりそれぞれのお屋敷に行くのかと思っていましたが、お二人で待ち合わせしてくれたんですね」
僕が言ったことに、シャーロット様がクスッと笑った。
「ふふ、私のベネクン侯爵家とエリザベスのペネロス侯爵家は同じこの家に住んでるのよ。
私達の母親が姉妹で、とっても仲がよいあまり離れたくなくて一緒に住むことにしたらしいの。
家名も似てるしね」
とんでもねえ侯爵家だ。
おっと、表情に出してはまずいな、貴族様にはポーカーフェイスを心がけなければ。
ポーカーやったことないから経験のあるカルタのフェイスとかでも大丈夫だろうか。
「唇を尖らせてどうかしたの?」
「いえ、なんでもないです」
どうやら僕のカルタフェイスはダメなようだ。
「二人から話は聞きました。セレスとシャリアを助けてくれてありがとう」
「……ありがと」
シャーロット様は丁寧に、エリザベス様はやや照れながらお礼を言ってくれた。
「いえいえ、そんなに大したことはしてないので気にしないでください。では長居しても申し訳ないですし、僕はそろそろこのへんで……」
「待って」
ペコリと頭を下げようとした僕の肩を正面からガシッと掴まれた。
この国の人は肩を掴まないと気が済まないのかな?
「お礼もちゃんとしたいし、せっかくだから泊まっていって……ね?」
美少女の上目遣いによるお願い。
これは強めに肩を掴まれていなければ僕のハートにグッときた可能性はある。
まぁ、最後の「ね?」がちょっと強制力の強い魔眼のような眼力があったから別の意味でグッときたかもしれないけれど。
「ですけどシャーロット様、見ず知らずの男を勝手に泊めたりなんかしたらお二人のご両親が心配すると思いますし……」
「……私達は両親がいない」
「えっ、それって」
エリザベスさんが寂しそうに呟いた。まさか、既に二人の両親は死んでしまって……?
「先月からダブルデートで隣国に行ってるの」
「両親んんんん!!」
「ふふふ、からかってごめんなさい。あなたと話すのが楽しくてつい」
「……ごめんね?」
シャーロット様とエリザベス様が笑いながら謝ってくる。
「はぁ……死んじゃってるのかと思って焦りましたよ」
「ふふふ、そんなわけで両親への遠慮がいらなくなったからお泊まり会ね。楽しみ~」
「……わくわく」
「あっ、それから私達のことは敬称禁止でね」
「……呼び捨て、推奨」
後で詳しく話を聞くと、どうやら両親がいないために二人は臨時の当主代行をしているそうで、その為セレスさんとシャリアさんは彼女達のことをご主人様と呼んでいたらしい。
そんなわけで二人のご主人様から逃げられませんでした。
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