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第1章-24 嫌な虫みたいだった勇者の剣

「話が脱線したので今度こそ話を戻しますが」


 脱線させたのはお前とシャリアだろうがと言いたそうな視線を向けるミラン姉さん。  


 だが先ほど自分で空気読めと言った手前ケチを付けるのもよくないなと我慢しているようだ。


「あの腐れ外道は腐っても勇者です。

今のアーサー様が腐れすぎな外道勇者と戦うにはやはり準備が必要でしょう」


「アタシはその腐ってる勇者ってのと会ったことはないが、どのくらいの相手なんだい?」


「ミランさんの参考になるかは分かりませんが、腐りきっていても一応は勇者である以上、召喚されたばかりとはいえ手強い相手だと思います。

帝国の騎士団長に勝っているという噂ですし」


「へぇ、あいつに勝ってるのか。それが本当なら正に腐っても勇者と言えるね」


 真面目な話なのだとは思うけど、勇者腐りすぎ問題がすごいなとどうでもいいことが頭をよぎる。


 子鹿勇者は腐れ勇者にジョブチェンジしたという脳内アナウンスが流れた気がした。


 その場合、種族はゾンビになるのだろうか。


「ミラン姉さんは帝国の騎士団長って人と面識があるんですか?」


「前に仕事でちょっとね。

かなり強いヤツなんだが……本当に勝ったのか疑問だね。

実は団長が代替わりしているとかは?」


「そういう話は聞いたことがありませんが……。

セレスさんもですよね?」


「えぇ。帝国で情報規制されているとはいえ、さすがに騎士団長が代われば各国が気付かないことはないでしょう」


「となると偽情報として帝国が広めているのか、あるいは信じ難いが本当にとんでもない力を秘めているのか。

もしくは……特殊な武器か何かを持っているのか」


「武器……」


 特殊な武器か。

たしか腐れ勇者は背中に大きめの剣を、美少女魔法使いは杖を持っていたっけ。

そうだ、剣といえば腐れ勇者は自分が持っている剣を意味深に見てた。

もしかしてあれかも?


「ミラン姉さん、腐れ勇者は背中に気持ち悪い感じがした剣を背負ってたんですが、それって何か関係あると思いますか?」


「気持ち悪い剣……? それはどんなのだ?」


「見た目はそこまで派手ではないんですけど、刃の部分に波打つような模様がありました。

それになんとなく触りたくない嫌な虫に出会ったような、そんな感じでした」


「嫌な虫……」


 想像したのか、シャリアさんが苦虫を噛み潰したような顔をしている。


 嫌な虫なのか苦虫なのかややこしいな。


「その剣はセレスも見たのか?」


「しっかりとは見ていないですが、大きめの剣だったとは思いますね」


「あっ、僕が絵を描きましょうか。けっこう得意ですよ」


 そう言うとシャリアさんが紙とペンを持ってきてくれた。


 日本で使ってる自前のより描きにくいけど、贅沢は言えない。


 羽根ペンとか使ったことがないのでせめて鉛筆とかが欲しいところではあるけど。


 色鉛筆もしくはカラーペンとかもあればなおよい。


 あっ、これは贅沢を言った内に入るのだろうか。


「こんな感じでどうでしょう?」


 どれどれと三人が僕の描いた絵を見る。


「たしかに、こんな剣だったような気がします。

この宝石も柄のところにありましたね。

たしか紫色でした」


「アーサー様は絵がお上手なのですね。

私も少ししか見る余裕がありませんでしたが、なんとなく思い出してきました。

そういえばこの絵のように剣先が二叉になっていたと思います」


「…………」


 絵を見たミラン姉さんが黙ってしまった。


「もしかして……見当違いでしたか?」


「いや……逆だ」


「逆ということは、ミランさんはこの絵で何かわかったんでしょうか?」


「あぁ。信じがたいが……おそらく『ライフイーター』だ」

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