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第1章-44 サイレンが聞こえると何故あんなにドキドキするのか

 この世界の奴隷契約とは魔法による魂の契約を指す。


 犯罪だったり借金だったりと奴隷になる理由はいくつもあるが、共通しているのは一度奴隷契約を結んでしまえばそう簡単に解放されることは無いということだ。


 コロシアムには千人を超える民衆が集まっている。


 彼らは勇者が何故こんなことをしているのか理解は出来なかったが、これから何をしようとしているのかは理解していた。


(他国の侯爵令嬢を……奴隷に!?)


 僅か10歳の少女とはいえ侯爵令嬢であれば勇者を相手に政略結婚もあり得る世界である。


 それはもう災難だったと言う他無いが、彼は結婚式を開く前に彼女達に奴隷契約をしよう言うのだ。




「あの腐れ勇者……よくも私のお嬢様をあんな目に……」


「なんだか二人の様子がおかしくないですか?」


「……おそらく意識を混濁させる魔法が使われています。

奴隷商人が暴れる奴隷によく使う魔法です」


「そんな魔法が!?」


 怒りに震えるシャリアさんの目は本気で殺意が籠っている。


 これは「いいよ」と一言伝えるだけで一瞬で腐れ勇者の首を刈ってきてしまいそうな勢いだ。


「アタシの妹達によくもあんな……八つ裂きにしてやる!」


 ミラン姉さんも右に同じで、歯を食い縛りながらフーフー言っている。


 セレスさんに至っては社会的に抹殺するため百の方法という書類を作成し始めた。


 セレスさんの内容が一番怖そう……。


「皆さん、お怒りはごもっともです。だけど……」


 僕の声に三人が目を向ける。


「勇者との決着は……僕自身の手で決めます! 

婚約者ですから!」


 あっ、仮ですけどね?


「あぁ、そうだった。しっかりぶちかましてこい!」


「アーサー様……お嬢様達をお願い致します」


 書類の作成を止めたセレスさんもコクンと強く頷いている。


 どうやらほぼ書き終えて製本作業に入ろうとしているようだ。


 一冊持っていきますか?みたいに見てくるけど遠慮しておきます。


 というかさっきからセレスさん全然喋らないんだけどキャラ変でもしたの?


「はい! では、作戦開始です!」




「臆病者のアーサー、出て来ないのか!

出て来ないなら二人はこのまま俺が奴隷にして可愛がってや……っ!?」

最後まで言い切る前に、突然コロシアム中に大音量のサイレンが鳴り響いた。


「これは……警察!?」


 そう、僕ら地球人なら絶対に聞いたことがある警察のパトカーが鳴らすサイレン。


 僕とは違う時代か世界線から来たであろう腐れ勇者だけど、このサイレンには聞き覚えがあったようだ。


 この音が近くで聞こえると、何も悪いことをしていないのに無駄に緊張するんだよね。


 もちろん警察が来ているわけではなく、「異世界道具召喚ーミニマムー」で複数のスマホやスピーカーなどの一式を取り寄せての陽動だ。


 この音を聞いて一瞬でも反応しない地球人はまずいないからね。


 地球人に対してならこれほど相手の隙を作るのに最適な手段もないでしょう。


 でもこれで終わりじゃない。


 ずっと無言だったセレスさんが笛を吹いた音を合図に、僕らは全員サングラスを装着した。


「ぐああぁぁっ!? 目がっ……!?」


 続いて使用したのはスタングレネード。


 いわゆる閃光手榴弾というやつだ。


 まさかこんな物まで取り寄せられるとは思わなかったけど、この道具召喚はかなり融通が利くみたい。


 ちなみにR指定の物は年齢が足りないからという理由で取り出せなかった。


 レンタルショップで見かける大人と子どもを分けるエリアを示すあのカーテンみたいな表示が出てきたんだよね。


 ……いや違うよ?


 決してそういう物を取り出そうとしたわけではなく、ちょっと興味本位でR指定のあるホラーゲームを試しに取ろうとしただけだからね?


少しでも面白い、これなら続きを読んでやってもいいかなと思われた方はポチっとポイントをいただけるととんでもないくらい励みになります!

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