第1章-34 上を見上げると自分がいかに小さいか実感する今日この頃
おぉ~、ダンジョンに来る前よりステータスが倍近く上がっている。
運力なんてもうすぐ五桁に突入しそうな勢いだ。
ゲームとかだと9999がカンストだったりするけど、この世界ではどうなるのだろう。
「よくここまで耐えたな、最初の頃とは見違えるような動きだ。
さすがアタシの旦……え〜〜……で、弟子だ」
最後のとこだけ変な間があったのは何だろうか。
『だん……で』と言いかけたということは、もしかしたらダンディと言いたかったのかもしれない。
確かに今の僕は水菜っ子を卒業出来たと自負しているので、溢れ出すダンディズムみたいなのを言おうとしてくれたのではなかろうか。
やったね。
「報告では聖なる武器のような物が発見されたのはこの上の階だそうだ。
いよいよだが、覚悟はいいか?」
そう言われ、僕はここに来るまでの苦労を思い出していた。
夜寝る時に服を全部脱ぐミラン姉さん。
そのまま寝ぼけて抱きついてくるミラン姉さん。
汗を掻いたからと全裸になり水浴び用の水魔法をねだってくるミラン姉さん。
魔物との戦闘中に衣服が乱れるミラン姉さん。
……あれ、なんか思い出している内容に偏りがありすぎるのでは?
もっと他にほら、強くなった過程とか、戦闘で苦戦した時とか、そういうのを求められる場面なはずなのに。
……これじゃ他の人にはダンジョンでの感想なんて話せないよ。
「大丈夫か? なんなら明日にしてもいいんだぞ」
「だ、大丈夫です!」
僕が変な顔をし始めたのを心配したミラン姉さん。
だんだん過保護っぷりに拍車がかかってきた気がするので、安心させるべくニッコリと笑っておいた。
よーし、早くこの階を突破して上に向かおう。
話によると、ダンジョンによって内部構造は色々と異なるらしい。
いま僕達がいるダンジョンは比較的シンプルなタイプで、四階に来るまでの内部は無機質なザ・塔の中という様子が続いていた。
さて何故急に塔の説明をしたかというと、これまでは迷路のような塔の中で魔物や罠を掻い潜りながら上の階へと続く階段を見つけては上層へ向かうという流れできたのだが、四階はどうやら下層とは違うようだったからだ。
四階に上がってまず見えたのは巨大な吹き抜けだった。
上を見上げるとと五階が見えているので、四階と五階は吹き抜けになっているのだろう。
そして距離があるせいか分かりにくいが、五階には例の聖なる武器と思われる物が台座のような物に刺さっているのをなんとか確認出来る。
そして実際にここまで来て分かったのは、あれを発見した人はおそらくここで引き返したのだと思う。
何故かというと……?
「……上の階まで遠すぎませんか」
「……あぁ」
「……どうやって登りましょう」
「……う~ん、高いな」
四階と五階の間には薄っすらと煙のような物が充満していた。
それだけなら五階の様子を確認するのは問題無い。
問題なのは、この階にあるのはただの吹き抜けだけで階段などの上の階へ進む手段が全く見当たらない点だ。
しかも五階までの距離は今までの階の比ではなく、数十メートルはあるのではないかと思ってしまうほどの距離がある。
壁には足場になりそうな突起も無い上、そもそもダンジョンの壁は非常に頑丈で壊すことは不可能とまで言われているらしい。
これでは道具を使って登ることも困難だろう。
(登る手段が見当たらないということは、どこかに手段を作る為の何かがあるんじゃないかな)
こういう類の仕掛けを解いて進める系のエルフが主人公のゲームをよくやっていた僕からすると、何かが隠されている気がしてならない。
パッと見た限りでは壁や床には何も無さそうに見える。
となると、やはりあのわざとらしいくらいずっと漂っている煙がカギになるんじゃなかろうか。
周囲をくまなく探せば何かがありそうな気もするけどあんまりのんびりはしていられないので、ツアー本で何かヒントになることが分かるだろうかと取り出してみた。
おっ、反応してページが開かれていく。
攻略本を読んでるみたいで少しだけ罪悪感があるけど、今は急いでるからね。
ふむふむ、これはちょっと試してみたほうがよさそうかも。
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