第1章-29 紳士はそんなことを確認しないけど本音ではしたい
その後も半袖のシャツ・髪の紐・靴と、ミラン姉さんの衣服がどんどん僕に投げられてくる。
あのこれどこまで続くんでしょうか?
「ほい、これで最後だ」
最後と言われたのは薄い布だった。
ここここれはまさまさまさか……。
「最後って……これ下着じゃないですか!?」
つまり目の前にいるミラン姉さんはまさか!?
見えちゃダメだ見えちゃダメだ見えちゃダメだ!
「……? 獣化すると服が破けるんだから裸になるのは常識だろ?」
そんな素晴らし……ごほんげふん……凄まじい常識があるのか。
これは動揺するほうが失礼のようだし、なるべく見ないようにしながら持っていよう。
全く関係無いが僕の視力は両眼とも1.5だ。
何故今その情報を公開したかは謎に包まれている。
決して下心を包んでいるわけではない。
……くっ、渡された服や下着がホッカイロのように温かい。
これが人の温もりか。
ストレス社会に生きる人はこの温かさに触れてがんばってもらいたい。
ただしストレス社会でこの温かさに同意なく触れた場合は社会的に抹殺されかねないので注意が必要なことを忘れないで。
「獣化!」
裸になったミラン姉さんが左手を顔の前に出して拳をギュッと握り叫んだ。
何それかっこいい!
獣化と唱えたミラン姉さんの身体が光に包まれる。
光が消えると、そこには獣化を終えたミラン姉さんと思われる獣がいた。
ホラーな感じで徐々に人から獣になるとかでなくてよかったと思ったのは内緒だ。
……あの変身するみたいなやつ僕も出来るようになりたいな。
「彼女が姿を変えたのは久しぶりに見ました。見事なものです」
「相変わらずキレイな毛並みで、女として羨ましいくらいです。
あっ、アーサー様、ミランさんの服はこちらに入れてください」
いつの間にか音も無く傍に立っていたセレスさんとシャリアさん。
この二人の行動にはもはや驚かなくなってきた自分がいる。
ていうか服を脱ぐことをしっていたなら最初から言ってよね。
シャリアさんからはリンゴとかを入れて魔女が持ってきそうな籠を渡されたので、預かっている衣服を落としたり誤ってポケットに入れたりしないように気をつけながら籠に入れていく。
衣服を入れ終わった籠はアイテムボックスに仕舞っておいた。
これは後で返すのを忘れないようにしないとね。
あっ、目録に項目が追加されてる。
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ミランの脱ぎたて衣服と下着一式
※詳細確認可能
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詳細確認可能……だと!?
……この目録を人に見せるのは危険だということがたった今決まった。
詳細?
紳士はそんなことを確認しない。
「さぁ、乗りな」
ミラン姉さんの声と、元の声を少し低くした声がサラウンドで聞こえてきた。不思議。
「で、では……お言葉に甘えて……おぉ! すごいフカフカ!」
「そうだろう、自慢の毛並みだからな」
「ミラン姉さんの髪と同じ色でキレイだし、獣化した姿もかっこいいですね!」
「そ……そう……か」
ミラン姉さんの獣化した姿は、自身の赤髪と同じ色の毛並みが見事な巨大狼みたいな姿になっていた。
尻尾も長く立派な上に非常にフサフサしていて撫でたら気持ち良さそうだ。
(ミランさんたら、毛並みで紛れて分かりにくいですがとても照れてますね…ふふふ)
シャリアさんが面白いオモチャを見つけた子どものような表情をしている。
今までの経験から、女性があの顔をしている時は何も聞かないようにしておくほうが無難だ。
「私とシャリアさんは先に帝国へ向かい決闘に備えた準備をしておきます。
アーサー様もくれぐれもお気を付けて」
「アーサー様と無事にまたお会い出来ることをお祈り致します」
「はい! それでは、行って来ます!」
「「いってらっしゃいませ」」
セレスさんとシャリアさんに告げて、僕とミラン姉さんは旅立った。
いざ、ダンジョンへ。
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