第1章-28 ダダ甘な姉御
「護衛が一緒だと難癖つけられるんだと思っていたので、てっきり僕だけで行くのかと」
それを聞いて、ああなるほどとミラン姉さんが頷く。
「まぁアタシも侯爵家と関わりがあるし、決闘の件が有耶無耶になってきたとは言っても周りの連中から下手な横槍を入れさせる隙は確かに見せたくはない」
「だったら……」
「が、護衛でなければいいわけだ」
「え?」
「だからその、つまりだな……ええと」
「ふふ、ミランさんは素直じゃありませんね。
アーサー様、ミランさんはあなたの仲間になりたいと言ってるんですよ」
「ばっ、シャリアお前! 余計なこと言うな!」
「ぼ、僕の仲間に……ですか?」
「なんだよ、お前が気に入ったから助けてやりたいと思ったんだよ。……悪いか」
起き上がって仲間になりたそうにこちらを見ている、仲間にしますかコマンドの「はい」か「いいえ」を選ぶやつかこれ。
えっ、これで「はい」を選んだら仲間になってくれるの?
こんな美人なお姉さんが?
詐欺とかじゃなく本当に?
「アタシじゃ……ダメなのか?」
「全然ダメじゃないです」
断るという選択肢は僕の中には存在しなかった。
逆にこの人のお願いを断れる人がいたら驚きだ。
ということでミラン姉さんが仲間になった。
僕の脳内にはあの有名な竜を討伐するゲームのBGMが流れているのは言うまでもない。
「大丈夫だとは思っていましたが、アーサー様が気に入られたのならよかったです」
「ミランさんの一族は仲間と認めた相手にはダダ甘になるんですよ。
……楽しみにしていてくださいね、ふふふ」
セレスさんとシャリアさんがこちらをニヨニヨと見てくる。
「お前らそんな目で見るな!」
ダダ甘……かぁ。
綺麗なお姉さんにダダ甘い態度を取られるとか、全中学生男子の夢なのでは?
これがアメリカンドリームってやつか。
「あぁもう! さっさと行くぞアーサー!」
そう言って、ミラン姉さんは僕の手を取って屋敷の外へ早歩きで向かう。
歩く速度が早すぎて何度か曲がり角で僕の足や肩が扉や壁にドカッとぶつかるからけっこう痛い。
しかしそれ以上に気になることがあるからそこまで痛みは感じなかった。
それが何かというと、ミラン姉さんの手はしっかり鍛え上げられた戦士の手であると同時に、女性らしい柔らかさを兼ね備えている点だ。
しかもだよ?
「忘れ物はないな?
トイレは行ったか?
水分はとったな?
なにかあったらアタシにすぐ言うんだぞ?」
小学校入学式当日の登校前に息子を心配する過保護系お母さんみたいだった。
……これがダダ甘か、悪くないかもしれない。
なにかに目覚めてしまいそうだ。
そうこうしている間に屋敷の玄関まで来ていた。
玄関に到着したミラン姉さんは空いているほうの手で扉をバンと押し開けて屋敷の外へ出る。
開け方が豪快だ。
そのまま早歩きで歩いていくのかと思いきや、ミラン姉さんは玄関を出てすぐそば辺りで立ち止まった。
「うっし、じゃあ準備するからこれ持っててくれ」
「これ……?」
これと言われた物が僕の方に投げられたのでキャッチした。
ミラン姉さんの腰巻きのようだ。
「……えっ?」
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