第1章-33 ダンジョンの夜は皆どうやって過ごしているのだろうか
「さて、剣も魔法も問題は無い。
だが、せっかくの能力もその力に振り回されているようだ。
時間が限られている以上、形にするには荒療治しかないだろう」
「荒療治……ですか」
思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
ベテラン冒険者であるミラン姉さんの荒療治。
どれだけハードな内容なのだろうか。
「私を捕まえてみろ」
「……え?」
「なんだそんなことかと思ったか?
だが、力を使いこなせていないやつに捕まるほど私は甘くないぞ。
どんな手を使ってもいいから来い!」
いいのかな……。
さあさあと催促されてるし、いいんだよね。
「バインドアーム✕2」
「なぁっ!?」
両手から出現させたビームっぽい物で出来た網がミラン姉さんを絡め取った。
ミラン姉さんの反射神経が良すぎるせいか、バインドアームに反応して脱出しようとしたものの両手からの二重バインドアームから逃げ切れずかえって複雑に絡まってしまったようだ。
器用すぎる絡まり方をしたのか、まるで捕まった捕虜のように後手縛りで脚も含めギッチリ全身縛られたようになっており、とてもいけないものを見ているような気がする。
「あぐっ……あれだけ余裕ぶってこんなにあっさりと。
……くっ……殺せ」
「殺しませんて!?」
ミラン姉さん的には戦闘訓練を兼ねた鬼ごっこのようなイメージでいたそうで、まさかこんな状況になるとは思わなかったようだ。
バインドアームを解除して、恐る恐るミラン姉さんに声を掛ける。
「あの、なんというか……すみません」
「いや……私も言い方が悪かった。
……こんなんじゃアタシ……もういらない……ぐすっ……よな?」
「いります―――!
お願いですから (帝国へ行くまで) 僕の傍にいてください―――!」
「なななな!?
傍にって……こんなアタシで……いいのか?」
「もちろんです!
ミラン姉さん以外 (指導してくれる人は) いません!」
「そう……か……。
それならずっと一緒にいてやるか (番的な意味で)!」
「はい (師弟の意味で)!」
よかった、涙目になった時はどうしようかと思ったけどなんとか引き続き師事を仰ぐことは出来そうだ。
「いくら予想外の不意打ちだったとはいえ、さっきのは見事だった。
アーサーは経験さえ積めば一気に化けるだろう。
となれば実戦あるのみだ。
アタシが先導するから最短距離でダンジョン踏破を目指すぞ!」
「あっ、待ってください!」
ものすごいスピードで先へと進んでいくミラン姉さんを追って、僕も急いで後を追い掛ける。
しかしなかなか追い付けない。
原因は丸分かりだ。
ミラン姉さんは動きに無駄が無く、障害物を楽々避けている。
しかも途中で出くわす魔物を絶妙のタイミングで攻撃して一撃で仕留める余裕すらあるみたいだ。
それに比べて僕はトラップような物には何度も引っ掛かるし、魔物が出て来た時にも自分の戦闘技術とステータス値がずれていることによる経験不足で動きに無駄が多く、いちいち時間が掛かってしまっているのだ。
とはいえ、そんなことを気にしていられたのは最初のうちだけだった。
「はぁ……はぁ……次!」
倒した魔物が三十を超えた辺りからランナーズハイのような状態になり、気付いた頃には動きがどんどん良くなってきているのを感じていた。
自分でも驚くくらい身体が軽い。
おそらくは魔物を倒したことによりレベルが上がり、ステータスが向上したことが大きいのだろう。
それに上昇したステータスの身体で戦うことに自分自身の感覚が慣れてきたのもある。
そんなこんなで時間はあっという間に過ぎていき、五日目で僕達はダンジョンであるこの塔の四階まで来ていた。
夜をどうやって過ごしたかは気にしないでほしい。
本当に大変だったので。色んな意味で。まじで。
ちなみに現在のステータスはこんなかんじ。
スキルは今は省略しておく。
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アーサー・A (朝田)・ペンシルゴン
レベル15 → 32
筋力 550 → 950
知力 450 → 850
体力 450 → 900
速力 550 → 1000
魔力 1000 → 1700
運力 8500 → 9600
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