第1章-27 胸を張るのは時に凶器となりえる
食堂での話し合いが終了したタイミングで、ドアがノックされた。
「失礼致します。準備が整いましたのでお持ち致しました」
こういうシチュエーションっていつも絶妙なちょうど良さだけど、みんなタイミング見計らってドアの前で聞き耳立てて待機とかしていたりするんだろうか。
「入ってください」
シャリアさんの返答を合図に、次々に他の使用人さん達によって木箱が運ばれていく。
一つ一つがみかん箱くらいのサイズで、それがあっという間に山のように積まれた。
「アーサー様のアイテムボックスの容量がわかりませんでしたので、セレスさんと相談して念のため多めに必要になりそうな物を揃えさせていただきました」
アイテムボックスの容量?
最初にシャリアさんに話した時にアイテムボックスは極稀に使える人がいるって言ってたから、もしかして個人差とかあったりするものなのか。
いや、使える人が本当に全然いないレベルという話しだったから、シャリアさんの言葉どおり単純に分からないだけか。
僕も容量がどのくらいなのか把握してないし、今後の為に試してみるとしよう。
ちなみに木箱の横にドクロやハートが描かれているものがチラチラ視界に入ってきてすごく中身が気になるんですけど、これは本当に必要な物が入っているんだよね?
セレスさんの方をチラッと見たらサッと視線を逸らされたんですけど。
……えっ本当に大丈夫?
後に繋がる嫌な伏線とか無いよね?
「……アイテムボックス」
仮にこれが色んな意味での罠だったとしても僕には断るという選択肢が無さそうなので、諦めてアイテムボックスを使用することにした。
ちなみに出てこなかったらどうしようかと少し緊張したけど、ちゃんと歪んだ空間が出現してくれてホッとしたのは内緒だ。
早速木箱を入れてみようと思った時、アイテムボックスの横に目録のような物が表示されていることに気付いた。
ツアー本と部屋の瓦礫の他にも何か入っているようだ。
「なになに……なぬっ!?」
何が入っていたかはまたいずれ語るとしよう。
いや、語らなくてもよければこのままタンスの肥やしならぬアイテムボックスの肥やしにしておいた方がいいのかもしれない。
まぁそんなに良い物ではないんだけどさ。
とにかく肥やしの話は置いといて、今は変な声を出してしまったことに対する誤魔化し対応で手一杯なのだ。
「で、では早速入れていきますね」
目の前に積まれた木箱を持ち上げて入れてみると問題なく入るようだ。
ちゃんと目録にも追加されている。
今入れたのは主に食料だったようで、種類ごとに表示されていてけっこう見やすい。
――――――――――――――――――
白パン × 20
水入り瓶 × 30
干し肉 × 20
塩入り瓶 × 2
胡椒入り瓶 × 1
白「い」パン「ツ」女性用 × 1
――――――――――――――――――
……最後に変なのがあったような気がするけどバグかな。
気を取り直してそのまま二箱目、三箱目と入れていく。
十を超えた辺りで僕を見守っていた皆さんの様子が変わってきた。
最初はたくさん入りそうですねと喜んでいたのに、途中からいったいどこまで入るのでしょうと緊張した空気になり、二十を超えてからはずっと無言になっている。
これ以上入れたらまずいのかな……。
「あ~えっと、こんなところでしょうか」
やりすぎたのかと心配になったので、二十二箱目で止めておいた。
目録的にはまだまだ余裕がありそうだったけど、周囲からの視線に耐える余裕がなくなったので。
どうやら大量に用意した木箱の中身はアイテムボックスの容量に合わせて厳選するつもりだったらしく、どんどん消えていく荷物に全員ポカーンとなっていたようだった。
「は〜これがアイテムボックスかい。
あれだけあった荷物がほとんどなくなってるよ。
これだけで冒険者として余裕で稼げそうだね」
「というより、争奪戦でしょうね。アーサー様の」
ミラン姉さんとセレスさんが困った顔で僕を見てくる。
「えっ、僕の争奪戦ですか!?」
シャリアさんを見ると、うんうんと頷いている。
まじか~、そんなラブコメの主人公みたいな展開が目前に?
やめて、僕の為に争わないで!とか言えばいいんだっけ。
いやいや、それだと魔性の女ポジションになってしまうな。
「これだけの量を一人で持ち運べるなら物流の概念が覆されますからね。
アーサー様自体が戦争の引き金になりかねません。
お二人とも、このことは内密にしておきましょう」
ミラン姉さんとシャリアさんが激しく同意と言わんばかりにコクリと深く頷いた。
言われてみれば馬車とかで運ぶ量を気軽に手ぶらで運べるということは、持ち運べる物資に限りがある戦争では非常に有利か。
外で使う時は気をつけるとしよう。
「こうなると決闘に勝つ為ってのはもちろんだけど自衛のためにもダンジョンでしっかり鍛えないとだな。
よし、早速行くぞアーサー!
アタシがダンジョンでみっちり鍛えてやる!」
「よろしくお願いします、ミラン姉さ……ん?
……あれ、ミラン姉さんもダンジョンに来てくれるんですか?」
「当たり前だろ!」
ふんすと胸を張るミラン姉さん。
張った一部が強調されてしまうので目のやり場に困る。
視線をそらした先にいるシャリアさんもなぜか胸を張っているのはどういうことなのか。
とりあえず目のやり場が無いので上を見ておくことにしよう。
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